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小学3年生の終わり頃、私は茨城県牛久市に越してきた。父が念願のマイホームを手に入れたからである。マイホームを手に入れたばかりの父は、ほどなく転勤で単身赴任となり、それが退職するまで続いた。だから、父は退職後にようやくマイホームでの生活を始めるのである。しかし、その生活も病魔により、あっという間に終わってしまう。当時は、そこの団地に住むと自治会員名簿が配布されて、住んでいる人の家族構成や生年月日、勤め先までわかった。読むとわかることがある。ほとんどの「お父さん」たちが、東京に働きに出ているのである。そうか、この町はその集合体なのだ。ベッドタウンとして作られた町。あの時、ここの団地に住む人で、ここの土地にルーツのある人は、あまりいなかったのかもしれない。ここで団塊ジュニア世代として自分は育った。すでにこの町に父も母もいない。けれど、私はここを自分の故郷だと思っている。私はこの町が大好きである。
（久保木 英紀）
1974年千葉県生まれ
高校時代は美術部に所属。1994年、日本写真芸術専門学校卒業。その後、アルバイトを転々としながら写真活動を続けるが、20代後半になり就職・結婚したのを機に、一切の写真活動から遠ざかる。以後、写真には意図して目を向けないでいたが、我が子の成長を見ているうちに、中途半端な自分をどうにかしたいと思い始める。10年前から写真活動を再開。現在、菊池東太写真塾在籍。
