第74回ニッコールフォトコンテスト
Web部門「ネイチャー」
| 金賞 | |
|---|---|
| 銀賞 | |
| 銅賞 | |
| 入選 |
| 応募点数 | 5,632点 |
|---|---|
| 講評 | 秋山 華子 |
講評 写真家・ニッコールクラブ アドバイザー 秋山 華子
作品に写された世界が見る人の新しい視点を拓く
今回のWeb部門 ネイチャーには、撮影者それぞれの視線を通して、世界を見つめるきっかけになる作品が揃いました。その場所へ赴き、自然と向き合い、自分なりの視点で切り取った光景。広大な風景を見渡す眼もあれば、微細な営みを見逃さない眼もあります。カメラを身体の一部のように自在に操り、刻々と変化する自然の一瞬をすくい上げる。入賞作品には、その確かな技術と一人ひとりの感性が光りました。
金賞に選ばれた池田耕一郎さんの「鏡像の闘争」は、大きく翼を広げて合わせ鏡のように向き合う二羽のコミミズクをとらえています。こちらに顔を向けた一羽と、背を見せるもう一羽。翼の形が呼応する一方で、羽の色や模様の違いがあざやかに浮かび上がっています。淡い青を背景に、二羽の間に保たれた空間にも緊張が宿っており、激しい動きの中から、これほど整った関係が現れる瞬間をとらえたことが見事です。闘争の一場面でありながら、互いの動きを映し合う舞のようにも見え、生き物の姿の美しさに引き込まれます。
銀賞は、根岸桂子さんの「荒海に生きる」。打ち寄せる波の圧倒的な量感と、その中を飛ぶ一羽のカモメの対比が印象的です。白く砕ける波を背景に、小さな黒い姿がくっきりと浮かび上がり、強い存在感を放っています。幾重にも重なる波や飛沫からは、海の音や風の強さまで感じ取ることができます。獲物を捕らえようとする姿から、この厳しい環境もまた、鳥にとっては日々を生きる場所なのだと気づかされました。
銅賞は3作品で、中田将聖さんの「群青に差す橙」は、小川のウグイの群れに見出した色彩が魅力です。深い青の中に婚姻色の橙が点在し、重なり合う魚の体が、複雑でありながら美しい流れを生んでいます。目を凝らすほどに一匹一匹の姿が見えてきて、小さな水辺に息づく命の密度が伝わります。
小西康之さんの「流れ落ちる雲」は、鋭く連なる山々と、斜面を滑り落ちるやわらかな雲の対照が美しい作品です。青を基調とした画面の中で、山肌の質感と雲のなめらかさが互いを引き立てています。撮影者の目の前で繰り広げられる光景を受け止め、雄大な自然の動きを一枚にとらえています。
佐藤章さんの「無垢のまなざし」は、暗い背景から幼いキタキツネの顔が浮かび上がっています。やわらかな毛並みと、光を映す瞳。顔を正面からとらえた構図によって、見る人もまたこの小さな命と向き合うように感じられます。その瞳には何が映っているのか。あどけない表情が、これから出会う世界への想像を掻き立てました。
同じ自然を前にした時、何を見つめ、どの瞬間を写し止めるかは一人ひとり異なります。その感性によってすくい上げられた光景には、写されたものの先へと想像を誘う力があります。一瞬の前後に流れる時間や、画面の外にも続く命の営み、そして撮影者の眼差しをたどることで、作品を見る人の視野は広がっていくのです。見慣れた水辺やふと見上げた空も、作品に触れたあとには、それまでとは少し違って見えることでしょう。これからも、それぞれの感性が拓く新たな視点と、そこから見えてくる自然の表情に出会えることを楽しみにしています。



