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「disguise」は、わたしが投げ出された現実と、風景にまつわる作品である。スイスは第二次世界大戦中、「Réduit」と呼ばれる軍事政策を1940年から44年にかけて行った。当時グイザン将軍は、スイス国内の神話において重要な場所であるRütliにおいて、兵隊に対して軍事政策を伝えるために、1940年7月25日に「Rütlirapport」を発表した。「Réduit」によって大量に作られた陣地壕とトーチカは、アルプスの山に溶け込むようなカモフラージュによって隠されたのだった。カモフラージュには、神話と政治が近づいた時間と人間の矛盾が、今も染みついている。
「Réduit」によって作られた風景は、過去をとどめているだけでなく、現在も続く、ウィーン会議において生まれたスイスの永世中立国という目に見えない政治的立場と、国境を共有している隣国の思考さえもが表象した姿であると私は思う。
(宮田恵理子)
1993年 千葉県生まれ。
東京芸術大学美術学部先端芸術表現学科卒業後、 Zurich University of the ArtsにおいてMaster Fine Artを修了。第46回江副記念リクルート財団奨学金生。チューリッヒに留学中、デリーの Shiv Nadar UniversityとCity University of Hong Kongにおいて行われた研修に参加。写真シリーズ「disguise」がIMA next OTHER HISTORIES においてSimon Baker氏によりグランプリを受賞。2022年岡原功祐氏主催のPITCH GRANTにて、同作品がその場にいた来場者の投票で、グランプリを受賞。2020年イメージフォーラム東京にて映像エッセイ「Aside」上映。