三脚選びのポイント
星景写真などの天体写真を撮影するうえで、カメラとレンズ以外に重要な機材の一つとして「三脚」があります。カメラシステムにとってはとても頼もしい相棒で、機種選択や使い方は決して難しくありません。さらに、ちょっと理解を深めることができれば、失敗を未然に防げるだけでなく、より上手に使うことも可能になります。
ここではいろいろな事例とともに、三脚を使いこなすためのヒントをご紹介します。
制作協力:山野泰照(写真家、写真技術研究家)
天体写真を撮影するうえで三脚に期待すること
最初に、三脚に期待することを整理しておきましょう。
まず、天体写真の中で三脚を使う被写体や撮影ジャンルと言えば、天体望遠鏡を使わない撮影のほとんどが対象になります。星景写真や星座写真、流星写真などが代表的な被写体ですので、それらを撮影する場面を想定して話を進めます。
こうした被写体を撮影するにあたり、三脚に期待されるのは、
- 被写体がどの方向にあってもカメラを向けることができること
- 長時間露出、あるいは、短時間露出で繰り返し撮影する際に、カメラをある方向に向けて長時間にわたり安定して固定しておくこと
です。機能的には「自由に方向を変えること」と「ある方向を向けたカメラを長時間にわたって保持し続けること」と言えるでしょう。そのうえで、「三脚に取り付けるカメラの重さに耐える」ことや「撮影地で風が吹いていてもブレない」というような、撮影地で受ける影響に対する耐性も考慮しなければなりません。
三脚の脚と雲台の選び方
一般的に三脚と言われる機材は、「脚」の部分と、カメラを支えて自由な方向に向けるための「雲台」に分けて考えることができます。多くの場合は脚と雲台がセットで販売されていますが、比較的高額な製品では脚と雲台が別々に販売されていることもあります。いずれにしても、脚と雲台の両方に注目して選ぶことになります。
脚の選び方
脚で注目したいのは「長さ」と「重さ」です。
長さは使用時のカメラの高さを決めるものですから、どの程度の高さがあれば自分にとって使い勝手が良いかという視点から考えると良いでしょう。また、操作性の面では、長さを調節するためのロック機構もポイントの一つです。多くの場合、脚は3段から5段程度のパイプ群で構成されていて伸縮が可能ですが、その伸縮を固定するのがロック機構です。レバーロック方式とナットロック方式のものがありますが、とくに優劣はありませんので、使いやすい方を選択してください。
多くの三脚には、脚の部分とは別に高さを調節できるセンターポールがついていますが、高さについて検討する時にはセンターポールを伸ばした時の高さではなく、センターポールを伸ばさない時の長さに注目します。センターポールを高くすると重心位置が高くなり不安定になりますので、センターポールはなるべく低い状態で使いたい(高さを調節する最後の手段と考えておきたい)からです。
撮影に行くまでの移動手段で飛行機を利用する場合など、荷物をできるだけコンパクトにしたい時には、スーツケースにうまく収まるかどうかという点も重要です。また、荷物の重量制限からは、できるだけ軽量のほうが良いということになります。
このように移動時には小さくて軽いものが良い一方で、使用時は適当な長さかつ安定性のため重い方が良いというのがユーザーの心理ですが、そんな両方を満たす都合の良い答えはありません。したがって現実は、長さ、重さの面から「妥当解」を探すということになります。
実際に機種を選択するうえでは、脚のパイプの材質やパイプ径にも注目します。最近の傾向として、材質は軽い素材のカーボン製が人気ですが、もちろんアルミ製でも天体写真撮影に使用できます。パイプ径は材質にも関係するのですが、一番太い径が20mm以上、できれば28mm以上あれば比較的安心して撮影に臨めます。

三脚は、カメラやレンズの重さ、撮影スタイルなどに応じて最適なものがありますが、はじめて購入するのは小型、軽量で、できるだけ普段使いできるものが良いでしょう。早く慣れて、三脚を使う楽しみに目覚めることが期待できるからです。
星景写真をはじめとした天体写真の撮影には、もう少ししっかりしたものが望ましいのですが、小型、軽量の三脚を工夫しながら使うのも楽しみの一つです。

小型、軽量の三脚は、脚やセンターポールを伸ばせばカメラ位置を高くすることができますが、ふらついたり風の影響を受けやすくなったりします。長時間露出でカメラをなるべく安定させたいような場合には、できるだけ脚を伸ばさないこと、さらには開脚角度を広げることによって安定化を図る工夫が効果的です(NDオリジナル三脚 NDTP2の例)。

脚のロック方式には、大別するとレバーロック方式(左)とナットロック方式(右)があります。どちらが良いということはありませんので、好みで選べばよいでしょう。いずれの場合でも、緩めれば快適に伸縮でき、締めればしっかり固定されることを確認します。
雲台の選び方
雲台の機能は「カメラを目的の方向に向ける」ことと「カメラの角度を横構図や縦構図に固定する」ことです。静止画用の雲台の場合、大きく分けて「自由雲台」と「3ウェイ雲台」の2タイプに分類できます。
自由雲台は水平方向、上下方向、光軸に対して回転方向に自由にカメラを向け、一つのレバーによる1回の操作で固定することができます。パン棒はありません。一方3ウェイ雲台は、水平方向、上下方向、光軸に対する回転方向のそれぞれを個別に動かしロックできるような雲台です。当然、固定するためのレバーは3つ付いていますし、パン棒は最低でも1つ付いています。
望遠レンズなどで微妙な角度を調節したい場合には、3ウェイ雲台でパン棒が付いている方が、細かい角度調節などの操作をしやすいでしょう。広角レンズなどで方位や仰角を一気に決めたい時には、自由雲台が操作しやすいでしょう。三脚を使って撮影するレンズの焦点距離などを想定しながら、販売店などで実機に触れて確認することをお勧めします。

(左)3ウェイ雲台では、方位と仰角を固定したまま、縦構図と横構図を切り替えることができます。
(右)自由雲台は1つのロックレバーですべてフリーにしたりロックしたりでき、方位、仰角だけでなく縦構図、横構図も容易に決められます。その分、「水平方向にわずかに回転させたい」というような時には少し慎重な操作が求められます。
また、耐荷重がどの程度かということと、カメラの着脱のためにクイックシューシステムがついているかどうかも確認すると良いでしょう。耐荷重は、カメラとレンズの重さに対して脚と雲台がしっかり支持できるかどうかがポイントです。とくにレンズが重い場合、取り付け位置によっては撮影中にレンズが「お辞儀をする」(下を向く)ことがありますので、注意が必要です。クイックシューシステムのロングプレートを使用するなどの工夫しましょう。
仕様表の見方
三脚の仕様表には長さや重さ(質量)のほか、耐荷重が示されています。ただし、この耐荷重の数字は、ここで注目しているような「長時間露出でも安心」や「風が吹いてもブレない」といったことを保証するものではないことに留意しておきましょう。メーカーによっても数値が意味するものが違うようで、見た目や使用感が同程度の製品でも、一方は耐荷重が3kg、他方は10kgという表記のことも。耐荷重を越えなければ大丈夫ということではなく、示されている数値の範囲で使用することはもちろんのこと、実際に触ってみて剛性なども確認しながら機種選択すると安心です。
撮影現場での使い方
高さの調整
まず最初に行うのは脚の長さの調節です。何段かになっている三脚の場合は、一番太い脚から伸ばします。次に伸ばすのは2番目に太い脚で、一番細い脚を使うのは最後の手段と考えてください。
また、センターポールは極力伸ばさないようにします。一番細い脚を伸ばしても長さが足りない時に初めてセンターポールを伸ばすというふうに考えておきましょう。できるだけ太い脚を使う、なるべくセンターポールは伸ばさないというのは、風などの影響による振動といった画質低下につながる要因を排除するために、安定性をできるだけ高めて使用したいからです。
センターポールの向きの確認
次に、センターポールが真下を向いているかどうかを確認しましょう。真下を向いていない(=重心が中心からずれていてアンバランスな状態である)と、風を受けたり何か操作しようとして軽く触れたりするだけで三脚が倒れてしまうことがあるからです。
地面が水平であれば、脚の長さを揃えてセッティングすればセンターポールは自動的に真下を向きますが、斜面などに三脚を立てる時にはとくに注意が必要です。水準器や、重りを付けた紐などで確認してください。

(左)水準器で水平を確認しているところ。三脚や雲台に水準器が付属している製品もあります。
(右)暗闇での撮影時には三脚の設置場所がわかりにくいものです。撮影中に不用意に蹴飛ばすような事故を防ぐため、蓄光テープなどを目印として貼り付けておくと便利です。
安定性を高める工夫
撮影現場で風の影響が心配される時には、センターポールの下のフックに重り(モバイルバッテリーやペットボトルなどでも可)をぶら下げると安定性が増します。ただし、重り自体が風に煽られるような状態では、それによって倒れたりブレたりする可能性がありますので、全体の高さをできるだけ低くするなど別の手段も使って風の影響を抑制します。
同様に、風が強いとストラップが揺れて画質に影響を及ぼすこともありますので、ストラップはセンターポールなどに巻きつけておくとより安心です。
使用例

足元が不安定なところで長時間インターバル撮影をした例です。滑らないようなところに脚の先端を置くことはもちろんのこと、できるだけ転倒しないようにセンターポールが垂直になっていることを確認するなどの注意をしました。

カメラを水平方向に回転させながらインターバル撮影をした例です。回転台が水平であることが重要なので、水準器で確認しながらセッティングしました。回転台の下には雲台はなく、脚の長さを調節して水平出しをしました。また、風の影響をできるだけ受けないように、ストラップは雲台に巻き付けてあります。

超小型三脚を使用した例です。海からの風を防ぎたいので髙くする必要はありませんし、フレーミングの微調節も不要なので超小型三脚でも問題ありません。ただし、カメラの髙さが低いために人が写り込んでしまう影響をできるだけ軽減したいので、他の三脚は離れた場所にセットしました。

クルーズ船で日食をインターバル撮影した時のものです。人の頭が写り込まないようにセンターポールを伸ばしました。センターポールはできるだけ伸ばさないのが基本ですが、伸ばす必要のある時には、必要最小量伸ばします。また、風の影響を大きく受ける環境でしたので、できるだけ重い三脚を選びました。
手入れ
三脚は天体望遠鏡を使用しない天体の撮影には欠かせないものですが、多くの場合、カメラやレンズほど大切にされていないかもしれません。決して神経質になる必要はありませんが、何段かある脚の一部がスムーズに伸縮できなくなるというトラブルが発生しがちです。原因としては、水や地面の細かい砂などがパイプの隙間に入り込み、固着することが考えられます。
撮影を終えて帰宅したら、カメラとレンズの清掃だけではなく、三脚も清掃することをおすすめします。何段かの脚をすべて引き出して、水分や細かい砂を拭き取り、そのまましばらく乾燥させましょう。その後、すべての脚を何回か伸縮してみて、スムーズに動くことを確認してから収納しましょう。
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