花火をもっと印象的に写す、レンズ選びと構図の考え方

夏のイメージがある花火大会ですが、1年を通して様々な場所で開催されています。花火撮影は、「暗い時間帯に短時間で、次々と打ち上がるので難しい」「花火の美しさや迫力をうまく表現できない」と感じている方も多いのではないでしょうか?
今回はフォトグラファーのKoichiさんに、花火を撮る際の機材や設定、花火の魅力を際立たせる被写体の組み合わせや構図の決め方など、撮影のポイントを教えていただきます。
Koichiさん(フォトグラファー)

風景とポートレートをメインで撮影。「心に響く写真」をコンセプトに、日常を切り取る。常に新しい写真の楽しみ方を模索している。
ショート動画でポイントをチェック!
「花火の美しさや迫力を際立たせる撮影術」をショート動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
花火撮影の下準備と注意点

左:NIKKOR Z 24-70mm f/4 S、右:NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
Koichi:花火は撮影前の下調べが大切です。打ち上げ場所・鑑賞位置がどこにあり、どれくらいの大きさの花火が打ち上がるのかを知っていると、持っていくレンズを決めることができます。上の2枚の写真は、実は予想とは違う位置から上がり、慌てて焦点距離や向きを変えて撮影しました。年によって打ち上げ場所が変わることもあるので、調べて行きましょう。
<花火撮影の注意>
- 周りの迷惑になる場所での撮影・迷惑になる行為はしない
- 花火大会のルールを確認し、厳守する(場所取りのルールや三脚の使用可否なども確認)
花火の魅力を引き出し、表現に活かすポイント
Koichi:花火大会では、花火そのものの美しさに加えて、周囲の環境や人を入れ込むことで、その場所ならではの特別な雰囲気まで表現できます。
花火の規模や距離、撮影位置や撮りたい表現によって、レンズの選択や設定が変わってきますが、具体例をもとに撮影のポイントを紹介していきます。
超広角で情報を多く入れ、その場の臨場感を表現

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S/17.5mm・F16・20秒・ISO100
Koichi:港で撮影した花火です。打ち上げ位置から約400mと近い場所で、花火と水面のリフレクション、手前の人まで入れるため超広角を選びました。広角になるほど、船や水面など画角内での情報が増え、その場所ならではの臨場感が伝わります。花火を反射する手前の水たまりが面白く、そこまでフレームインさせたのがこだわりで、この日・この時だけの光景です。
正面の花火は20mm前後で収まる予想で、少し広めに構えていました。三脚を使い、花火と人が一直線上になる位置に構え、F値は手前から奥まで全体にピントが合うよう16まで絞っています。

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S/24mm・F13・70秒・ISO64
こちらは打ち上げ位置から約1kmほどの場所で、広角で街の情景と共に切り取りました。小さめな花火がゆっくり上がるため、長時間露出により連続で打ち上がる花火をまとめて1枚に。三脚が必要になりますが、シャッタースピードを遅くするほど街も明るく写せます。
花火を画角いっぱいに入れ、スケール感を表現

NIKKOR Z 24-70mm f/4 S/24mm・F14・15秒・ISO64
Koichi:打ち上げ位置から1kmほど離れた場所では、標準ズームで画角いっぱいに花火を写すことができます。プログラムを確認して大きな花火のタイミングだったので24mmに。花火が画角ギリギリになるよう調整し、迫力を伝えました。

NIKKOR Z 24-70mm f/4 S/62mm・F18・25秒・ISO64
こちらは打ち上げ位置から2〜3km離れた場所です。空の余白を極力減らすように焦点距離を選択し、次々と打ち上がる花火を長時間露出で1枚に。水面への反射が美しさを際立てています。また、観客のシルエットを入れることで、人の大きさとの対比で花火のスケール感を強調しました。
花火の輝きや風情をポートレートに活かす

NIKKOR Z 50mm f/1.2 S/F1.2・1/5秒・ISO100
Koichi:花火を背景に人を撮影することで、印象的なポートレート写真になります。ボケ表現が大切なので単焦点レンズを使用しました。今回はNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sを使用しましたが、開放F値が小さいほど、露出を確保しやすい上に花火のボケ表現を楽しめます。
打ち上げ位置から約1km離れた場所で、花火を画角いっぱいに写すため50mmに。モデルさんとは10mほど離れ、単焦点で花火を優しくぼかし、花火の風情を活かしました。土手の上にモデルさんに立ってもらい、下から煽るようにすると要素を絞ることができ、花火の美しさが際立ちます。
空に青みが残る時間帯を狙うことで、人が闇に紛れず浮かび上がり、手前の草のディテールも残っているため立体感が生まれ、奥へと視線誘導もできました。

NIKKOR Z 50mm f/1.2 S/左右とも:F1.2・1/5秒・ISO100
次々と打ち上がる花火を連写することで、一瞬で散ってしまう花火の様々な形の変化を捉えられ、より良い状態の写真を選ぶことができます。
シャッタースピードが速いほどブレを抑えられますが、花火が開く様を線で表現したかったため、自分が手持ちできるギリギリのスローシャッターで撮影しました。
花火を大きな玉ボケにし、幻想的な世界観を表現

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena/F1.8・1/8秒・ISO100
Koichi:最後にお見せしたいのが、135mmの中望遠レンズによる写真です。打ち上げ位置から約1km離れ、モデルさんとは10mほど離れた場所で撮影しています。
花火を点として捉え、望遠ならではの大きなボケと小さなF値によるボケが合わさり、このレンズならではの幻想的な表現ができました。特に明るい花火が次々と打ち上がるスターマインでは、「切り絵」のようにシルエットが浮かび上がり、同じ構図でも背景が変わり画作りを楽しめます。

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena/F1.8・1/40秒・ISO100
また、輝度が高い花火で画面を埋め尽くし開放で撮影すると、シャッタースピードを速くできるため、手持ち撮影のハードルが一気に下がります。
花火撮影のためのレンズ選び・設定
Koichi:花火大会ごとに適したレンズや、花火の種類によっても設定を調整する必要がありますが、目安としているポイントを紹介します。
花火撮影の可能性を高めるレンズ選び
- 超広角ズームレンズ:打ち上げ位置から500m程度の近くから、花火を周辺の風景と合わせて撮る時に適しています。全体にピントを合わせるために絞るため、三脚が使用できる場所かの確認が必要です。
- 標準ズームレンズ:24mm〜70mmの焦点距離域であれば、打ち上げ位置から500m〜2km程度は対応可能です(花火の大きさにもよります)。どんな規模の花火が上がるのか分からない場合や、スターマイン→尺玉のような連続して様々な種類の花火が上がる場面でも重宝します。

NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S

NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
- 標準単焦点レンズ:明るいF値であるほど、手持ち撮影がしやすくなります。打ち上げ位置から1km以内の花火に近い位置からポートレートなど被写体と共にテンポ良く撮りたい時や、祭りの雰囲気も活かしたスナップ撮影に適しています。
- 望遠単焦点レンズ:花火会場から数km離れている場合、もしくは被写体の背景を大きくぼかした花火ポートレートが撮りたい場合に適しています。背景を花火で埋め尽くして明るさを確保できると、手持ち撮影がしやすくなります。

NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
花火と表現に合わせた設定
Koichi:露出の確保と、花火の描写を点か線にするかによるシャッタースピードの調整が必要です。花火を線で描写すると、華やかさや散り際の侘び寂びなど、花火の持つ魅力を表現できます。

NIKKOR Z 50mm f/1.2 S/左:F8・10秒・ISO100(三脚使用)、右:F1.8・1/25秒・ISO160(手持ち撮影)
手ブレ補正の付いているカメラであれば、遅めのシャッタースピードでも手持ち撮影できる可能性が高まります。私の場合、ボディ内5軸手ブレ補正が付いているカメラで、1/15秒以下のシャッタースピードでもブレを抑えた撮影が可能でした。
風の強さや足場の状態にもよるので、どれくらいのシャッタースピードまでなら手持ちでブレないかをテストしましょう。

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena/F1.8・ISO100
左:1/4秒、右:1/40秒
なお、花火によって明るさが大きく変わるため、同じ構図でもシャッタースピードの調整が必要です。花火の明るさは実際に上がってみないと分からず、明るい場合はシャッタースピードを速く、暗めでゆっくり落ちていく花火の場合はシャッタースピードを遅くすることで、花火ごとの特徴を活かした背景にすることができます。
花火撮影ではMモードでF値とシャッタースピードを調整することが多いのですが、F値を開放などに固定する場合はAモードでも撮影可能です。Aモードであれば、明るい花火が上がった時に自動でシャッタースピードを速くしてくれるので白飛びも防げます。
まとめ
Koichi:今回ご紹介したのは、花火撮影のあくまで一例です。花火撮影に正解はないので、お持ちのカメラやレンズで撮りに行ってみて、物足りなさを感じたり、撮りたい写真イメージが固まってきたら、それに合う機材を選択していくのが良いのではないかなと考えています。私も初めて花火×ポートレート撮影をした時は、風景用に持っていた50mm f/1.8の単焦点レンズでたくさん試し撮りをしました。
皆さんもぜひ、花火を楽しんで、そして撮影も楽しんでもらえたらと思います。様々な花火を撮っていくうちに、「今度はこう撮ってみよう」と次に活きますし、うまく撮れた時の達成感も大きいです。
おすすめ機材
NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
コンパクトさと圧倒的な描写力を両立する、大口径超広角ズームレンズ。より気軽に14mmからの超広角ズームでダイナミックな作品作りを楽しめる。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
開放F値1.2による圧倒的に美しく滑らかなボケ、高い解像力により、被写体を立体的に際立たせる。S-Line最高クラスの光学性能を堪能できる大口径標準単焦点レンズ。








