私と肖像 息遣いを感じるポートレート<後編>
一つの被写体を追い求め続けるプロの写真家に、忘れられない思い入れの強い撮影を振り返っていただきます。
彼らは何を追い求め、どのような思考でシャッターを切るのか。
写真家・河野英喜氏が長年向き合ってきた「その人らしさ」を写し出すナチュラルポートレート。後編は、撮影前後で重要な「レンズ選びと肌処理」です。
前編もチェック!「生きた表情を引き出す」思考とは?
良い表情を撮り逃さないためのレンズ選び
その人の魅力を引き出し、その瞬間を確実に捉えるために、私にとってレンズ選びは非常に重要です。
理想の写りを求める「単焦点レンズ」
単焦点レンズはその焦点距離に特化しているため、「50mm」なら50mmとしての理想の写りを得られると考えています。
そして、最大の魅力は明るい絞りとボケ感です。開放F値が小さい明るいレンズであるほど、暗所など光量が少ない環境でもAFの確実性が増します。瞳というピンポイントでピントを合わせるポートレートでは、AF精度は重要です。また、大きくマイルドなボケ表現は、被写体をより強く引き立たせるなど、表現の可能性が広がります。
単焦点では撮れない部分を補完する「ズームレンズ」
自分が動けないような現場での柔軟なレンズワークを求める際や、砂・水・埃などレンズ交換を避けたい場所ではズームレンズを使用するため、「お守り」として標準ズームを常に持って行きます。また、100〜200mmなどの望遠でグッと被写体を引き寄せたい時には望遠ズームが便利です。
ズームレンズを使う際も、設定した焦点距離の単焦点として撮影するようにしています。35mmなら「35mmの単焦点」、50mmなら「50mmの単焦点」として、自ら動くことで、それぞれの焦点距離ごとの見え方や特性を意識した撮影ができるからです。

レンズの逆光耐性が表現に影響
動画的に撮影していると背景・光の向きが変わっていきますが、どんな状況でも視線の第一ポイントがモデルになるようにしています。
逆光では、輝く髪や輪郭を捉えたり、人をシルエットでドラマチックに捉えることができます。この時、逆光耐性が弱いレンズの場合、フレアやゴーストが発生することも。エモーショナルな表現として活かすこともありますし、逆光耐性が強いレンズであればクリアな表現が可能になり、「どう写したいか」に合わせてレンズを使い分けています。
上の写真では、人の表情や髪の輝きなどを、アルネオコート・メソアモルファスコートによる逆光耐性で質感豊かに描くことができました。
「キメを消さない」その人らしい肌調整
仕上げの編集も「その人らしさ」を表現する上で重要です。私は、10年後に見返した時に綺麗だと感じられる肌表現を目指しています。
時代と共に色調整の流行があり、アンバー系であったり、青やシアンに寄せたシネマティックな色味だったり。その中で、10年後見返した時にも違和感のない、その場所に実在した光や色を反映させることを意識しています。例えば、木々の緑が反射して肌が緑がかる時は、人為的に色を変えたりはしません。
もう一つ大切にしているのが、「肌」の仕上げです。やりすぎないことをモットーにしていて、一時的なニキビなどは消したとしても、肌のキメや質感といった「その人らしさ」を残すようにしています。
その点、Zシリーズの「美肌効果」はキメが残り非常に良い仕上がりで、常にオンにしています。乾燥する時期の「美肌効果」は、キメを残したまま柔らかさを加えられる裏技です。
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写真家の思考を辿る撮影紀行
5つの被写体、5人の写真家。「風景」「ポートレート」「鉄道」「飛行機」「星空」…。どのような思考でシャッターを切るのか、彼らの撮影の記録を追います。
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