私と風景 一期一会の桜旅<前編>
一つの被写体を追い求め続けるプロの写真家に、忘れられない思い入れの強い撮影を振り返っていただきます。
彼らは何を追い求め、どのような思考でシャッターを切るのか。
風景写真家・星野佑佳氏の「桜旅」。前編は、悪条件でも諦めない「今しか撮れない風景」です。目の前の光景からストーリーを想像する星野氏の思考を追います。
後編もチェック!「水面描写に見出す無限の可能性」とは?
風景写真家 星野 佑佳
2000年から海外や日本全国を放浪しながら撮影を始める。2005年より地元である京都の風景や風物詩の撮影も手掛ける。近著に『京の祭と行事365日』(淡交社)がある。2011年からスタートした『風景写真』で旅をつづった連載に未発表の作品をプラスしたフォトエッセイ集『撮り旅』を刊行。続編の『もっと撮り旅』をニコンイメージングジャパン公式WEBにて掲載中。
悪天候でこそ出会える一期一会の風景
美しい風景を求めて、日本全国を巡っています。
ですが、自然を相手にする風景撮影では、天候に恵まれないこともざらです。私は諦めの悪い性格なので、「ガソリン代を使っているから元を取らなきゃ」という気持ちで、執念深く被写体を探し続けています。
この日はあいにくの雨でしたが、残雪に雨が降り霧が発生し、地を這うような霧が桜の木を包み幻想的でした。悪条件であるほど、思いがけない風景と出会えることもあります。
悪条件でも腐らずに、ストーリーを探すことで作品が生まれる
どんよりした天気で、桜と空を絡めるのは難しい…。ふと地面を見ると、雪解け部分に黒い汚れが見えていました。晴れていたら決してレンズを向けようとは思いませんが、黒い部分に規則性を見出し、桜風景の模様として取り入れました。
桜は咲いている姿だけでなく、散った情景の良さもあります。ここで私が注目したのは、雪の黒ずんだ部分です。純白な雪よりも薄ピンクの桜の花びらが視認しやすく、「綺麗ではないもの」との対比効果で「綺麗な桜の花びら」がより際立ちます。
そして、地面をよく見ると、枯葉が顔を出していました。紅葉が散り、雪が積もり、桜が咲いて散ってゆく…秋・冬・春の3つの季節の混在。冬の間、雪に閉じ込められていた落ち葉が春の雪解けで再び姿を現した、というストーリーを1枚に表現しました。
折れ、裂けた幹に散り花。桜の花びらが別れを惜しみ、縋っているような…。
目の前にある光景から、「これとこれを組み合わせたら」という漠然とした考えでスタートしても良いのです。
アングルや構図を探る中でストーリーを思い描けると、「風景作品」になると考えています。
暗闇の中に潜む風景の美を求めて
夜の桜。見た目は暗くても、街灯などのわずかな光で浮かび上がる桜が、私は好きです。桜は色が白系なので、長時間露出によって綺麗に表現できます。
ただし、構図決めや操作など、暗所そのものが撮影する上で悪条件です。以前は、構図を決めるために何回もシャッターを切っては調整…ということを繰り返していました。その点、画面が明るく見やすくなる「スターライトビュー」を使うとリアルタイムで構図決めができますし、操作に必要なボタンが光る「イルミネーター点灯」により、劇的に撮影しやすくなりました。
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写真家の思考を辿る撮影紀行
5つの被写体、5人の写真家。「風景」「ポートレート」「鉄道」「飛行機」「星空」…。どのような思考でシャッターを切るのか、彼らの撮影の記録を追います。
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