「色」は写真を構成するものの中で、自分らしさを表現できる要素の一つ。
フォトグラファーそれぞれが「自分らしい色」を持つ。
今回は3名のフォトグラファーに「自分らしい青」を表現した写真について伺いました。
tomeiさんの「自分らしい青」
曖昧さが美しい、青が取り巻くものたち
「青が取り巻くものの姿」をテーマに、すりガラス、その中に写る絵、そして絵を掴もうとしている手を撮影しました。
この写真を撮ったのは、夏の雨の日。この日の空は厚い雲に覆われていて、その雲を通した柔らかな光が降り注ぐ空間は、澄んだ空気と青に包まれていました。雨の日は、特有の青みがかった色味が写真の中に出てくるので、その空気感をそのまま切り取ってみました。
すりガラス、手、差し込む光という異なる要素を、レイヤーを重ねるように配置しています。こうすることで、平面でありながら立体感のある写真が撮れたかなと思います。またガラスらしい光の透過を生かすために、逆光で撮影しています。
tomeiさんの思う「自分らしい青」とは?
季節や天候で変わる、その日1日が一期一会で刹那的な瞬間で、特別なもの。
そんな特別な瞬間を、普段透明性をテーマにした作品を手がける私らしく透明感を追求する。
それは青を主軸に置いた写真でも変わりません。
これが「自分らしい青」のあり方なのかなと考えています。
全体の一体感を引き出すレタッチ

色味:彩度を上げて寒色を引き立たせることを意識しました。この写真には、絵の二次元的な要素と人の手の三次元的な要素があります。それらを調和させるために、肌の血色はあえて出さず全体的に青みを出すことで、一枚絵のような一体感を演出しました。
明るさ:コントラストをあげて、陰影を強調させています。被写体は手前のものは暗く、奥に行くほど明るくすることで、写真に奥行きが出るように意識しています。
効果:シャープを適用することで、ぼやけた中にエッジが強調された箇所が生まれるよう調整しました。この効果で雨の静謐な雰囲気を表現しました。
Photographer

tomei
透明に縁のあるものを作り・集める、透明愛好家。透明の持ち味を最大限に注ぎこんだ作品をSNSで発信している。
勝間田 崇登さんの「自分らしい青」
ノスタルジーな海街の夕暮れ
夕暮れ時の、落ち着いた雰囲気の空を切り取りました。
イメージしたのは、どこか懐かしい青。まだ物心がついていなかった頃の記憶は断片的ですが、どこか優しい光に包まれていたり、切なさがあったりした気がします。その頃見ていた空を表現しました。
雲の表情も可愛かったので空だけを切り取っても良かったのですが、撮影した場所が海街だったので、ヨットのシルエットも入れて情景が浮かびやすくなるように撮影しています。
勝間田さんの思う「自分らしい青」とは?
夕暮れ時の空というと、迫力のある鮮やかな色味の空を思い浮かべる方も多いと思います。ですが、その雰囲気は自分らしくないと思っているんです。
空の色味や表情を、どこか懐かしくなるような、淡くて優しい雰囲気にしたことで、自分らしい優しい青に表現できたのではと思います。
フィルムライクな優しい雰囲気のレタッチ
色味:カラーミキサーで強調したい色を調整します。今回はメインで見せたい空の青色を調整しました。
明るさ:全体的に少し明るく。とくにハイライトを上げ、優しく包まれるような淡い雰囲気にします。
効果:明瞭度とかすみの除去をマイナスにすることにより、ふんわりとした温かい、かすみがかかったような雰囲気に。目立たない程度に粒子を少し上げ、フィルムカメラで撮ったようなざらつきも入れました。
Photographer

勝間田 崇登
どこか懐かしくなるような、淡く優しい青を追い続けるフォトグラファー。2020年よりカメラを始め、現在は風景写真の他、アーティストのジャケット撮影、ライブ撮影なども手がける。
葵さんの「自分らしい青」
夕日に照らされる青の少女
夕方の河川敷で、川を背景に少女を撮影しました。
普段は青と光、そして透明感をテーマに写真を撮っているなかで、水を被写体にすることがよくあります。今回も、そんな青をはじめとする自身のテーマを表現しました。
この写真は、夕方の河川敷を撮影場所に選び、沈んでいく太陽の光に少女を透かすようにして撮影をしました。水の青と輪郭のぼやけた髪、そしてそこに差し込む光のにじみがお気に入りです。黄金色と並ぶ澄んだ青色が大好きで、あえて顔の表情がわからないような構図と共に、どこか心地の良い青の世界観を表現しました。
葵さんの思う「自分らしい青」とは?
青と言っても本当にさまざまな青がこの世界にはあって、その中でも私の好きな青は、かなり限られた範囲のなかで広がっている気がしています。
強いこだわりを持つその青は、少しの温かみや淡さ、光との相性、透明性などがキーワードとなって形成されていると考えています。その青は、フィルム写真との相性がとてもいい。フィルムを使うことや独自の光の捉え方、そして自分のテーマである青として何を撮ったかに「自分らしい青」が詰まっているように思います。
葵さんの写真のこだわり
今回の写真に限らず、どのフィルム写真の作品も、色味のレタッチはまったくしていないことがこだわりです。レタッチをしないありのままの色合いが好きだからこそ、写す青は自分なりの基準を持って選んでいます。
Photographer

葵
2001年生まれ。高校1年の冬からフィルムカメラで学校生活を撮り始め、SNSに載せたところプールで撮影した青の写真が話題となり、青と光をテーマに活発に自分の作品を制作しながら広告やPVなど活躍の場を広げる。
昨今では中京大学、甲南女子大学など数々の大学から学園生活にフォーカスした撮影のオファーが続いている。
2020年に写真集「未完成な青」、2021年に「drop」を上梓し京都と東京で、2023年にはアパレルと組んで台湾、原宿で個展を開催。今年1月にはencounter galleryにてアーティストのこはならむさんとの写真展「境界線」を開催した。
Supported by 東京通信社

tomei
透明に縁のあるものを作り・集める、透明愛好家。透明の持ち味を最大限に注ぎこんだ作品を、「透明の博物館」としてSNSで発信している。
勝間田 崇登
どこか懐かしくなるような、淡く優しい青を追い続けるフォトグラファー。2020年よりカメラを始め、現在は風景写真の他、アーティストのジャケット撮影、ライブ撮影なども手がける。
葵
高校1年生でフィルムカメラをはじめ、SNSを中心に写真を発表し、写真展など積極的に活動。「高校生フォトグラファー」として注目を集め、三ツ矢サイダーとのタイアップ企画をはじめとする広告撮影など、幅広く活躍している。