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行ったり来たり(兵庫県三木市)

Z8/NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(24mm)/f8AE・2.5秒・-1EV/ISO400/RAW/NX-Studio/晴天/ビビッド/PL+ハーフND/三脚/'25年2月10日6時23分/兵庫県三木市・黒滝

間に合ってよかった。朝日に輝く氷瀑を撮りながら、心の中でつぶやく。まずは、滝の氷柱がまだ溶けていなかったこと。そして、最前列を確保できる時間に、ここへ来られたこと。昨夜、急に思いついて出発したから下調べが不十分で、この撮影ポイントへ辿り着くまでが大変だった。初めての場所に、暗い時間帯に到着するのは、方向音痴の私には難易度が高すぎた。

ここ、「三木のナイアガラ」とも呼ばれる黒滝が一部凍結したと聞き、車のナビ頼りで目指したが、最後の曲がり角の細い農道が見つけられず、何度も通り過ぎて、行ったり来たり。おまけにナビが到着を宣言した場所は先客車で埋まっており、方向転換も難しかったので、狭い道をバックで戻る羽目に。車のバックモニターは暗いと把握しづらく、踏み外したら田んぼに落ちるから、とにかく怖い。何度も何度もハンドルを切り返して、やっと国道に戻れた頃にはぐったりと疲れ果てていた。

─どうしよう。今さらだがスマホで調べると、徒歩10分ほどの「山田錦の郷」に車を停められるようだ。が、そこも着いてみると、休館日で駐車場は閉まっていた。

─どうしよう。道を尋ねようにも、近くのコンビニも早朝のためか閉まっている。もちろん、歩いている人もいない。仕方ない。車を走らせ国道沿いで駐車できそうな場所を探すが、やっぱり見つからない。

─どうしようどうしよう。時間ばかりが過ぎていく。

結局、山田錦の郷の奥に第二駐車場を見付けたが、かなりの時間をロスしてしまった。星も撮りたかったのに、急がないと明るくなってしまう。小走りで滝を見下ろす公園に着くと、川の向こうに数台のカメラのランプが見え、話し声が聞こえてきた。

「あそこか!」

先客がいてよかった。暗闇で誰もいないと、どこが撮影ポイントか分からない。早く三脚の場所を確保しなければ……。焦る気持ちをなだめつつ、私は滝の上流の薄氷まじりの川を、躊躇なく渡り始めた。

水量は多くないが、長靴だと浸水しそうだ。こんなこともあろうかと、ウェダースーツを着用してきて正解だった。

チャプンチャプンチャプン。踏み抜きそうな薄氷を避けて、水深が浅く川の流れがゆるやかな場所を選びながら、一歩一歩、慎重に歩く。

撮影中のカメラマンは滝の下にいるから、たぶん光は直接届かないけど、なるべく邪魔にならないよう、光量を抑えたヘッドランプを手で持ち、進行方向の水面だけを照らすように気を配る。真夏なら裸足でバチャバチャ行けそうだけど、ウェダースーツの生地は防寒用でないから、水の冷たさが身にしみてくる。何より、滑りそうで怖い。「ここで転んだら、終わる」

滝からは少し離れているから、そのまま流されて落ちることはないだろうが、照らした水面しか見えないから、けっこう怖い。

   *

苦心の末、ようやく対岸に着いたが、そこには藪しかなく、撮影ポイントである一段下の河原へ降りるための階段も坂道もなかった。この藪の中に道があるの? 観光地でそんなサバイバル仕様?

「そこ、どうやって降りられましたかぁ?」
大声で下にいるカメラマンに尋ねると、川下の中洲を渡らないと行けないらしい。

ガーン……。今、渡ってきた川を戻るの? あんなに怖い思いをしたのに? 神経すり減らしながら渡ってきたのに? 半泣きで再び川を渡り、きちんと整備された歩道を下って、川下から対岸に向かった。こちらはギリギリ地面が続いており、スニーカーでも大丈夫そうだ。

「急がば回れ」

氷混じりの川に入る前に、もうちょっと冷静に周りの状況を把握するべきだった。

   *

待望の目的地に着いて、ちょっとだけ星を撮ると、すぐに夜明けが迫り、どんどん人が増えてきた。川向こうからの鑑賞で満足して引き返す人もいるし、対岸にいる私たちを見て、こちらに向かう人も多いが、明るくなって見通しがいいせいか、みんなちゃんと迂回路を通ってくる。そもそも、薄氷の張っている川を渡ろうなんて、よっぽどだよね。私だって長靴なら諦めていた。

何はともあれ、無事、氷瀑の朝風景を撮ることができたが、人が過密なカオス状態で落ち着かなかったからか、撮影時の記憶がほとんどない。ただ、ただ、暗くて狭い農道をバックするのが怖かった。暗くて冷たい川を渡るのが怖かった。そんなほろ苦い思い出ばかりが残る冒険だった。


旅ノート

山田錦の郷は2025年4月に「道の駅よかわ」としてリニューアルオープンした(私が訪問した時は、工事中だったのかもしれない)。黒滝の他にも、比較的楽に行けて絵になる氷瀑・氷柱は、清滝・新滝(長野県王滝村)、鍋ケ滝(熊本県小国村)、白川氷柱(長野県木曽町)などがお勧め。

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写真・エッセイ:星野佑佳
風景写真2026年1-2月号

Z 8製品ページ

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