第74回ニッコールフォトコンテスト
プリント部門「自由」
| 金賞 | |
|---|---|
| 銀賞 | |
| 銅賞 | |
| 入選 |
| 応募点数 | 5,123点 |
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| 講評 | 小林 紀晴 |
講評 写真家・ニッコールクラブ アドバイザー 小林 紀晴
プリント作品の制作を通じて自分の作品と向き合い続ける
プリント部門は、実際にプリントされた写真を拝見して審査します。モニターで見るのとは違い、紙上の黒の締まり、発色、紙の質感、そのマッチングといったところまで審査の対象となります。被写体や表現はさまざまで、身近な日常から遠い国の風景、歴史を背負った土地まで多彩な作品が集まり、どの作品からも、作者が被写体と向き合った瞬間の思いが伝わってきました。
金賞は、小野早苗さんの「秘密基地」です。ゴールデンウィークに実家へ集まった従姉妹四人を撮影した一枚で、応接室を秘密基地にして作戦会議をしている様子とのことです。窓からの強い光を背に、子どもたちはほとんどシルエットになっています。カーテンに手をかけたりする動きから、子どもたちの楽しそうな声が聞こえてくるかのようです。天井には装飾のついた照明器具が見えており、それによって暗い室内がどこか劇場のようにも感じられました。こうしたストーリーが自然と立ち上がってくるのは、「こと」が写っているからです。この作品は、身近な関係だからこそ撮影することができたはずです。子どもたちだけの「こと」を見事にとらえています。
銀賞に選ばれたのは、赤松昌哉さんの「閉ざされた祈り」。岡山県の長島で撮影した4枚の組写真です。かつてハンセン病で隔離された人たちは、亡くなるまでこの島で暮らすことを強いられたようです。「島にはお寺や教会もあり、人々の諦めや覚悟が感じられる」とコメントにありました。ベッドの上の白い人影、十字架、岩窟に立つマリア像、海へ延びる堤防……。モノクロの重いトーンが、そこに積み重なった思いと時間の長さを感じさせます。声高ではなく、静かに問いかけてくるような作品です。
銅賞は3作品です。土岐令子さんの「夕陽に包まれて」は、ネパールのチトワンで、象と象使いを撮影した作品です。やわらかな夕日が半逆光となり、象の輪郭を縁取っています。草を食べながら近づいてくる象に威圧感はなく、象と象使いの信頼関係が感じられました。夕暮れの空気感と色合いも魅力的で、雄大でありながらおだやかな一枚です。
名倉吉康さんの「郊外のモニュメント」は、浜松市の郊外にぽつんと立つ木を冬に撮影したシリーズです。工場や電柱、住宅のそばで、木だけが存在感を放っています。明るく青みがかった空と枯れた草の色の取り合わせは、かつてのニューカラーを思わせます。抑制の効いた距離感が、ありふれた風景を新鮮に見せました。なにげない場所で立ち止まる、名倉さんの視点にも揺るぎがありません。
餘野照彦さんの「麦畑の詩」は、中津市内の田んぼで撮影した4枚の組写真です。一斉に飛び立つ鳥、15㎜の超広角レンズで撮影したトンボ、舞い降りるシロサギ、昼寝している猫と被写体はバラバラながら、麦畑がそれらをつないでいます。作品全体があたかも一つの庭のようで、この場所に通い続けたからこそ出会えた瞬間の集積です。
入選作品にも、雪の街を見下ろした一枚や、田園に浮かぶ虹、祭祀を扱ったものなど、見応えのある作品が選ばれました。プリント作品は撮影したあとも制作は続き、画像処理やプリントする紙の選択などにも、作者の考えが反映されます。つまり、自分の作品と長い時間向き合うことになります。また、時間を置いてプリントをやり直すこともあるでしょう。その具体的な関わりのなかで、新たに発見することが必ずあるはずです。それはこの時代において、とても貴重なことだと感じています。



