ポートレート撮影の単焦点レンズの選び方。表現の違いから見つける理想の焦点距離

「ポートレート撮影でボケ表現を活かせる単焦点レンズが欲しいけれど、どの焦点距離を選べばいいか分からない…」「自分の撮りたい表現に合ったレンズが知りたい…」そんなお悩みはありませんか?
今回はフォトグラファーのKoichiさんに、代表的な焦点距離である35mm/50mm/85mm さらには135mmまで、ポートレートでの単焦点レンズの写りの違い、被写体との距離感の違い、そして表現に応じた使い分けを教えていただきます。
Koichiさん(フォトグラファー)

風景とポートレートをメインで撮影。「心に響く写真」をコンセプトに、日常を切り取る。常に新しい写真の楽しみ方を模索している。
ショート動画でポイントをチェック!
「ポートレートにおける単焦点レンズの写りの違い」をショート動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
35mm/50mm/85mmで変わる、写り方や被写体との距離感

35mm

50mm

85mm
Koichi:焦点距離によって写る範囲が変わり、同じ位置から撮ると上のように焦点距離が長いほど被写体が大きく写り、背景のボケが大きくなります。
それでは、被写体が同じ大きさに写るようにすると、どうなるでしょうか?



背景の木々の量が変わっているのが分かると思います。
焦点距離が短いほど背景が広く入り、「どこにいる」という場所の情報が増加。遠近感も強まります。一方、焦点距離が長いほど背景の範囲が狭まり、場所の情報が減少。背景が近づいて感じる圧縮効果が強まります。

撮影時の被写体との距離:(上)35mm(下)85mm
また、被写体が同じ大きさに写るようにするには、焦点距離が長くなるほど被写体と撮影者の距離が離れることに。距離が近いほどシャッター音が届きやすく、コミュニケーションが取りやすいため、会話しながらリラックスした撮影ができるという利点があります。
撮りたい表現に合わせた単焦点レンズの使い分け
ポートレートでは、レンズによる「写りの違い」「撮り方の違い」を表現に活かすのがポイントです。35mmから、50mm、85mm、さらに135mmの4本について紹介します。
【35mm】人のいる空間を活かすポートレート

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
Koichi:35mmは肉眼で見ているよりも広く、人がいる空間を切り取るのに適しています。
上の写真では、手前から奥にかけての美しい床模様や背景に広がる建物の造形を広く写したいと考え、35mmを選択しました。遠近感が強調され、より中心の被写体に目がいきます。被写体と5mほどの位置から撮影すると、じんわり背景がボケて、被写体を浮かび上がらせてくれます。

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
35mmでは寄り気味でも背景を活かせます。1枚目の写真では、背景に青空や街並みを入れてロケーションが分かるように。被写体との距離が近いので、表情や顔の角度、手の位置など細かい指示が届きやすいです。
2枚目の写真では、被写体から離れて撮影。同じF値でも背景のボケ量が減り、ディテールが出てくるので、被写体の後ろに配置する建物の位置などを考えて撮る必要があります。

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
カフェや屋内で、被写体と距離を取れない場合も35mmは活躍します。上の写真では店内の様子を広く入れ、趣あるお店の雰囲気を活かすことができました。テーブルの上にある食べ物などと一緒に撮るのにも適しています。ただし、寄りすぎると顔が外に少し伸びてしまうので注意しましょう。
【50mm】人と背景をバランス良く。「自然な空気感」ごと切り取る

NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Koichi:50mmは肉眼で見ている光景に近く、人と背景をバランス良く写せる、扱いやすい焦点距離です。
寄って撮影をすれば、背景が大きくボケ、被写体が際立ちます。撮影者と被写体が自然な距離感になり、コミュニケーションを取りながらの撮影がスムーズに。息遣いを感じる、その人らしさを感じる瞬間を切り取れます。

NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
街中を歩きながらのポートレートで、「良いな」と感じた瞬間にスムーズに構図を決めやすい画角です。撮影者が後ろに下がれば、開放F値で撮影しても背景がボケすぎず、その場所の情報を伝えられる写真を撮ることもできます。

NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
こちらは対岸から被写体と10m以上離れて撮影しました。35mmでは手前の川など余分な情報が増えてしまうため、50mmを選択。歪みなく自然な空気感で切り取ることができました。
【85mm】日常を超えた描写で、人をより美しく描き出す

NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
Koichi:85mmは主役を浮かび上がらせる、人がメインの撮影に適したレンズです。
背景を狭める+大きなボケにより、日常の要素を除き、非日常の雰囲気で切り取ることができます。その上で背景にぼかす色や形などが、写真のイメージを大きく変えるため、ボケの位置をしっかり考えながら撮ることがポイントです。
被写体に寄って撮影する場合、前後が大きくボケるため、瞳にしっかりピントが合っていることを確認しながら撮影することを忘れずに。

NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
85mmは、背景整理をしやすいのもメリットです。周りに人が多い場所でも写る部分が限定されるので、被写体に目がいくような切り取り方ができます。背景とのバランスや顔の後ろにくる景色のバランスなどに注意しながら撮影しましょう。

NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
85mmで引いてみるとどうでしょう?
被写体との距離は大きく離れますが、背景の情報が圧縮されるので、まとまった印象の写真になります。
【135mm】圧倒的なボケに包まれるドラマチックな表現

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Koichi:さらに135mmで撮影すると、背景は非常に大きくボケます。圧縮効果も増し、背景をボケで埋め尽くすなど想像以上の世界観を表現できます。特に「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」は円形度の高い美しいボケが圧巻です。上の写真では、木漏れ日が背景にキラキラと輝き、被写体を引き立てています。

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
135mmでは開放F1.8で、遠い背景は色の情報しか分からなくなるほど大きくボケます。被写体と背景を大きく切り離し、被写体の美しさを存分に魅せるレンズです。
1枚目の写真では、背景に続くカラフルな提灯をぼかし、被写体を引き立てるために顔周りに配置しています。2枚目の写真では、モデルさんにピントを合わせたい藤の位置に立ってもらい、ローアングルで奥の紫と白の藤を引き寄せました。ボケやすいため、被写体の位置や背景の入れ方のバランスが大事です。

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
135mmという焦点距離は、被写体と離れて撮影すると、望遠ならではの圧縮効果で背景にある景色が被写体に迫っているような迫力のある表現ができます。なお、モデルさんとは会話が難しくなる距離感での撮影になるため、事前にどんなポージングをどのタイミングでしてもらうのかを伝えておくのがポイントです。
まとめ

左上:NIKKOR Z 35mm f/1.8 S、右上:NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、左下:NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、右下:NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Koichi:ポートレート撮影において、周囲を大きくぼかして被写体を際立たせる「単焦点レンズ」は欠かせない存在です。
- 35mm:周囲の環境や場所の雰囲気も一緒に活かせる
- 50mm:扱いやすく、肉眼に近い自然な空気感で撮れる
- 85mm:大きなボケ味で、被写体を浮き上がらせる
- 135mm:とろけるボケ味と圧縮効果で、ドラマチックに表現
レンズの魅力は、実際に使ってみないと気づけないことも多いもの。ぜひ実機を手に取って、あなたの「撮りたい表現」を探してみてください。
モデル:るか( Instagram )





