Nikon Imaging | Japan
ニコンイメージング会員の方は、5,000円(税込)以上のご購入で送料当社負担

第九十八夜 Ai Nikkor 24mm F2

無二の描写 MF時代の大口径広角レンズ
Ai Nikkor 24mm F2

今夜は1977年に発売された大口径広角レンズAi Nikkor 24mm F2についてお話ししよう。このレンズは、1971年に相次いで発売されたNikkor Auto 35mm F1.4とNikkor Auto 28mm F2に続く、明るい広角レンズ第3弾にあたるレンズである。ニコン初の24mm F2レンズはどのようにして生まれ、どんな描写をするレンズだろうか?

大下孝一

大口径広角レンズシリーズ

大口径広角レンズNikkor Auto 35mm F1.4とNikkor Auto 28mm F2が発売された1971年当時を振り返ってみたい。この当時、発売されたNikon F用交換レンズの種類は延べ50本を超え、翌年1972年に、Fisheye-Nikkor 6mm F2.8とReflex-Nikkor 2000mm F11が発売されたことで、6mmから2000mmのニッコールレンズラインナップがほぼ完成された時期である。しかし当時の日本光学はラインナップの完成に安閑としていたわけではない。多くのメーカーが一眼レフ・交換レンズの市場に参入し、しのぎを削っていた時代である。この頃から、Nikkor Auto 35mm F1.4とNikkor Auto 28mm F2に搭載されたマルチコーティング技術を他のレンズにも展開すべく、レンズシリーズのマルチコート化と、いわゆるNEWタイプと呼ばれる外観変更を矢継ぎ早に行なっている。これは、他社が1970年代に入ってレンズラインナップのマルチコート化を始めたことをトリガーにしている。また、1970年代に他社から蛍石を使った超望遠レンズや広帯域色消しレンズを発売されたことに呼応するように、1972年発売の Nikkor-H 300mm F2.8(第11夜で佐藤さんが紹介) に初搭載された特殊低分散ガラスを、1975年発売のNikkor 300mm F4.5 ED、Nikkor 600mm F5.6 ED、Nikkor 800mm F8 ED、Nikkor 1200mm F11 EDの4モデルに搭載し、ED超望遠ラインナップの拡充を始めている。このように、常に他社をリードするレンズラインナップを維持し拡張してゆくことを目指していた。そうした背景があって24mm F2の開発がスタートしたのである。

綱嶋輝義さん

このレンズの設計を担当したのは、綱嶋輝義(つなしま てるよし)さんである。私が入社した当時は別の部署におられたが、その後第一光学課配属となり、同じくコンパクトカメラ担当となったことで近しく様々なことを教わった方である。 64夜 などで紹介した森征雄さんもそうだが、既に様々な設計を手がけられた大先輩であるのに、入社したての私にも同じ光学設計者として対等に接するオープンで紳士的な方であった。綱嶋さんが第一光学課に戻ったばかりのこと、その当時はコンパクトカメラのズーム化を数人の設計者で行っており、私はそのカメラのファインダー担当で、ズームファインダーのしくみや光学性能の目安などを、過去の脇本さんや中村さんらの設計資料と残っていた試作品を基に考えていたところだった。レンジファインダーカメラは既に過去のものとなっていたが、当時つくられていた外付けズームファインダーやNikon SPに代わる次世代レンジファインダーカメラの試作機が設計参考として非常に役立ったのである。Nikon S用の外付けズームファインダーは脇本さんの設計、そして次世代レンジファインダーは中村さんの設計で、こちらはなんと実像式ズームファインダーだったのだ。ファインダーなど眼で見る光学系の設計の勘所や性能の目安は、撮影レンズとはかなり異なっている。初めてのコンパクトカメラ用ズームファインダーや実像式ファインダーの設計で、私が路頭に迷うことなく設計が進められたのは、こうした先人たちの設計が残っていたからなのである。残念ながら次世代レンジファインダーカメラは製品化されることはなかったが、ピカイチズーム(TW Zoom QD)やピカイチズーム35-70 QD(TW Zoom 35-70 QD)のほかCOOLPIX 900など、フィルムコンパクトカメラやデジタルコンパクトカメラのファインダーの設計の中に継承されているのである。

話が横道に逸れてしまった。綱嶋さんである。綱嶋さんもこのピカイチズームの設計に携わっていた一人である。設計の初期段階、この新しいズームの設計にどういうアプローチをするのか興味があって伺うと、ズームの各ブロックを分解して、それぞれのブロックで光線の通り方を変えながら収差の出方を確認しているところだった。「ズームレンズを設計するのは初めてなんだよ。それで、まず各群でどういう風に収差が出し引きしているのか見てみようと思って。」と綱嶋さん。既にこの頃には自動設計の技術やコンピューター技術の発展で、複雑なズームレンズであってもある程度自動設計で設計が出来るようになってきた時代であった。しかし綱嶋さんは、自分が納得できる設計を目指して、各群各レンズの光学的役割を明らかにしながら設計を進めていたのであった。この ニッコール千夜一夜物語の第13夜 に綱嶋さんの豪快な逸話が書かれているが、設計者としての綱嶋さんは、光学系というジグソーパズルを、1ピースずつ吟味して最適な位置にはめ込むような、緻密な設計をされる方なのであった。

Ai Nikkor 24mm F2

記録に残ってはいないが綱嶋さんがこのレンズの設計を着手したのは、恐らく1973年頃のことだと思われる。そして設計完了したのは1974年のこと。その夏にすぐさま第1回目の試作を行ったが性能が思わしくなかったため、各レンズの曲率を修正して設計変更を実施。1975年の春に第2回目の試作を行ってようやく試験に合格。翌年1976年1月に量産化の指示が出され、1977年10月にAi Nikkor 24mm F2として発売となるのである。量産指示から発売まで1年半以上の間があいているが、当時はNew NikkorからAi Nikkorのモデルチェンジを行っている最中で、発売のタイミングを調整していたものと想像される。

レンズの構成

図1にAi Nikkor 24mm F2のレンズ断面図を掲げる。

図1 Ai Nikkor 24mm F2 レンズ断面図

このレンズは、凹の前群と凸の後群からなるレトロフォーカスタイプの構成だが、10群11枚という複雑な構成になっているため、もはや前群と後群の境界は判然としない。ここでは便宜的に、第4レンズまでを凹の前群、第5レンズから第11レンズまでを凸の後群としておこう。このレンズ構成の特徴は、 第86夜で紹介したAi Nikkor 24mm F2.8 と比較してみるとわかりやすいだろう。各レンズの曲率半径は随分違っているが、基本的なレンズの並びには共通点が多い。前群レンズの構成は凸凹凹凸と同じで、違っている点は後群の先頭に凹メニスカスの第5レンズが付加され、絞りより後ろの凹レンズが接合レンズになっていることだろう。この第5凹メニスカスレンズと第6凸レンズの間で高次の収差を出し引きすることと、絞りより後ろの接合レンズの効果によって、24mmの大口径広角化を達成したのである。

このレンズの描写の特徴は、何といっても大きなサジタルコマフレアだろう。サジタルコマフレアは、レンズが広角になればなるほど、明るくなればなるほど増加する傾向がある。当時の大口径広角レンズは冒頭に書いた通り、Nikkor Auto 35mm F1.4とNikkor Auto 28mm F2、そしてこのAi Nikkor 24mm F2の3本あった。また大口径標準レンズとしてNikkor Auto 55mm F1.2が発売されていた。どれもサジタルコマフレアが大きいレンズだが、強いて順位をつけるなら、最もサジタルコマフレアが大きいのがAi Nikkor 24mm F2で、次点はNikkor Auto 35mm F1.4、次いでNikkor Auto 55mm F1.2、そして最も小さいのがNikkor Auto 28mm F2である。この順位はそのまま設計の難しさをあらわすものと考えてよいかもしれない。このサジタルコマフレアの影響で、絞り開放では画面周辺にかけてソフトな描写となる。またこの連載でたびたびお話ししているが、このサジタルコマフレアは、絞り込むことで劇的に減少する。絞り値によって描写の違いを楽しむことのできるレンズといえるだろう。

サジタルコマフレアの原因は、アタッチメントサイズ52mmに収まるよう前玉を小さくするために、第2、第3、第5凹メニスカスレンズの曲率半径が小さいことに起因している。この欠点は綱嶋さんも承知していて、その後同スペックの改良案を設計しているが、レンズ枚数が増えていることと、アタッチメントサイズが52mmでなかったことから量産化は見送られている。当時のニコンのアタッチメントサイズへのこだわりが感じられる話である。

歪曲収差はAi Nikkor 24mm F2.8よりやや大きいものの、Nikkor Auto 24mm F2.8と同程度に抑えられておりあまり目立つことはないだろう。また広角レンズながら、画面四隅を除いて非点収差が小さいことは特筆すべきことがらで、ピント位置による像のあばれが少ない素直な描写が期待できる。ただしわずかに像面湾曲が残存しているため、狙っている被写体の位置でピントを合わせることが肝要である。

レンズの描写

それではいつものようにレンズの描写をみていこう。実写はフルサイズミラーレスカメラZ6とZ8にFTZを装着して撮影を行った。いつもの前置きになり恐縮だが、マニュアルフォーカスレンズをFTZに装着する時は実絞り測光での撮影となり、またボディ側で焦点距離や開放F値の情報を登録する必要がある。ボディ内手振れ補正を有効に働かせるため、焦点距離登録を必ず行うようにしたい。Z6では焦点距離とF値のみ登録可能だったが、Z8ではレンズ名称も登録ができるようになりさらに便利になっている。

なお作例はRAWで撮影し倍率色収差補正やビネッティング補正をOFFで現像している。

作例1

Z8+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:開放
シャッタースピード:1/400 sec
ISO:64
NX Studioにて現像

作例2

Z8+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:F8
シャッタースピード:1/50 sec
ISO:64
NX Studioにて現像

作例1と作例2は、紅葉の渓谷を写した遠景写真である。作例1は絞り開放で、作例2は絞りF8に絞って撮影している。絞り開放で撮影した作例1では、画面中央部は細かい葉1枚まで解像しているがややフレアがかっていてコントラストは低い。そして画面中心から周辺にゆくにしたがって、ゆるやかに解像の低下とフレアの増大が見られる。画面四隅ではかなりフレアっぽく甘い描写となっているが、全体としては破綻の無い画像になっている。また、F8に絞り込んだ作例2と比較すると、画面周辺部が暗く落ち込んでいることがわかる。この周辺減光はF4まで絞り込むことでほぼ解消される。

一方F8まで絞り込んだ作例2では画面四隅までフレアが消えすっきりとした描写になっており、作例1でみられた周辺減光も解消されている。また、画面周辺の解像も一段と向上しているが、それでも周辺部でなだらかに解像が低下し、マイルドな描写となっている傾向は作例1と変わらない。これは残存するわずかな像面湾曲収差のために、中心部に比べ画面周辺部は若干手前の被写体にピントが合う状態になっているためである。そのため画面右下の紅葉の葉が比較的しっかりと描写されているのに対して、画面上部の背景の山や画面右上の建物の描写がソフトになっている。この作例1と2では画面中心部の木の葉にピントを合わせたが、遠景や絞り込んだ状態であっても、狙った被写体のところでピントを合わせるように心がけたい。

また画面右上の建物の輪郭や画面左下の河原の石の縁をみると、残存する倍率色収差の影響で緑とマゼンタに色づいているのがわかるだろう。このエッジの色づきはデフォルトのまま倍率色収差補正をONで現像した場合や、撮って出しのJPEG画像では全く目立たない。ちなみにこの倍率色収差は、絞り開放で撮影した作例1でも認められるが、フレアの原因である各色のコマ収差が相殺して目立たなくなっている。

作例3

Z6+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:F4
シャッタースピード:15 sec
ISO:3200
NX Studioにて現像

作例4

Z8+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:F5.6
シャッタースピード:1/25 sec
ISO:450
NX Studioにて現像

作例3は、絞りF4で撮影した夏の天の川の写真である。縦位置で撮影したので、へびつかい座、さそり座、いて座まで構図に収めることができた。 第96夜 の作例では複数コマを合成し強コントラストに処理したが、今回はワンショットの撮影のため、それほどコントラストを上げずに仕上げている。このように24mmあたりの広角レンズから、色々な星座と地上の景色を撮影する星景写真が楽しくなる。この作例3では三脚に据えた固定撮影で15秒露出をしているため、画面中心部の星は若干流れて写っている。この流れを目立たなくするには8~10秒に露出を切り詰める必要があるが、ISO3200、15秒露出でも露出不足だったので致し方ないところである。

このレンズはサジタルコマフレアの大きなレンズである。そのため開放で星空を撮影すると、周辺の明るい星のまわりにサジタルコマフレアが同心状に渦を巻いて写る。F2.8まで絞ると画面の主要部分でフレアが減少するが、依然として画面5割より周辺にサジタルコマフレアが残存する。この作例3のようにF4まで絞り込むことで、画面四隅を除いてほぼ丸い星像となり、ビネッティングもほぼ解消される。ただ、輝星のまわりのフレアがなくなってしまったため、明るい星が目立たず地味な写真になった印象もある。少し絞りを開けてF2.8あたりに設定すると輝星のまわりのフレアも残り、より印象的な写真になったかもしれない。 第27夜 でとりあげたAi Nikkor 35mm F1.4Sもそうだが、半絞り1絞りの変化で印象が大きく変わるレンズのため、自分の好みの描写をする絞りを見つけてほしい。

作例4は、建物の吹き抜けを絞りF5.6に絞り込んで撮影した。この作例では画面周辺の被写体が概ね画面中心より手前にあるため、画面の四隅までシャープでかっちりとした画像となっている。また直線物の多い被写体だが歪曲収差もそれほど目立ってはいない。画面周辺部では倍率色収差が目立っているが、作例2で解説した通り、倍率色収差補正をONにして現像すれば目立つことはない。

作例5

Z6+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:開放
シャッタースピード:1/800 sec
ISO:100
NX Studioにて現像

作例6

Z8+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:開放
シャッタースピード:1/40 sec
ISO:64
NX Studioにて現像

作例5は、壁のアンカー金具の形が目に留まって絞り開放で撮影した。撮影距離は1m弱だろう。ピントは左の受圧板金具の先端に合わせている。開放絞りであるがピントの合っている金具の描写はしっかりしていて、質感もよく伝わってくる。ピントの合っている左の金具から右に視線を移すと、石垣がなだらかに自然な感じでボケている。しかし右の金具の先端の光った部分をみると、縦に光の筋が入っているのがわかると思う。これはサジタルコマフレアが大きいレンズ特有のボケ形状で、さらに遠距離となる右上の植物の光った部分でも発生している。拡大してみるとうっすら光の筋が入って不思議な感じのボケだが、個人的にはそれほど嫌味な感じはしない。気になる場合はF2.8まで絞り込むと解消されるだろう。

作例6では、明かりの灯った室内を絞り開放で撮影してみた。並ぶランプに着目すると、画面中心付近のランプもフレアがかっており、左右のランプに目を移すと徐々にサジタルコマフレアによる大きなリボン型のフレアが目につくが、ランプの金具類に着目するとエッジがシャープに出ており、解像は良好であることがわかる。このように、うまくはまればサジタルコマフレアも悪目立ちすることなく独特の描写となる。また背景の壁や、手前のテーブルもディテールを残した描写となっていて、明るいレンズだがピントに寛容なレンズであることがわかる。

作例7

Z6+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:開放
シャッタースピード:1/1250 sec
ISO:100
NX Studioにて現像

作例8

Z8+FTZ Ai Nikkor 24mm F2
絞り:開放
シャッタースピード:1/500 sec
ISO:64
NX Studioにて現像

作例7は、盛夏の頃に咲きはじめた萩の花を絞り開放で撮影したものだ。F2の大口径レンズのため背景もよくボケており、また被写体である萩の花もうっすらフレアのベールをまとって繊細に描写されている。ところで背景のボケに着目すると放射状に流れているように見えることに気づいただろうか?この傾向は作例5でもボケがたまご型に変形していることで確認できるだろう。これはフォーカスに近距離補正方式を搭載した広角レンズで原理的に発生する現象で、 第84夜のAi Nikkor 35mm F2S などでも解説したが再掲しておこう。近距離補正方式とは、広角のレトロフォーカスタイプのレンズで原理的に生じる近距離での像面湾曲や非点収差を補正するためのものである。この機構により近距離にピントを合わせると近距離の平面被写体について良好な結像性能が得られる。ところがこの近距離撮影のレンズ状態は、近距離の平面結像性能に特化した性能バランスになっており、逆に無限遠の被写体(後ボケ)に対しては、像面湾曲や非点収差が発生してしまい、その結果としてボケが歪んで放射状に流れたような描写になってしまうのである。

このボケの歪みは絞り込むことによってある程度解消され、F4まで絞り込めばかなり目立たなくなる。ただ完全に解消されるわけではないので、このレンズの個性として楽しんでいただきたい。

作例8は、絞り開放至近距離で撮影したカエデの紅葉である。この作例では、作例7の背景ボケの変形をふまえて、中央の被写体にハイライトがあたり、周辺部に明るく目立つ遠景の被写体を入れないように配慮し撮影している。そのため絞り開放で撮影しているが背景のボケの流れは目立っていない。絞り開放での周辺光量低下もあいまって、画面中心の紅葉を引き立てている。

唯一無二の描写

このレンズは、1977年10月に発売され、小型で明るい24mmレンズとして好評を博した。そしてその後1981年にAi Nikkor 24mm F2Sにモデルチェンジされ、1986年にF-501が発売されAF一眼レフ時代になっても継続販売されたレンズの1つである。そして2006年1月に生産・販売終了のアナウンスがあるまで29年の長きにわたって販売され続けたレンズであった。前に綱嶋さんの改良設計のお話をしたように、その間設計変更の話がなかったわけではない。1982年にも藤江大二郎さんがこのレンズの改良設計を実施し、1983年にかけて試作が行われている。試作品の評価結果は性能良好と記録されているのだが、残念ながら量産移行は保留となってしまった。想像になってしまうが、当時一眼レフのオートフォーカス開発に注力していたため、既存レンズの改良は白紙となってしまったのだろう。このレンズの課題であった画面周辺の像面湾曲や、サジタルコマフレアを大きく改良したレンズだっただけに、発売されなかったのは個人的に非常に残念である。

24mmレンズは、このニッコール千夜一夜物語でも 第14夜でNikkor-N Auto 24mm F2.8 を、そして 第86夜でAi Nikkor 24mm F2.8 を取り上げているが、このAi Nikkor 24mm F2は、そのいずれとも違う独自の世界観をもったレンズである。特に絞り開放からF2.8までのフレアのベールをまとった柔らかい写りは、普通の広角レンズにはない無二の描写といえるだろう。Ai Nikkor 24mm F2.8の開放からコントラストの高い描写もよいが、このレンズの柔らかな描写もまた魅力的である。では、星の写真のようなシャープな描写を望む人にとっては、どうせ絞り込んで撮影するのでF2の明るさは無駄なのだろうか?私はそうとは思わない。 第86夜 の作例解説でお話した通り、Ai Nikkor 24mm F2.8ではサジタルコマフレアの解消にF5.6まで絞り込む必要があるのに対して、このAi Nikkor 24mm F2では作例3の通り、F4でほぼ解消される。やはり絞り1段分の明るさのアドバンテージがあるのである。少し気難しいところはあるが、うまくはまれば素晴らしい描写をする、柔らかい描写に癒されるレンズである。