私と鉄道 銀世界を駆ける電車<前編>
一つの被写体を追い求め続けるプロの写真家に、忘れられない思い入れの強い撮影を振り返っていただきます。
彼らは何を追い求め、どのような思考でシャッターを切るのか。
鉄道写真家・助川康史氏が冬の東北で出会った、雪景色の鉄道。前編は、車両へのこだわりを詰め込んだ鉄道写真です。
後編もチェック!「周りの状況や季節を活かす鉄道風景」とは?
車両をいかに良く見せるかを追求する編成写真
鉄道写真は「編成写真に始まり、編成写真に終わる」と言っても過言ではありません。
流線形の電車は鼻先が長く“すらっ”と見えるように撮りたいし、四角い電車は台形に見えないように“四角く”写したい。その車両ごとの魅力を記録したいと考えています。
新幹線の流線型のヘッドを活かすために、望遠レンズで圧縮効果がかかりすぎないよう100mm程度に収まる距離から撮影しました。
撮影の打率を上げるには、「見かけの速さ」を知ることが大切。同じスピードでも、近くのものは速く動いて見え、遠くのものはゆっくり動いて見えます。そのため、車両に近い位置から撮るとブレやすくなり、遠くから望遠で捉えると写し止めやすくなります。

車両への写り込み
ちなみに、この時は鼻先に架線柱が写り込んでしまったのが残念。車両をより美しく見せるには、発色良く、車両に影が落ちないように、左右の余白が同程度になるように入れる…といういくつかの条件があります。
やや望遠気味にして、1時間後の車両で再トライしました。
今度は架線柱の写り込みを回避できました。
ピントはAF。以前は線路に置きピンが基本でしたが、被写体検出とAF-C(3D-トラッキング)で奥から手前まで高精度にピントが合います。雪に覆われて目印が存在しない場合、ローアングルで線路が見えにくい場合にも有効です。ピントをカメラに任せられると、自分は構図とタイミングに集中できます。
カーブの瞬間は、車両のヘッドを捉えられるスイートスポット。かき分ける雪が舞う光景が実に幻想的です。
私はライトを目と捉え、そこにピントが合うようにしています。この時は、雪が降ったり止んだり。晴れていれば被写体検出+AF-Cでライトにピントが合いますが、降雪時は手前の雪にピントが合う状況。ここは線路が見える場所だったため、置きピンに切り替えました。
もし線路が見えない場合は、左側にある草に置きピンし、その横を通った瞬間にシャッターを切っていたでしょう。カメラの性能は優秀ですが、状況に併せて使い分ける経験が活きてきます。
私は有名な撮影地によく行きます。「どこで撮るか」よりも「そこでいかに自分が求める写真を撮るか」を優先しているからです。
ただし、望んだ条件にならないこともしばしば。上の写真では霧が全く晴れず苦労しましたが、霧によって奥の街並みが消えて車両が浮き上がると考え、置かれた環境を活かして撮影しました。
鉄道写真は本数が少なく、理想の条件が揃うこと自体稀。条件が悪くてもまず1回撮ってみる。それが次の撮影の判断材料になります。
電車のスピードを描き出す流し撮り
そして外せないのが「流し撮り」。シャッタースピードを遅くするため、適正露出が得られやすい曇りや暗い時間帯によく撮影しています。
真横からの新幹線の流線形を見てください。実に美しいです。降雪時には雪も流れ、迫力が際立ちます。形によって真横よりも斜めが良い場合もあり、車両ごとに様々なアングルを試していく中でベストを見つけていきます。
ブレ感を強調するには、森など模様となる場所を背景に。超望遠にすることで、背景は大きく流れるのに対して車両が浮かび上がります。写し止めたい瞬間の前後もしっかりレンズを振りながら連写することで確率がアップ。途切れなく表示されるEVFなら、撮影に集中でき成功率がさらに上がります。
そして、鉄道撮影の定番になりつつある「ズーミング流し」。向かってくる車両に対しては、望遠側から広角側へズームアウトしながら、車両の動きに合わせて振ることで、消失点をコントロールできます。
この時はトンネルを消失点にし、右上から左下に流すことで、飛び出してくるようなダイナミックな表現に。この日、1回目の消失点が理想の場所ではなく、2回目で成功しました。
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写真家の思考を辿る撮影紀行
5つの被写体、5人の写真家。「風景」「ポートレート」「鉄道」「飛行機」「星空」…。どのような思考でシャッターを切るのか、彼らの撮影の記録を追います。
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