第九十九夜 Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
非球面光学系の新たな設計法への試み
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF

第九十九夜はAi AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IFを取り上げます。
皆さんはお気づきでしょうか。Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF はAi AF Zoom-Nikkor 24-120mm F3.5-5.6D IFとまったく同じレンズ枚数で設計され、しかも大きさ重さまでほぼ同じ。その条件下でなぜF2.8スタートの大口径ズームレンズができたのでしょうか。また、さらに1/2倍マクロ機構までついています。はたしてこのレンズの開発意図はなんなのか。今夜はとても長期間販売し続け、つい最近まで売り続けていた最後のAF-Dズームレンズを深掘りしていきます。
佐藤治夫
開発履歴と設計者
それでは開発履歴を見ていきましょう。このレンズは兄貴分のAi AF Zoom-Nikkor 24-120mm F3.5-5.6D IFと同様、私が設計しました。関連した光学設計報告書は5件提出しています。第1案の設計開始時期は1998年6月でした。第1案の設計完了が同年7月。その後フィルターサイズをもう1段小さい62mmΦまで小型化した案を設計。しかし極限まで小型化を狙ったため1/2マクロ機構が入れられなくなってしまいこの案を断念。第1案をさらにブラッシュアップさせ、量産性も向上させ3案4案をへて第5案に至りました。最終案設計完了は1999年2月。1999年は実用的な初のデジタル一眼レフカメラ、ニコンD1が発売された記念すべき年です。世界が劇的に変化するスタート点でもあった1999年。この繁忙この上ない時期にAi AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IFは産声を上げたのです。試作は1999年5月に発令されスタートします。順調に進んで1999年6月には量産試作が見切り発車します。今でこそもの作りは試作レス(試作をしない)が一般的になりました。しかし20世紀末では、そこまでシミュレーション技術が発達していませんでした。せめて試作期間を短縮し、量産試作時期とクロスオーバーさせながら、精一杯の開発期間短縮を行っていました。ご多分に漏れず、このレンズも試作と量産試作を、まるでカノンかフーガでも奏でるように上手に並走させました。そして2000年には量産開始になり、2000年9月5日に国内発売されました。20世紀末終焉の時、21世紀の扉が開く直前に発売されたズームレンズ。なんと2020年8月31日がこのレンズの販売終了日でした。2020年の8月いっぱいまでホームページにも記載された現行製品だったのです。しかし実際にはもう数年、カメラ量販店で販売されていました。販売期間が20年以上というAF-Dズームニッコールレンズの中では桁外れの御長寿レンズだったのです。
レンズ構成と特徴

それではAi AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IFの断面図(図1)をご覧ください。少々難しいお話をしますがご容赦ください。このレンズは所謂Nikkor「凸先行4群ズームレンズ」というグループに属します。要は「凸群から始まる4つの移動可能なレンズ群から構成されたズームレンズ」であるという意味です。その構成の中でもこのレンズは、それぞれ凸凹凸凸の群により構成された4群ズームレンズです。レンズ図(図1)の矢印に示してある軌道は、広角端から望遠端に向かった移動軌跡を簡易的に示してあります。ご覧の様に第1群は線形移動し、2,3,4群はそれぞれ違った関数に従って非線形移動をします。合焦は第2群を移動させることで、無限遠から至近距離0.5mまで全域合焦します。また35mm~85mmの間は合焦が連続延長して、85mm時においては最大-1/2倍(撮影距離0.21m)までのマクロ撮影が可能なズームレンズでした。
ここで兄貴分のAi AF Zoom-Nikkor 24-120mm F3.5-5.6D IFの断面図と比較してみましょう。

いかがですか。外観上は瓜二つですが、設計法としては大きく異なるところが幾つかあります。第1の改良点は凹の第2群を大口径化に有利な構成に変更した点です。具体的には第2群の中央に位置する凸レンズを凸凹接合に変更することでF2.8の光線収差を良好に補正する一翼としたわけです。もう1つの柱は、特殊な形状の非球面を使用したことです。今回の設計に用いた形状は、当時あまり使われることのなかった特殊な関数で表した非球面形状でした。ある意味、当時としては特殊な形状の非球面を有効利用することで、今までの構成枚数、大きさのまま大口径化を実現できたのです。この非球面形状の謎については、次の項で詳しく説明することに致します。
非球面形状の進化
まず「球面」と「非球面」の違いについて考えてみましょう。数学的な定義では、球面とは「空間内の一定点から等しい距離にある点の軌跡」のことなのですが、読者の皆さんはなんのこと?って思っていますよね。簡単に言えば球の表面などの様に、一定点から等距離の空間にある点の連なりのことなのです。球面を最も簡単に示す関数が曲率半径rですね。光学設計ではこの曲率半径rとレンズ厚または間隔dと屈折率nを使って光線追跡をして幾何収差を算出します。その時発生する所謂ザイデル5収差は、まさに「球面であるからこそ発生する」収差なのです。それでは非球面の定義は何でしょうか。非球面は「曲率半径が光軸からの距離(ラジアル方向)によって変化する回転対称形の光学面」と言われていました。しかし近年では自由曲面などの光軸が存在しない(回転対称ではない)面も非球面と言うようになりました。したがって、誤解を恐れずにザックリと言い換えれば「非球面は球面以外の全ての光学面の総称」と言って良いのだろうと思います。
それでは非球面の一般的な関数式を見ていきましょう。非球面は光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をX(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐定数(コーニック定数)をκ(カッパ)とし、n次の非球面係数をCnとしたとき、

この関数は、初めの2項( C2の項まで)が近軸曲率半径を示す項で、それ以降はべき級数展開した補正項になっています。各社によって円錐定数κの定義に違いがあるものの、永年この非球面式がスタンダードな関数でした。しかし、私は普段からこの関数を多用する際に、極端にサグ量が変化する非球面を表現し難いと言うデメリットを感じていました。そこでまず円錐定数κの有効利用に着目しました。円錐定数κのどこが便利なのかと言えば、なんと言ってもκ1つで物理非球面と言われる放物面や双曲面、楕円面を簡単に示すことが出来ることでしょう。それにこのκは第1項、近軸項に入り込んでいますよね。という事は光軸近くの根元からグニャリと大きく曲げるような非球面形状を与えることが可能だという事なのです。当時は弊社も同業他社においても、加工都合や測定都合から積極的に円錐定数κを利用した設計または製品例が少なかったのです。私はそこに未開の肥沃な大地を見たのです。きっとまだだれも気が付いていない非球面設計方法があるに違いない。そんなわくわくした気持ちで設計に挑みました。しかし、実際はそう簡単には女神さまは微笑んでくれません。そこでもう一手、考えを巡らせました。次に注目したところがベキ級数展開した補正項です。10次以降の12,14,16,18,20次…。次数を増やすことで、非球面は詳細に表現できるようになる。しかしなにかが違う。何かを見落としている…。そこで気が付きました。当時殆ど光学設計では使われていなかった「奇数次項」です。奇数次項を収差設計に活かすこと自体、前例はありました。しかし、さらに発想を飛躍させてκと奇数次項を組み合わせて収差設計に有効利用する。そんな設計方法を考えついたのです。そうですκだけではなくC2,C4,C6の間に3次項C3と5次項C5をさらに追加するのです。その効果の一例が3次項です。この項を使うことで三次収差よりさらに低次の収差をコントロールできると考えたからです。結果、予想は当たりました。奇数次項とκの合わせ技で、球面収差の輪帯が劇的に小さくなり、低画角部分の歪曲も減少しました。その結果、新たな設計方法「奇数次項とκの積極的利用」によって、Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IFは構成枚数や基本構造を変えないままF2.8まで大口径化を達成できたのです。しかし唯一心残りは、望遠端を120mmまで伸ばせなかったことです。せめて105mmまでは頑張りたかったのですが、85mmを越えたあたりから急速に偏芯敏感度が上がり、当時の製造技術、特に鏡筒構造や組み立て加工技術のレベルを軽く飛び越えてしまっていたのです。鏡筒が設計製造できなければ、光学設計は画に描いた餅です。したがって、せめて特許出願し公開して、後世の設計者の手に委ねる道を選んだのです。私はこの非球面設計法を社内でレポートし、後進に伝えました。この設計的考察は今となっては珍しい考えではなく、社の内外を問わずさらに発展し応用されています。数学的に見れば、たかだか関数の使い方を変えたにすぎません。たとえば奇数次項を10次以降の偶数次の高次項を延々と追加すれば近似できます。しかし数学的には完全に同じ値を表現できません。また、全く違う関数を持ってくる方法もあったでしょう。しかし学会、業界が新たに適した関数を考え出すには何年もの研究が必要でした。やっと使い物になるオプティマイズ(自動設計)が出始めた1990年代の非球面設計技術が、21世紀を迎えた現在の光学設計の礎の一つになっていてくれればと思っています。現在では、特にスマートフォンのような超薄型対物レンズの設計においては、周辺部の光線が持つ射出瞳をコントロールする目的で、凸凹が逆転するような非常に極端な形状の非球面を操り、新しい非球面設計方法を生み出しています。現在でも主流は前記した関数系ですが、最近ではフォーブス(Forbes)非球面という、大きなsag量を持った非球面を表現しやすく検査管理に有利な関数で表する例が出てきました。実用的にも確立しつつあるようです。
設計性能と技術的特徴
まずは設計データーを参照しましょう。特徴的なところは球面収差の補正形態です。すべての焦点距離域において球面収差の輪帯を小さくする為に、瞳の近軸から最大径までの球面収差量の変化をどのように少なくできるかがポイントになるのです。ここで良い機会なので、どのように非球面そのものの設計を行ったのか、順を追って説明します。
まずは大口径化の際に最も重要な球面収差の補正について見ていきましょう。通常収差補正は、光学系の凸成分と凹成分の収差が鬩ぎあい「毒を以て毒を制す」の如く、補正します。その時残存収差がゼロにはならないので、通常所謂フルコレクションでまとめようとします。まず、24-85mmの設計を少し修正して確認していきましょう。まず非球面をなくして設計することを試みます。その結果図3のように球面収差の大きな輪帯(膨らみ)を持ったフルコレクション形状の球面収差が残存しました。しかしこれではシャープな結像は見込めません。次に非球面をもとの位置に戻して、κと奇数次項を使わずに再設計します。まず非球面の低次項を使い主に3次収差を減らした結果を図4に示します。その結果高次収差による正の大きなフレアー成分が残存してしまっています。次に高次項を順次入れて偶数次項のみを駆使して設計した結果、球面収差は図5の様になります。球面収差の輪帯は減少しましたが、その弊害で球面収差がウネウネとうねるようになりました。これではコントラストは改善しましたが、まだまだ解像力が足りません。そこで考えた方法「κ+奇数次項の同時導入」を使うと図6の様にうねりが軽減された上に、球面収差の輪帯を激減することができました。このように非球面を上手に設計利用することで枚数増加や複雑なズーム構成を採用することなしに1絞り分の大口径化を達成できたのです。
お分かりいただけましたでしょうか。この補正効果は、非球面の位置を熟考すれば、軸外瞳に関しても同様な効果を生み出すことが可能になります。本レンズの肝はこの非球面設計技術だったのです。




このようにκ+奇数次、偶数次項を駆使したことで、十分に満足できる残存収差量に収めることが出来ました。ほかの収差も同様に非球面形状の設計自由度が増大できたため、十分残存収差を抑えることに成功しました。
実写性能評価
次に遠景実写結果を見ていきましょう。今回はニコンZfを用いて撮影し評価をいたしました。
それでは、各絞り別に特徴を箇条書きに致します。評価については個人的な主観によるものです。参考意見としてご覧ください。
広角端24mm時
F2.8(開放)
中心部分から像高7割までの領域では比較的良好な解像力を有している。周辺は徐々に柔らかく若干フレアーが取り巻くが、わりあいに最後まで解像感は維持している。中心部分から周辺まで色にじみは感じさせない。
F4
一段絞って全域でコントラストが向上。中心部分から7割程度までは解像力も明らかに向上している。周辺部分もフレアーがほぼ消え、光量低下もなくなり好印象。
F5.6
全面に渡りシャープネスが向上した。7割像高までの解像力もさらに高まった印象。最周辺においても、明らかに解像力が向上している。全面良好な画質になった。しかし画面全体が高コントラストにはならず、階調性がとても豊かなので常用にお薦めの絞り値である。
F8~11
F8でさらに高画質化する。特に中心部のコントラストも上昇し、解像力は向上する。しかしF11では若干解像感が低下したように思う。回折の影響が出始めたのかもしれない。
F16~22
画質が全面均一になるが、回折の影響で解像感が落ちる。
中間焦点距離50mm時
F3.5(開放)
中心部分から像高7割までの領域では比較的に解像力は良い。しかし24mm時に比べて若干フレアーが全面に発生。周辺は徐々に柔らかくなり、解像力も徐々に落ちていく。しかし、最周辺でもわりと解像感は残っている印象。色にじみは感じさせない。
F4
1/3段絞っただけでフレアーが急減。コントラストが向上。しかも解像力が最周辺でも高まった。中心部分から最周辺まで1/3段絞って整った。好印象な画質。お薦めの絞り値。
F5.6
全面に渡りシャープネスがさらに向上。最周辺においても明らかに解像力が向上している。全面良好な画質になった。しかし、画面全体が高コントラストにはならず、階調性がとても豊かなので常用にお薦めの絞り値である。
F8~11
F8でさらに高画質化する。特にコントラスト、解像力ともに向上する。しかし高コントラストにはならず、階調性がとても豊かなので常用にお薦めの絞り値である。F11ではコントラストがさらに向上。歯切れの良い画質になるが、若干高コントラストになる傾向が出た。
F16~22
画質が全面均一になるが、解像感は絞るごとに若干だが下がっていくようだ。回折の影響かもしれない。
望遠端85mm時
F4(開放)
中心部分から周辺まで比較的解像力が良好でフレアーも少ない。周辺は徐々に柔らかくなるが、フレアーが発生するタイプのレンズではない。最周辺で若干色にじみがあるが、その程度は軽微。
F5.6
一段絞って全域でシャープネスが向上。中心部分から周辺まで、解像力も明らかに向上している。好印象な画質。
F8~11
F8でさらに高画質化する。コントラスト、解像力ともに向上する。F11ではコントラストがさらに向上。歯切れの良い画質になる。しかし画面全体が高コントラストにはならず、階調性がとても豊かなので常用にお薦めの絞り値である。
F16
画面全体が安定した高画質になるが、若干コントラストが落ちた気がする。
F22~32
画面全体に解像感が落ちた。回折の影響が出ていると思う。
作例
それでは、作例写真で描写特性を確認してみましょう。撮影時に開放絞りに設定しましたが、撮影中意図せず作例7,9,10のみ1/3~1/2段絞り込まれていました。詳しくは文末の撮影データーでご確認ください。毎回の事ですが作例はレンズの素性を判断して頂くためポートレートモード等の、できる限り輪郭強調の少ないモードを使っています。また、あえて特別な補正やシャープネス・輪郭強調の設定は行わないようにしていますが、観察しやすいようにDライティングについては調整し暗部を持ち上げています。被写体は一般ユーザーがこのレンズを使用することを想定し、撮影距離の遠近が網羅できるように心掛けました。なお、今回の作例は京都賀茂御祖神社(下鴨神社)にて撮影して参りました。

作例1
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=24mm時
絞り:F2.8開放
シャッタースピード:1/6400sec
露出補正:-0.3EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:強め
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月

作例2
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=50mm時
絞り:F3.5開放
シャッタースピード:1/320sec
露出補正:-0.3EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ビビッド
撮影日:2025年3月
作例1は広角端24mmで比較的遠景の被写体を選んだ写真です。ピント位置は柱近傍です。画質を確認するため、あえてDライティングを強めにして暗部を持ち上げています。建物の細部を観察すれば、中心部のみではなく周辺部分までそつなく解像していることが分ります。また、逆光時の撮影ですが、邪魔になるゴーストフレアーの発生もありません。
作例2は中間焦点距離50mm時の作例です。遠景から少し近寄った中間距離にて撮影したものです。ピントは手前のぼんぼりに合わせました。ピント面は十分高い解像力を有していることが分かると思います。暗部の描写もトーンの再現性も良好なことが分ります。

作例3
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=85mm時
絞り:F4開放
シャッタースピード:1/2500sec
露出補正:-1EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ビビッド
撮影日:2025年3月

作例4
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=24mm時
絞り:F2.8開放
シャッタースピード:1/3200sec
露出補正:-1/3EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:強め
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月
作例3は望遠端85mmで撮影した作例です。ピント位置は中央の木枠です。比較的平坦で周辺まで判断できる被写体を選びました。作例を見れば、周辺部分まで十分高い解像力を有していることが分ります。
作例4は広角端24mmで近づいて撮影した作例です。中心部分のみならず周辺まで十分な解像力を持っていることが分ります。また、若干歪曲の影響で天板が湾曲して見えます。

作例5
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=40mm時
絞り:F3.3開放
シャッタースピード:1/1600sec
露出補正:-0.3EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月

作例6
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=50mm時
絞り:F3.5開放
シャッタースピード:1/640sec
露出補正:-0.3EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月
作例5は中間焦点距離40mm時の近距離領域で撮影した作例です。ピント位置は3枚の顔お札です。近距離時の解像力もコントラスト再現性も良好です。また、後ボケ味は美しいとまでは言えませんが、所謂二線ボケの発生もなく、十分実用に耐える描写です。
作例6は中間焦点距離50mmの至近一歩手前で撮影した作例です。一面の顔お札がピント面です。平面に近い被写体をあえて選びました。全面で十分な解像力を保ち、コントラスト、発色ともに良好でした。

作例7
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=85mm時
絞り:F4.5
シャッタースピード:1/125sec
露出補正:±0EV補正
ISO:450
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月

作例8
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=85mm時
絞り:F4開放
シャッタースピード:1/125sec
露出補正:-0.3EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月
作例7は望遠端85mmの近距離にて撮影した作例です。紅白のしめ縄がピント位置です。コントラスト、解像力ともに良好なことが分ります。後ボケ味は美しいとまでは言えませんが、所謂二線ボケの発生をギリギリで抑え込んでいます。まずは実用に耐える描写だと思われます。
作例8は望遠端85mmの至近距離にて撮影した作例です。お茶碗と団子の先端がピント位置です。コントラスト、解像力ともに良好なことが分ります。前後のボケ味はなだらかで三次元的描写特性も良好であることが分かると思います。

作例9
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=85mmマクロ時
絞り:F4.5
シャッタースピード:1/6400sec
露出補正:±0EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月

作例10
ニコンZf+FTZ II
Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF
f=85mm、-0.5倍マクロ時
絞り:F4.5
シャッタースピード:1/6400sec
露出補正:±0EV補正
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:リッチポートレート
撮影日:2025年3月
作例9は望遠端85mmのマクロ域にて撮影した作例です。桜のおしべがピント位置です。ピント面は十分な解像力を有していることが分ります。ボケ部分の色にじみは否めませんが、ボケ味はなだらかで三次元的描写特性が良好であることが分かると思います。
作例10も望遠端85mmのマクロ域にて撮影した作例ですが最大倍率-1/2倍近傍で撮影しています。この作例も桜のおしべがピント位置です。ピント面は十分な解像力を有していることが分ります。ボケ部分の色滲みは否めませんが発色自体は良好で、後ボケ味が特になだらかで3次元的描写特性が良好であることが分かると思います。
カモメ非球面レンズとは?
近年業界でよく話題にする俗称「カモメ非球面レンズ」とははたして何か?皆さんも、その名を聞いたことがあるのではないでしょうか。今夜はレンズの新技術について、わかりやすく解説します。まずは図7をご覧ください。




このレンズを真横に倒すと鳥の鴎が羽ばたいている姿に見えませんか?こんなグニャグニャに曲がりくねって凸レンズなのか凹レンズなのか分からない様な非球面レンズのことを「カモメ非球面レンズ」というのです。歴史的に見れば、先に示したように徐々に非球面量の大きな非球面が設計、製造できるようになり、最終的に現在のような極端に変形したレンズ部品に進化したわけです。このような設計ができるようになったのも、ひとえにモールド非球面製造技術の進歩のおかげなのです。新しく奇抜な非球面開発と製造技術開発は、まさに車の両輪。製造技術あってのレンズ設計なのです。それでは、何のためにこんなグニャグニャな非球面が必要なのでしょうか?初めは図8のようなもう少しわかりやすい非球面レンズの設計から進化し始めました。非球面レンズ創成期の非球面は、光軸上(中央)からレンズ周辺に行くにつれて、徐々に凹や凸の屈折力が弱まる程度の非球面形状でした。しかし光学設計的に、もっと非球面を収差補正に活用しようと考えたのです。そして図8のような非球面設計法を考え付くに至ったのです。図8の光線Aと光線Bをご覧ください。24-85mmに用いた非球面設計方法を更に進化させた結果、光線Aでは凹の屈折力を持たせた凹レンズとして働き、光線Bに対しては凸レンズに転じる働きを持たせる事で光学設計的に今までにない収差補正効果を得ました。1枚のレンズで「中心が凹レンズで端に行くと凸レンズになる」光学素子。この非球面設計法を応用すれば、今まで設計できなかった超薄型レンズが設計できるかもしれない。この設計方法を最も必要とした製品がスマートフォン用対物レンズ開発だったのです。光学設計者が切磋琢磨した非球面設計法は、とうとう図9のような屈折力が局所的に極端に変化するような形状にまで至ります。図9の赤の部分と青の部分をよくご覧ください。この小さなエリアでなにが起きているのでしょうか。図10に種明かしがあります。光線aはほとんど屈折力がなく光はそのまま素通りしています。ところが少し画角のついた光線bを見てください。ここは明らかに凹レンズになっています。さらに高画角の光線Cは緩い凸レンズに変化しています。このようにカモメ非球面レンズは、レンズの各部位を細分化し各結像点の最適化を図った末にできた非球面レンズと言えるでしょう。光学設計は歴史的には写真対物レンズから派生した進化系と言えるでしょう。しかし現在では、スマートフォン用レンズの設計製造技術をカメラレンズが逆に応用させてもらう時代になりました。お互いを高め合い切磋琢磨する。光学設計の世界はどんどん広がりを見せ、多種多様に応用されています。まさに必要は発明の源。これからも技術の進化から目を離せません。



