「フィルムカメラに興味はあるけど、選び方や使い方がわからなくてなかなか手が出ない」というお悩みの声をよく聞きます。そんなフィルムカメラ初心者さんのために、連載企画「はじめてのフィルムカメラ」がスタートします。第1回はドキドキの購入編。「晴れ、ときどきレトロ気分」の撮影でフィルムカメラに興味が出てきたという稀ちゃん(@marematsuura)が、お気に入りの1台を探しにカメラショップを訪れます。
- カメラショップにやってきました
- フィルムカメラ選びで重要なチェックポイント
- フジヤカメラさんのこの日のオススメ4台
- レンズ選びもお店の人に相談
- 商品の状態を忘れずに確認
- 「自分好みのフィルムカメラ」見つけた!
- 押さえておきたい!フィルムカメラ選び5つのポイント
カメラショップにやってきました
今回やってきたのは、80年以上続く老舗の「フジヤカメラ店」。スタッフさんがお客さんと楽しそうに写真トークをしていて入りやすい雰囲気です。出迎えてくれた副店長の塩澤さんによると、2~3年前からフィルムカメラやオールドレンズを探しに来る若い方が増えてきているとのこと。フィルムブームを肌で感じているみたいです。
フィルムカメラといっても種類がたくさんあるので、どう選べばいいのか悩んでしまいますね。はじめての1台を選ぶのに何が大事なのか、塩澤さんに聞いてみました。
フィルムカメラ選びで重要なチェックポイント
まずフィルムの種類とカメラの種類を決め、それらを考えた上で「見た目が気に入るか」「実際に使いこなせそうか」をポイントに、気に入ったものがあれば商品の状態に問題がないかをお店の人と一緒に確認していくといいそうです。
1. フィルムの種類とカメラの種類を決める
フィルムの種類
フィルムにはサイズがいくつかあって、それによって使えるカメラも変わってきます。中でも手に入りやすい「35mmフィルム」は、カメラもサイズが小さくて持ち運びしやすいものが多く、はじめての人でも扱いやすいそう。
カメラの種類
35mmフィルム用のカメラの中にも、シャッターを押すだけで気軽に撮れる「コンパクトカメラ」、レンズ交換やきれいなボケを楽しめる「一眼レフカメラ」などいくつかのタイプがあります。一眼レフカメラでは、ピントや露出を自分で合わせたり、ボケ具合の調整など操作自体も楽しめる「マニュアル一眼レフ」が人気です。
2. 見た目が気に入るか
機能も大事ですが、見た目も重要なポイントです。シンプルなもの、クラシカルなもの、カメラ本体のデザインに魅力を感じてフィルムカメラをはじめる人もたくさんいます。せっかくなら、持ち歩きたくなるカメラを選びたいですよね。
何十年も前に作られたカメラはクラシックなデザインが魅力的ですが、その分機能が限られている場合があります。逆に機能が充実しているカメラは、デジタルカメラのデザインに近いものが多かったり…。何を優先するかを考えながら、お店の人に相談していきましょう。
3. 実際に使いこなせそうか
マニュアル一眼レフは、シャッターなどの機構が電池なしでも制御できる「機械式カメラ」と、電池がないと制御できない「電子式カメラ」の2種類にわかれます。
機械式カメラは電池がなくてもシャッターを切れますが、写真の明るさ「露出」は自分で決める必要があります(機械式カメラでも露出計を作動させるための電池は必要です)。一方、電子式カメラはシャッターを切るのに電池が必要ですが、露出の決定をオートでできたり、写真の明暗や濃淡を簡単にコントロールできる「露出補正」という機能がついたカメラもあります。
実際に使いこなせそうかを操作してみながら、自分に合ったタイプを選びましょう。
※「電子式カメラ」は露出をすべてオートで設定できるものや、一部のみオートで設定するものがあります。
初心者の方は露出を判断するときに便利な「露出計」がついてるカメラを選ぶのがオススメです。ファインダーをのぞきこんで露出計がどう動くのかも確認しましょう。露出計がないカメラの場合でも、スマートフォン用の露出計アプリがあるので、うまく活用すれば問題なく使いこなせますよ。


New FM2のファインダーをのぞいたときの様子です。右側に赤く表示されるのが露出計です(機種により異なります)。「○」がちょうどいい明るさ、「―」はそれより暗くて、「+」はそれより明るいという意味なので、撮影するときは「○」になるよう調整します。
フジヤカメラさんのこの日のオススメ4台
選び方のアドバイスを受けて、徐々にどんなカメラがいいか見えてきましたね。ここからさらに絞っていくために、塩澤さんにクラシカルなデザインでタイプ別のオススメ機種4台を教えていただきました。
1. Theクラシカル「F」
60年以上前に発売された、直線的なデザインとかわいいロゴの雰囲気がいいカメラです。状態によっては1万円前後からと手頃な価格も魅力的。露出は自分で調整する機械式カメラです。上の写真の「アイレベル」タイプには露出計がないので注意が必要。その分、電池が不要というメリットがあります。 露出計アプリを活用すれば十分使いこなせます。
2. オート機能がついて安心な「FE」
電子式カメラのFEは「絞り優先(A)」というオート機能が大きな特徴。F値(絞り)に合わせてちょうどいい露出になるようシャッタースピードを自動で設定してくれるので安心ですね! 価格も1万円台が多く、とてもお手頃。露出計もついています。ただ、この機種ではシャッターが電池で動くので電池交換は必要です。
3. マニュアル操作を楽しみたいなら「New FM2」
マニュアル操作にチャレンジしたい方にオススメなのが機械式カメラのNew FM2です。FMシリーズは、電池不要でシャッターが切れるのが大きな特徴。赤いLED表示の露出計には電池が必要ですが、露出計アプリを活用すれば電池が切れても使い続けられます。シャッタースピードがMAX1/4000秒と動く被写体にも強い人気機種です。人気な分、価格は3~4万円台とFEよりも少しお高めです。
4. 操作性抜群の憧れのカメラ「FM-3A」
FM-3Aは、FEシリーズとFMシリーズのいいとこどりです。「絞り優先(A)」のオート機能がありながら、マニュアルの場合は電池がなくてもシャッターが切れるというハイブリッド機構のカメラ。使い勝手が抜群で人気な分、価格も5~6万円台とお高めです。予算に余裕がある方はぜひ検討してみてくださいね。
レンズ選びもお店の人に相談
一眼レフカメラでは、レンズ選びも楽しみの一つです。同じメーカーのものでもレンズとカメラの組み合わせによっては取り付けできないものもあるので、お店の人に相談しながらカメラと一緒に選びましょう。
レンズ選びでは、「何を撮りたいか」「どんなふうに撮りたいか」をイメージすることも大切です。レンズ名の「〇〇mm」は焦点距離のことで、小さいほど広い景色を、大きいほど遠くにあるものをクローズアップして撮影できます。「f/〇〇」はどれだけ明るく撮れるかの目安で、小さいほど明るく撮れてボケ具合も大きくなります。きれいにぼかしたい人は数値が小さいものを選びましょう。
商品の状態を忘れずに確認
目ぼしいカメラやレンズが絞れてきたら、実際に手に取って状態をしっかりチェックすることが大切です。中古品は一つずつ状態が違っていて、それにより価格も変わってきます。価格やランク、気になる点が記載されている商品のラベルをチェックし、お店の人に聞きながら以下の順番で確認していきましょう。
- お店の評価を確認
- 外観を確認
- 動作や内部を確認
- レンズの状態も確認
1. お店の評価を確認
状態をチェックする上で、まずはお店の評価を確認することからはじめましょう。ラベルに「A」「AB」「B」などランクが記載されています。ランクは状態のよしあしで変わり、ランクに応じて価格も変わります。ランクはお店独自の評価なので、その違いについてもお店の人に聞いてみましょう。
フジヤカメラさんを例にすると、下記のようにランクがわかれています。
- A(新品同様):使用頻度の特に低い新品同様の外観をした状態
- AB+(美品):Aランクに準ずるきれいな状態(キズやいたみが少ない)
- AB(良品):ややキズやいたみがあるものの、普通に使用された程度の良品状態
- AB-(並品):使用上の問題はなく、多少キズやいたみの目立つ状態
- B(並品):非常に使いこまれた状態(目立つキズや部分的な不具合がある場合も)
古くなってしまったフィルムカメラやレンズでAやAB+はごくわずかで、ABやAB-から選んでもらうケースが多いそうです。さらに価格重視であればBランクも狙い目。中古品の場合には保証の有無もチェックしておきたいですね。
※フジヤカメラさんでは税込10,800円以上の商品には半年間の保証がついていて、修理不能の場合には返金もしてくれるそうです。
2. 外観を確認
見た目の優先度が高い人にとって外観チェックは重要です。以下を確認していきましょう。特に気になる点はラベルに記載されているので、そのチェックを忘れずに。
- ボディ全体のキズ
- 角のへこみ
- 部分的な変形
使用頻度の高さや使いこみ具合は、シャッターボタンまわりやレンズを取り付けるマウント部分を見るとわかるそうです。キズやへこみなど見た目が悪くても使用上の問題にならないこともあるので、気になったらどんどんお店の人に相談しましょう。ちなみに、中古品では付属品がない場合がほとんど。ついていたらラッキーだと思っておきましょう。
3. 動作や内部を確認
カメラの動作は、ボタンやダイヤルなど外から見てわかるもの以外にも以下を必ずチェックします。
- シャッターが正常に動くか
- フィルムの巻き上げが正常に動くか
- フィルムカウンターや露出計などの動作が問題ないか
また、内部状態のチェックも大事です。
- 経年劣化しやすいファインダー部分は問題ないか(ファインダーの汚れも含めて)
- 修理が必要になりやすいモルト(遮光や緩衝材に使われるパーツ)は問題ないか
フィルムカメラは修理が難しい機種、修理が高額になるケースも多いため、購入前にその点もお店の人に相談しておきましょう。
※フジヤカメラさんの本店ではカビあり品は扱っていませんが、扱っているお店の場合はカビの有無も確認しましょう。
4. レンズの状態も確認
カメラと同じくレンズもそれぞれ状態が違うので、実物を確認しましょう。特にレンズ先端やカメラとの接続部にキズや汚れがないかはしっかりチェック。天井の照明にレンズをかざすとよくわかります。また、カメラへの取り付け・取り外しが問題ないか、距離リングや絞りリングの動作が問題ないかも確認しておきましょう。
「自分好みのフィルムカメラ」見つけた!
いろいろと悩んだ結果、「New FM2」に決めました!決め手はデザインと、電池がなくてもシャッターが切れること。それにせっかくなら露出のマニュアル操作にチャレンジしてみたいからだそうです。買う前に決めていたポイントをクリアできて大満足の様子! レンズは、遠近感が自然で見たままを撮れる基本レンズ「AI Nikkor 50mm f/1.4S」を一緒に購入しました。
写真を撮ることを想像しながらどれがいいかなと選ぶ楽しさでワクワクして、はやく撮ってみたいとはしゃぐと稀ちゃん。「フィルムカメラって、思った通りに撮れないところだったり、思った以上に撮れて驚いたり、偶然性がおもしろさだと思うので、成功も失敗も含めて楽しんでくださいね!」と塩澤さんがエールを送っていました。
はじめてのフィルムカメラを購入した稀ちゃんは、お店を出るとすぐにカメラを取り出して、ファインダー越しの世界に夢中です!
押さえておきたい!フィルムカメラ選び5つのポイント
1.フィルムの種類とカメラの種類を決める:35mmフィルムが入手しやすく、レンズ交換やボケ味を楽しみたいなら一眼レフカメラがオススメ
2.見た目が気に入るか:毎日持ち歩きたくなる、デザインの気に入るカメラを選ぶ
3.実際に使いこなせそうか:露出がマニュアルかオートか、自分に使いこなせそうかチェック
4.レンズ選びもお店の人に相談:カメラに取り付け可能か、どんなふうに撮りたいかで選ぶ
5.商品の状態を忘れずに確認 :お店の評価を確認し、外観、動作、内部に問題がないか見る
お店で取り扱っているカメラやレンズは日々変わっていきます。一期一会を楽しむようにお店巡りをしてみるのも楽しいですし、お店のWEBサイトで在庫状況が確認できる場合は事前にチェックして行くと安心です。
次回は「はじめてのフィルムカメラ」操作編。フィルムのセットの仕方やピント・明るさの調整の仕方など、フィルムカメラの知りたいポイントをしっかり解説します。稀ちゃんが実際に撮影した写真も登場するので、ぜひお楽しみに!
フジヤカメラ店
東京都中野区中野5-61-1
TEL:03-5318-2241
営業時間:10:00~20:30
定休日:年中無休
https://www.fujiya-camera.co.jp/
※掲載商品はすでに取り扱っていない場合がございます。
※各商品の価格は商品状態により異なり、あくまで目安の金額です。
※ランクはお店独自のものです。
※こちらに掲載している情報は2019年7月25日現在のものです。
Photo by:フジモリメグミ(@fujimorimegumi)
Model:松浦稀(@marematsuura)
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