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運命の出会い(新潟県長岡市)

Z 9/NIKKOR Z 24-70mm f/4 S/f11・1/6秒(−0.7EV)/ISO100/RAW/Capture NX-D/晴天/ビビッド/CPL/'22年4月23日13時30分/新潟県長岡市

ピクピクピク……。
断続的にまぶたが小さく痙攣しているような気がする。気色悪いなあ。痛くもないし困らないけど、小心者の私は、何か病気の前兆ではと勘ぐってしまい怖くなる。ここ数日、新潟の残雪に咲く桜にはまり、朝から翌朝まで撮りっぱなしで睡眠不足の上、ものすごく肩が凝っているから、そのせいだと思うのだけど……。

これは温泉で疲れを取るしかないなと訪れた日帰り温泉の受付で、いつもなら気にも留めない「マッサージ」の文字にくぎ付けになった。友人に肩をもんでもらうのは好きだけど、うまいか下手かもわからないマッサージに何千円も払おうと思ったことなどないのだが、背に腹は代えられない。イチかバチか、受けてみることにした。

ところがこれが「延長」をお願いするほどの大当たりで、撮影のついでに二日連続で通ったあと、後ろ髪を引かれながら、桜を追いかけて北上した。

   *

山形で数日間、お目当ての桜を撮った頃、新潟の中子の桜満開の情報が入る。
何年も前に残雪と桜のコラボを撮り損ねて以来、毎年、撮影候補に入れているが、なかなか桜と雪のタイミングが合わず、今年も満開に近づくにつれ、せっかく残っていた雪はどんどん溶けていった。
中子は断念してこのまま北へ進もうか、もう一度、新潟へ戻ろうかと悩んだが、「東北の桜」VS「新潟の桜」対決は、マッサージのオプションにそっと背中を押されて新潟に軍配が上がり、私は再び南下した。

   *

早朝の中子の桜会場は、懇親会のように先輩後輩知人友人であふれかえっていた。残雪もほとんどなく、霧も出ず、写欲をそそる状況ではなく、知り合いと雑談しながら撮るともなく撮っていたら、いつもお世話になっているNさんからメッセージが届く。「Yさんのオススメの桜に向かってるけど、ゆかちゃんも来ない?」

中子から1時間半ほどの場所にとっておきの桜があるらしい。
「行きます!」と即答したものの、中子会場の井戸端会議は盛り上がり、おしゃべりがとまらない。

しばらくして、またNさんから、道中ずっと霧に包まれて、桜と霧のコラボが期待大との連絡をもらったが、「道中と目的地とはまた違うよね」……と久しぶりのおしゃべりが楽しすぎてグズグズグズ。現地に到着したNさんからの「霧だよ!」の一言で、やっと重い腰が上がり、中子を離れた。

   *

残雪と桜のポイントは二カ所あり、NさんがYさんに案内してもらっている「口で説明するのは難しい場所」は諦めて、方向音痴の私でもナビ頼みでたどり着けそうな温泉施設前の桜へ直行する。

おおおぉぉぉ!

霧の中、雪の上に散りばめられたピンクの花びらが艶めかしい。花びらはどんどん増えていくので、後になるほど魅力は増し、撮っても撮ってもキリがない。

我を忘れて夢中で撮るうちにNさん達も合流し、みんな大興奮の撮影大会。時間的にも枚数的にも、もう十分でしょうというぐらいまで撮った後、ようやく隣の温泉施設でお昼を食べることになった。
が、食事中もみんな心の中ではウズウズしていたんだろう。食べ終わって間もなく、Tさんの「ちょっと撮ってきていいですか?」の一言を皮切りに、大撮影会が再開。またしても花びら絨毯の密度が増して、いい感じだ。

   *

そんなこんなで、もう一カ所のポイントも含め、みんなで暗くなるまで撮り続けて別れた後、私は迷った。

「明日の朝、もう一度、ここで桜を撮るか?
スパッと切り替えて、お気に入りのマッサージ温泉まで走るか?」
もう十分過ぎるほど撮ったし、明日はもう、霧が出ないかもしれない。

あいにく、ここの日帰り温泉は閉まっちゃったけど、一日中、寒い中で撮り続けたから、お湯に浸かって温まりたい。
危うくカラダの誘惑に負けそうになったが、「そうだ、私は写真家だった!」と思い直し、もう一日、粘ることにした。煩悩に弱い私にしては賢明な判断である。

   *

翌朝、枝に残った花びらがほとんど散るまで撮り切った後、私はやっと桜を後にした。今年も中子の桜は撮れなかったけど、思いがけない桜との出会いに感謝である。
もちろん、そのあとで念願のマッサージに向かったのは、言うまでもない。

旅ノート

以前は泉質至上主義で秘湯・名湯的な温泉ばかり探していたが、最近は営業時間が長く、食事や休憩室が充実しているスーパー銭湯や公営の日帰り温泉も大歓迎。最新モデルのマッサージ式電気風呂が大好きで、旅先でもチェックしています。

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写真・エッセイ:星野佑佳
風景写真2023年3-4月号

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