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「信じるものは、救われる?」(富山県・称名滝)

Z 7II/NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S/f13AE/1/25秒・-0.7EV/ISO32(拡張低感度)/RAW/Capture NX-D/晴天/ビビッド/三脚/PL/'21年5月31日16時40分/富山県立山町・称名の滝

やっぱり無理かなぁ。予報通りのどんよりした空をにらんで、私はため息をついた。立山山麓の称名滝は、天気さえよければ滝に虹が現れるのだが、太陽の位置さえ分からないほど曇っていてはどうしようもない。称名滝訪問はこれで3回目。私にとっては一筋縄ではいかない……例えるなら、脈ありと思ったのに、蓋を開けたら「お友達で」的な振られ方をするような、いわくつきの絶景地である。

   *

最初の称名滝アタックは盛夏8月、真っ青な空が広がる晴天で、滝には見事な虹が何時間も架かりっぱなしだった。早速、橋の上から撮影開始。落差日本一を誇る称名滝の水飛沫は豪快で、レンズやカメラどころか、人間まるごと、あっという間にびしょ濡れだ。私は飛沫の届かない展望台に上がり、2人分ほどのスペースのポイントを見つけて撮影を続行した。見事な虹を思う存分撮りまくり、満足しての帰宅後、「ハンノキ滝」を撮り逃していたことを知り呆然とする。ハンノキ滝は、雪解けの時期だけ現れる細い滝で、幻の滝ともいわれ、地元通いわくハンノキ滝があってこその称名滝だそうで、私はリベンジを誓った。

2回目は秋の紅葉期。目的は月の虹で、ゲート閉門後の駐車場に居残って挑戦した。同じことを考える同類は他にもいて、駐車場には車内に人がいる気配の車が数台停まっている。心強いような、強敵のような……。

「あの人たち、何時頃、出発するんだろう」

考えながらうとうと寝てしまい、真夜中、車のドアがバタンバタンと開閉する音で飛び起きた。3人組の男女が準備を始めている。相当量の機材で、あれが展望台ポイントに並んだら、私の撮る場所はなくなってしまう。私は身支度もそこそこに坂を登り始めたが、振り返ると数人がすざましい勢いで追い上げてくる。どうやら登山経験豊富な猛者たちらしく、必死の抵抗も虚しく、あっというまに追い抜かれた。
「あと10分、早く起きていたら」
敗北感にさいなまれつつ到着すると、彼らは橋の上で準備していて、展望台はガラ空き。あれれれ? 結論からいうと、この夜の月の角度では橋から見る虹が美しく、展望台を確保する必要はなかったのだ。やがて月明りで虹が出現。肉眼でもうっすら見える夜の虹は想像以上に神秘的で、この情景をタイムラプス動画に仕上げるべく連続撮影を開始。「どんな傑作が出来上がるだろう」と私の口元はゆるみっぱなしだったが、いざ、画像をつなげて動画にしてみると、満月で星の数も少なく、雲もなく、見えっ放しの虹の映像は、「まちがい探し」のクイズみたいに変化がなく、退屈そのものだった。

そして、3度目の正直の今日。緑に覆われた岩肌には、やっとお目にかかれたハンノキ滝と称名滝の2本がV字を刻みながら流れ落ちていた。が、厚い雲が空一面を覆い隠し、太陽が顔を出す隙を与えない。「神様、どうしても今日、撮りたいんです」。祈りつつ、一刻の奇跡を信じて橋上から連続撮影を始める。飛沫対策でレンズを拭くのも忘れない。強く拭いた反動でズーム域がズレないよう慎重に行う。そうこうするうち、光が差したり陰ったり、ちらちらと虹の欠片が出たり消えたりしはじめた。
「これ、これ。これを待ってたのよ」
時々描かれる虹にほくそ笑みながら、そっとそっとレンズを拭いて……。アッ! 手元に神経を集中させすぎたせいだろうか。あろうことか、三脚に足が触れてしまった。1時間以上撮り続け、今が一番いいところだったのに、構図がズレたらタイムラプス動画としては台無しだ。その後、雲ひとつない青空まで回復した天気は、再び崩れだし、虹も姿を消した。閉門ギリギリまで粘ったが、虹らしきものが出たのはあの10分だけだった。

   *

信じるものは、救われる。否、そこそこ救われる。お気に入りの静止画は何枚か撮れたが、動画は完成していない。まだまだ私の思いは遂げられそうもない。

旅ノート

4月からKBS京都の情報番組「きらきん」で、京都の絶景を案内する10分ほどのコーナーに出演予定です。女性アナウンサーと2人で、京都の絶景とグルメや温泉などを楽しむ女子旅ロケを、2カ月ごとにお届けします。ぜひチェックしてみてください。

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写真・エッセイ:星野佑佳
風景写真2022年5-6月号

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