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<ニコンサロン>
村越 としや
Unfolding Landscape

<ニコンサロン> 村越 としや Unfolding Landscape

会期

2026年7月7日(火)~2026年7月20日(月) 日曜休館

10:30~18:30(最終日は15:00まで)

開催内容

2011年3月、震災と津波による原発事故によって、放射性物質が各地に拡散しました。この出来事は、私たちが五感では知覚できない物質が確かに存在しているという事実を突きつけました。 特殊な装置を使わなければ気づけず、それが身近に潜んでいるかもしれないということは、私たちが日常でどれほど多くの物事を見過ごし、知覚し損ねているかを問い直す、新たな視点をもたらしました。

「見る」という行為は、写真を術とする私にとって最も重要な要素の一つです。震災以前から見続けてきた故郷・福島の風景は、あの未曾有の出来事を経て、何が変わり、何が変わらなかったのか。 それを考えるためには、科学的な数値データやメディアが語る物語といった、あらゆる先入観に惑わされず、ただ目の前の風景を凝視し、それらが語りかけてくるものに耳を澄ます必要がありました。 私たちは何を『見ようとし』、何を『見ようとしない』のか。その問いの狭間で今も撮影を続けています。たとえ明確な答えが見つからなくても、この問いを手放さずにいること自体が、写真を撮る動機になっています。

震災直後、福島を含む被災地には多くの人が訪れ、膨大な写真や映像が記録されメディアに溢れました。 それらを目にする度に、鑑賞者の感情を特定の方向へ導こうとする作為や意図を感じ、「現実」があたかも一つの「物語」に回収されていくような違和感を覚えました。 福島で生まれ育ち、以前からこの土地を見つめ、撮り続けてきた者として、避難区域や放射性物質が飛散したため人の立ち入りが制限された場所で目にした光景の数々は、 今まで通りに写真を撮り続けてもいいのか、もしこの先も撮り続けるのであれば、その意思や態度を示す必要性を強く意識させました。 それは同時に、この土地で写真を撮るという行為そのものの意味と覚悟を根本から問い直す痛みを伴う気づきの始まりでした。

私にとって写真とは、「自己表現」という言葉で片付けられるものではありません。 それは「今、これを見ている」という、誰にも奪うことのできない純粋な経験の事実に立ち返ること。そして私の思考や記憶とその事実が織りなす、凝縮された知覚の結晶、あるいは刻印です。 それは、見えているものをより深く観察し、私の意識に立ち現れる世界の意味を知覚しようとする思考の軌跡。そして、私自身との果てしない対話の痕跡そのものなのです。

現在も福島が抱える問題の数々は、一個人の時間軸を遥かに超えています、その結末を私自身が生きて見届けることは出来ないかもしれません。 しかしこの地で生まれ育ち、写真という術を選び続ける者として、時間と光の断片が焼き付けられた一枚一枚が、忘却に抗うための楔になることを信じています。 未来へ、そして鑑賞者一人ひとりへ、静かな問いを投げかけ続けるため、私はこの先も写真を撮り続けるのです。

(村越 としや)

プロフィール

村越 としや (むらこし としや)

1980
福島県須賀川市出身

2009
東京・清澄白河に自主ギャラリー「TAP」を設立

2011
日本写真協会賞新人賞を受賞

2015
さがみはら写真新人奨励賞を受賞