私と肖像 息遣いを感じるポートレート<前編>
一つの被写体を追い求め続けるプロの写真家に、忘れられない思い入れの強い撮影を振り返っていただきます。
彼らは何を追い求め、どのような思考でシャッターを切るのか。
写真家・河野英喜氏が長年向き合ってきた「その人らしさ」を写し出すナチュラルポートレート。前編は、「生きた表情をどう引き出すか」です。
後編もチェック!「撮影前後で重要なレンズ選びと肌処理」
とは?
動画的に生きた表情・動きを捉える
私がポートレートを始めた頃からずっと、その人らしい素の表情を写したいと、撮影を続けてきました。
表情は一期一会。初めて会った人はもちろん、頻繁に会う人でも、撮るたびに初めて見る表情との出会いがあります。それがポートレートの何よりの魅力です。
息遣いを感じ、動きそうな写真。実際に動かないと、このようには撮れません。
初対面で緊張しているモデルには、何かに寄りかかってもらったり、しゃがんでもらったりして緊張感を和らげるところから。その後、その場でぐるぐる回ってもらったり、一緒に歩いたり、小さい動きから少しずつ拡張していきます。
立ち止まった状態でポーズに悩んでいるモデルも、「映像を撮っているように動いてください」とお願いすると、髪をかきあげたり、不思議と動きも自然に。その瞬間瞬間を切り取ることで、動きを感じられる写真が撮りやすくなります。
ただし、私は連写をしない主義。自らの意思で瞬間を切り取ること、それが撮影の楽しさでもあります。この時のピントはAF-C&瞳AFでカメラ任せです。AFが信頼できるカメラなら、モデルとの会話や、シャッターを切ることに集中できます。
一瞬一瞬を撮り逃がさないようにするには、カメラの操作性は重要です。カメラを自分の体の一部にするのが理想で、ミドル機やハイエンド機であれば、自分が操作しやすいようにファンクションボタンやiメニューをカスタマイズできます。
心の距離感を近づけていく
この時のモデルは憂いのある表情が似合う方。もちろんそれも素敵なのですが、せっかくなら自然な笑顔で、撮影者との関係性も感じられるような写真も撮りたいと思いました。
「手を前に出せば出すほど大きな手になるから、どれだけ大きくできるかやってみよう」「もう少し!もう少し!」というやり取りで緊張を解き、この笑顔を引き出すことができました。
画面の傾きは「撮影者と一緒に動いている」という臨場感を出すためですが、良い瞬間を逃さないためには構図よりも表情を捉えることの方が大事だと考えています。

リラックスして撮影できる空気作り
撮影が始まる前に「Instagramでどんな写真をあげているんですか?」など、その人がやっていることを聞き、相手を知ることから。「今日は朝、早かったですよね」でもいいので、言葉を交わして、話しやすい空気を作っていきます。
その人・その場の魅力を引き出すために、「寄って・引いて・もっと寄って」というリズムで撮影していきます。
いきなり近距離で撮ると抵抗があるため、少し寄って、引いてから寄るという緩急をつけると、相手の抵抗も少なくなると考えているからです。ポートレート撮影では相手への配慮を何より大切にしています。
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写真家の思考を辿る撮影紀行
5つの被写体、5人の写真家。「風景」「ポートレート」「鉄道」「飛行機」「星空」…。どのような思考でシャッターを切るのか、彼らの撮影の記録を追います。
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