花と、私と、カメラ。春の彩りを残す、豊かな時間

花を選ぶ時から、すでに楽しさは始まっています。
どんな花を飾ろうか、どんなふうに撮ろうか。そんな想像をふくらませるひとときこそ、豊かな時間なのかもしれません。

この記事では、フォトグラファーの小春ハルカさんがフラワーショップ「duft」の若井ちえみさんとともに、花を選び、部屋に飾り、写真に残すまでを紹介します。その過程を通して、花の選び方や飾り方、撮影のヒントを探ります。さらに、フォトグラファーのもなみんさんが、2人が花と触れ合うひとときを写真に収めます。

 

 

ギャラリーのようなフラワーショップ「duft」で花選び

小春ハルカさんが訪れたのは、都心の喧騒から少し離れた小田急線梅ヶ丘駅を降りてすぐにあるフラワーショップ「duft(ドゥフト)」。店名はドイツ語で「香り」を意味し、ギャラリーのような空間に、華やかで形や色に個性を持つ花々が並ぶフラワーショップです。

Zf、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II/photo by もなみん

 

Zf、NIKKOR Z 35mm f/1.4/photo by もなみん

 

Zf、NIKKOR Z 35mm f/1.4/photo by もなみん

 

今回、小春さんと花を一緒に選ぶのはduftのオーナー若井ちえみさん。

小春さんがまず作りたかったのは、チューリップを主役にした花束。
「チューリップを主役にするなら、いろいろなチューリップを混ぜた花束も素敵だと思いますよ。色もミックスしても可愛いです」と若井さん。
相談しながら作った花束に小春さんも笑顔になります。

小春さんのもうひとつのリクエストはガーベラを使った花束。
「私、ガーベラがすごく好きなので、ガーベラをメインにした花束を作りたいんです。そしてチューリップの花束と雰囲気はガラッと変えたいです」
カラフルなチューリップの花束とは対照的に、大人っぽい雰囲気に仕上がると「すごくいいです!自分だけで考えるとどうしても偏っちゃうので」と大喜びの小春さん。

 

小春ハルカさん(左)と若井ちえみさん(右)
Zf、NIKKOR Z 35mm f/1.4/photo by もなみん

 

Zf、NIKKOR Z 35mm f/1.4/photo by もなみん

 

そして読者の方も真似したくなるようなお花も若井さんにオーダーし、ハウススタジオへ移動しました。

 

Zf、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S/photo by もなみん

 

duft

東京都世田谷区梅丘1-33-9 モンド梅ヶ丘ビル2F
営業時間:不定休
https://duft.jp/
https://www.instagram.com/duft__jp/
※詳細はHP、またはInstagramをご確認ください。

注意点:撮影の際はお店の方の許可を得てから、周囲の迷惑にならないよう注意しましょう。撮影のみの利用はご遠慮ください。

 

どう飾り、どう撮る? 部屋での花撮影に活かせるヒント

Zf、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S/photo by もなみん

 

いよいよ花瓶に花を生けて、部屋に飾って撮影します。小春さんが選んだチューリップとガーベラの花束はどのように撮影するのでしょうか? また若井さんが選んだお花は? フォトグラファーの視点とフローリストの視点を、あなたの花撮影の参考にしてみてください。

チューリップはいろいろな種類をミックスすることで、1本1本がより際立つ

小春さんと若井さんが一緒に選んだチューリップと若井さんが選んだ花瓶。さまざまな種類のチューリップが混ざっている
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ


小春さん:「こんなにも躍動感のあるチューリップなんだよ」と伝えたくて、その動きを活かすために引きで撮りました。

選ぶ時に、最初はピンクのチューリップだけを集めてもらおうと思いましたが、若井さんに「チューリップだったら、いろいろな色をミックスしても可愛いですよ」とアドバイスをもらい、お任せしたところ、まさに私好みの世界観になりました。

若井さん:チューリップは、光の当たり方や温度、お水の吸い方で茎の動きが変わります。下を向いていても弱っているとは限りません。他のお花と混ぜてもいいですが、チューリップだけを飾ることによって、茎の動きをダイレクトに楽しめるのでおすすめです。持ち手がある透明な花瓶を選びましたが、透明な花瓶にはたっぷり挿すのもおすすめです。

 

OTHER CUT

チューリップ
Zfc、NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7/photo by 小春ハルカ

 

チューリップ
Zfc、NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:この2枚はマイクロレンズで撮りました。チューリップの質感や模様をきちんと写したいと思って撮った写真です。緑などの他の色も入れてピンクが引き立つようにしました。マイクロレンズだからこそ撮れる写真だと思います。

あえて主役・脇役を考えずに好きな花でまとめてみる

小春さんと若井さんが一緒に選んだ花と若井さんが選んだ花瓶。花は、ディディスカス、ストック、ガーベラ、アンスリウム、イキシア、ラナンキュラス、ラナンキュラスラックス、バラ、チューリップ、コアニー
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:チューリップとガラッと変えたくて若井さんと一緒に選んだお花です。最初はガーベラを主役にして、他の花をどう選ぶかを考えていました。そこで若井さんに相談すると、「主役・脇役は考えず、好きなお花を選ぶといいですよ。お花は全部かわいいので」とアドバイスをいただきました。その言葉を受けて、好きなお花を相談しながら選んでみました。

このお花も動きのある仕上がりだったので引きで華やかさを伝えつつ、テーブルや椅子も入れて奥行きのある構図にしました。

若井さん:花はどれもかわいいので、主役・脇役はあまり意識しなくて大丈夫です。最初のチューリップがピンクとオレンジ系だったので、この花は白や薄ピンクのガーベラを軸に花と花瓶を同系色でまとめ、大人っぽい印象にしました。ガーベラのような一輪でも存在感のある花だけでなく、形や花の付き方が異なる花を混ぜることも、かわいさにつながります。

 

OTHER CUT

ガーベラ
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:立体感を出したくて上から撮りました。この花びらが「寝癖みたい」と思って、心の中で「寝癖の強いガーベラ」と呼んでいました(笑)。お花それぞれに個性があるので、「この特徴をどう引き立てるか」を考えながら、いろいろなアングルから撮るようにしています。

 

コアニー
Zfc、NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7/photo by 小春ハルカ

個性的な花も、花瓶と1対1のバランスを意識すると美しく整う

若井さんが記事のために選んでくださった花と花瓶。キク、アジサイ、パフィオ、アンスリウム、センニンソウ
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:普段選ばない花だったので、どう撮れば一番かわいくなるかをさまざまなアングルで探りました。センニンソウの蔓のインパクトを活かしたくて右に余白をとり、光の方向へ想像が広がるような構図にしました。蔓の動きと光の雰囲気で、この先に何かあるような印象になったと思います。

若井さん:個性が強い花を1本だけよりも、思い切っていくつか入れるとバランスがとりやすくなったりします。また、花瓶と一番高い花の高さを1対1にすると、バランスよく仕上がります。他にも7対3、3対7などのバランスも良いと言われています。今回のアレンジは花瓶と赤いキクがほぼ1対1になっています。加えて、花瓶の口とキクの間にアジサイ、アンスリウム、パフィオを挿して隙間を埋めて寂しく見えないようにしました。 

 

OTHER CUT

アンスリウム
Zfc、NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:これはアンスリウムがハートになっていて、かわいいなと思ったので、そのフォルムを意識して撮影してみました。

一輪挿しが集まると無条件でかわいい

若井さんが記事のために選んでくださった花と花瓶。ラナンキュラスラックス、イキシア、リューココリーネ、エピデンドラム、リモニウム、ラナンキュラス、ガーベラ、コアニー
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:窓際で逆光気味の時は花が少し暗くなってしまうことがあります。この写真では、背景よりも花に露出を合わせてお花の色がしっかりと出るように意識しました。少し明るすぎるかな?と思うくらい、露出を思い切ってあげることで、ふんわり柔らかい印象になります。

若井さん:小さな花瓶ひとつに飾ろうとすると、バランスや色味など、いろいろなことが気になってくると思います。でも、いろいろな花瓶を集めると、適当に挿してもかわいく見えるマジックがあります。たくさん集まることで、バランスが気にならなくなるんですね。鏡を使うと、さらに賑やかになりますよ。

 

OTHER CUT

花瓶は若井さんの私物。ビンテージのもの。出かけた先々で探すことも楽しいとのこと
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:撮影に使ったZfcがすごくかわいいカメラなので、お花と一緒に撮りたくなりました。鏡の前に花を置くだけで、華やかな自撮りも楽しめます。

花びらだけを集めてみる。完璧な状態じゃなくても花は魅力的

若井さんが教えてくれた花瓶以外を使うアイデア。ガラスの皿に花びらを集めたもの
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:いろいろな花びらが散らばっていることがすごく素敵だったので、全体感が伝わるように俯瞰で撮影しました。観葉植物の緑も入ることで、花びらの色味もより引き立ったと思います。ちょうど曇っていたタイミングだったのでシックな印象にしてみました。

若井さん:移動時や飾る際に折れたお花や落ちた花びらも、飾り方次第でかわいくなります。ガラスのお皿に生花の花びらと花を集めて本の上にスタイリングしました。花びらの状態の変化を見ていくことも、物語を感じられると思います。

 

Zfc、NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:いろいろな花の色が無造作に重なった感じが素敵だなと思い、思いきって寄って撮影しました。お花は、咲いている状態だけでなく、花びら一枚でも色彩や質感そのものが美しいんだと、マイクロレンズを通してより感じることができました。

 

なんでもない小瓶も、花とのバランスに気をつければ画になる花瓶に

若井さんが教えてくれた花瓶以外を使うアイデア。なんでもない瓶に花を生けたもの。スカビオサ、アリウム、カランコエ、チューリップ
Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:逆光だったので、最初はお花の動きを生かしたシルエット写真を撮ってみましたが、やっぱりお花の色味や質感も生かしたいと思い、レンズフィルターのブラックミストを付けて撮影した写真です。ブラックミストによって、シャドーやハイライトがふわっとした、優しい印象になります。普段は背景をシンプルにしていくことが多いですが、窓の縁を入れて作り込みすぎず、花がそのままそこにある雰囲気を大切にしました。

若井さん:私は家にあるなんでもない瓶やコップでも、何でも花瓶になると思っています。ただ、高さが低いものに挿すときは、お花を短く切る勇気が大切です。1対1のバランスに合わせてカットするとバランスがとりやすくなります。

 

OTHER CUT

Zfc、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)/photo by 小春ハルカ

 

小春さん:鏡を利用して少し不思議な世界観を表現してみました。大きな鏡がなくても、手持ち鏡でもいろいろな写真が撮れるので、私は普段からよく使っています。

花瓶選び、花選びのまとめ 若井ちえみさん(duft)

Zf、NIKKOR Z 35mm f/1.4/photo by もなみん

 

花瓶の高さは15cm〜20cm、口は狭めがおすすめ

花瓶と花の高さは1対1が基本ですが、飾り慣れていなければ花瓶の高さは15〜20cmのものが扱いやすいです。高いと枝物などを入れないとバランスが取りにくく、口が広いものほど難易度も上がります。花瓶の高さと口径をお花屋さんに伝えると、ちょうどいい長さに調整してもらえます。

 

強い色の花瓶で組み合わせを楽しむ

色の強い花瓶は、補色的にお互いをより鮮やかに見せてくれることがあります。万能とはいえませんが、好みの色の組み合わせを探す楽しさがあります。

逆に何にでも合わせられる花瓶の色は、透明、白、茶色や緑などのアースカラーです。ただ飾ることに馴れてくると、少し物足りなく感じてしまうかもしれません。そんなときは、強い色で花瓶と花の色遊びを楽しんでみてください。

 

花選びは、花屋さん選びから

「このお花屋さんの雰囲気が好きだな」「ここが作るお花が好きだな」と思えるお店で花を選ぶだけでも、おそらく好みの花束に近づけると思います。花屋さんによって置いているお花の種類やテイストはかなり変わります。気に入ったお花屋さんだったらイメージだけ伝えて任せてしまってもいいですし、何本かだけ選んであとはお任せでもいいと思います。イメージを伝えるときは、言葉だとそれぞれ捉え方が違うと思うので、画像などを見せて伝えるとお花屋さんもイメージを把握しやすいのでおすすめです。

「そのときのお花の表情や質感、変化も楽しみたい」小春ハルカ

Zf、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S photo by もなみん

 

小春さん:お花の素敵な写真が撮れることももちろん楽しいですけど、お花を選ぶところから楽しさは始まっていると思います。好きなお花を探して、どんな風に飾って撮ろうか、そういったさまざまなことを想像したり、若井さんと会話をしながら楽しく選んで撮影できました。

心に残っているのは、「主役・脇役を考えずに好きな花を選んでいい」ということです。普段は主役の花を決めてから、脇役として引き立て役の花を選んでいました。でも、「お花はどれもかわいい」とおっしゃっていて。難しく考えすぎていたなと思ったので、自分の好きなお花をまずは選んでみるという気軽さを大切にしたいなって思いました。

私は、お花を撮るときに意識しているポイントがあって、そのときのお花の表情や質感、変化も楽しみたいなと思っています。チューリップやガーベラは、まさに日ごとによって変化があると思っています。最初は小さく咲いていたチューリップも暖かくなると大きく開いてきたり、ガーベラも最初はしゃきんとしているけどだんだんと垂れていったり。そういうことも含めて私はかわいいなと思います。

お花を買った時とその後の変化も含めて私は楽しみたいと思うので、日によって変わるお花の表情を切り取っていきたいと思います。

 

Z f

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小春ハルカ

小春ハルカ

1995年、群馬県出身の写真家。花や日常の美しさを、独自の視点で切り取る。2023年にフリーランスフォトグラファーとして独立し、企業タイアップ、観光撮影、写真講師など多岐にわたり活動中。2025年、都内で初の個展「Colors in Bloom.」を開催。同年、共同書籍『Diaries』を出版し、表現の場を広げている。


もなみん

もなみん

写真家/手書き文字作家。 東京都出身。「日々に転がるときめき」をテーマにナチュラルなテイストで撮り、季節や地元の街、 人と過ごす時間を写真に収めている。写真教室での登壇や、企業のPR撮影・メディア執筆など、幅 広く活動中。「もな文字」で大手企業のロゴ制作を手がけるなど、手書き文字作家としても活動する。 ニコンカレッジ講師。