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表現ごとのF値の決め方。ボケで主題を強調?全体にピントを合わせる?

表現ごとのF値の決め方。ボケで主題を強調?全体にピントを合わせる?

皆さんは、撮影する時にF値をどのように決めていますか?「なんとなく同じF値で撮っている」「その場に応じたF値の決め方が分からない」ということも多いのではないでしょうか。

フォトグラファーの上田晃司さんに、「背景をぼかして主題を際立たせる」「全体にピントを合わせてシャープに写す」など表現に応じたF値の決め方を、実際のシーンごとに教えていただきます。

上田晃司さん(フォトグラファー)

上田晃司(フォトグラファー)

米国に留学し、写真と映像を学び、CMやドキュメンタリーを撮影。帰国後、写真家 塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファー、映像作家として活動開始。新しい技術をいち早く取り入れ、写真や映像表現に活かしている。

ショート動画でポイントをチェック!

「表現に合わせたF値の決め方」をショート動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。

撮りたい表現に合わせたF値の決め方

レンズの焦点距離、被写体の大きさや被写体との距離、背景との距離などによって写り方が変わるため、実際の状況に応じてF値を決めていきます。
F値の違いに注目するため、単焦点レンズで焦点距離を固定に。背景も活かしやすい焦点距離35mmのNIKKOR Z 35mm f/1.8 Sでスナップし、植物や建造物など実際のシーンごとに紹介していきます。

【開放F値】花や物、主題を際立たせるために周囲を大きくぼかす

花を主題に際立たせる

上田:木に咲くピンクの花に着目しました。
たくさんの花が咲いている中で、主題の花を強調するにはボケを活用します。上を向いて撮ると、木漏れ日も狙えます。

F8で撮影すると、主題の花をシャープに描写できますが、周囲のディテールも視認でき、主題が目立ちにくい状況です。

F8で撮影すると主題が目立ちにくい

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F8

F1.8で周囲をぼかすことで主題が際立つ

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F1.8

F1.8まで小さくすると背景が大きくボケ、主題の花が立体的に浮かび上がります。木漏れ日による玉ボケ(丸ボケ)も得られました。

ぼかしたいものに近づくことで、より大きくボケる

手前をぼかす際、ぼかす対象が遠いとボケにくい

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F1.8

ぼかす対象に近づくと大きな前ボケになる

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F1.8

今度はボート場を主題に。離れた位置の被写体を撮る際、その背景はボケにくいため、手前をぼかすことで主題を際立たせることができます。2つの写真はどちらもF1.8で撮影していますが、2枚目のようにぼかしたい植物に近づくことで大きな前ボケが得られ、視線誘導の効果が強まりました。

[Tips]「周辺光量落ち」を画作りに
周辺光量落ちを活かし視線誘導

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F1.8

画面の周辺部分が暗く写る「周辺光量落ち」は、レンズ特性や撮影状況によって度合いは変わりますが、開放F値に近いほど起こりやすい現象です。気になる場合はF値を大きくすることで目立たなくなりますが、周辺光量落ちを画作りに活かすこともできます。
上の写真の時は曇りで白い空でしたが、開放F1.8で周辺光量落ちによるグラデーションを生み出し、中央へと視線を誘導しました。手前のポールを大きくぼかすことも視線誘導につながっています。

【F4】奥行きのある被写体のぼかす範囲をコントロール

奥行きのある被写体のぼかす範囲をコントロール

上田:アジサイの群生地で、手前のアジサイを撮影することに。
35mmで被写体を大きく強調するため、最短撮影距離まで思い切り近づきます。

被写体に近づくほどボケやすくなり、F1.8にすると被写界深度が浅すぎて、主題のアジサイの大半がボケてしまいました(手前のピントが合った装飾花は、シャープなのですが)。

F1.8では写したい範囲の大半がボケてしまう

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F1.8

F4まで絞ることで写したい範囲のディテールを描写できる

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F4

そこで、F4まで絞ります。写したい範囲のディテールを表現できました。なお、これ以上F値を大きくすると背景もくっきり写ってくるため、自分の表現したいことに合わせて調整するのがポイントです。

玉ボケの歪みが気になる時はF値を少し大きくする

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F2.2

こちらの写真は、玉ボケの形をきれいにするためにF2.2まで絞りました。レンズによりますが、開放F値付近では口径食の影響で、玉ボケの形が歪む可能性があります。
※口径食:丸い形のボケが画面周辺になるにつれてレモンのような楕円型になって写る現象。

【F16】全体をシャープに写し、環境を画作りに活かす

全体をシャープに写し、環境を画作りに活かす

上田:遠くのビルを撮影する際に、手前にある柵を活用してみます。下に隙間があったので、そこから覗き込むような撮り方です。
柵などは避けて撮影しがちかと思いますが、一見邪魔な物を味方にするという撮り方もぜひトライしてみてください。

まずF1.8にしてみます。手前が大きくボケて、雰囲気はあるものの何かよく分かりません。

F1.8では手前がボケすぎて何かよく分からない

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F1.8

F16まで絞ることでディテールを描写でき、覗き込んでいる状況が伝わる

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
F16

このレンズの最小絞りであるF16まで絞りました。手前のエッジと奥のビルがしっかり写り、ソリッドなかっこ良さと覗き込んでいる状況も伝わる写真になりました。
なお、F値を大きくした場合、適正露出を得るためにシャッタースピードが遅くなり、暗所などではブレの可能性が増します。注意しておきたいポイントです。

[Tips]F値を大きくし、点光源に線を発生させる「光条」で輝きアップ
F値を大きくすると光条が発生し輝きアップ

左:F11・6秒、右:F1.8・1/6秒

街灯などの点光源を撮影する際、F値を大きくしていくと光の線(光条)が発生します。線の数は絞り羽根の枚数で決まり、9枚なら線が18本。F値を大きくするほど線が伸び、煌びやかで印象的な光景になります。ただし、適正露出を得るにはシャッタースピードが遅くなるため、三脚に固定するなどブレない工夫が必要です。

[Tips]F値を大きくしすぎるとボヤける?注意したい「回折現象」
F値を大きくしすぎると「回折現象」でボヤける可能性がある

左:F4、右:F22

F値を過度に大きくした際に、光が絞り羽根の縁に回り込んで干渉し、解像感が低下する現象を「回折現象」と呼びます。気になる際はF値を小さくする、もしくはカメラの「回折補正」機能により軽減が可能です。

まとめ

上田:使うレンズの焦点距離や実際の撮影状況によりますが、経験から以下のような目安を持っています。

  • 花などを近づいて撮る場合: F4程度
  • 風景:F5.6〜8程度
  • 人物:開放F値〜
F値の決め方を身に付けるには、スナップや旅撮影がおすすめです。多くの被写体に出会うことで、表現したいことに合ったF値が見えてきます。

もし迷った場合は開放F値から撮影してみる

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
左:F1.8、右: F8

もし迷った場合は開放F値に設定して、そこからどの程度絞るか考えてみるのも手です。上の写真では背景がボケた方が主題の街灯が際立つため、F1.8を選択しました。
Aモード(+ISOオート)に設定すると、適正露出になるようF値以外をカメラが調整してくれます。まずはF値による表現の違いを、お手持ちのレンズと色々な被写体でも試してみてください。

おすすめ機材

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

被写体の存在感と周囲の空気感をバランス良く写せる、幅広いシーンで威力を発揮する大口径の広角単焦点レンズ。

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Photographer

上田晃司(フォトグラファー)
Photo: 上田晃司(フォトグラファー)

米国に留学し、写真と映像を学び、CMやドキュメンタリーを撮影。帰国後、写真家 塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファー、映像作家として活動開始。新しい技術をいち早く取り入れ、写真や映像表現に活かしている。2014年頃からはドローンを取り入れた撮影も行う。現在は、雑誌、広告を中心に、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。講演や執筆活動も行っている。