私と写真、自分らしい楽しみ方 - MAYU「写真の魅力は、日常の中にある見過ごされそうな瞬間をすくい取れること」

ふと目に留まった写真。
あの人の写真に、なぜ心が動かされるのでしょうか?

この企画では、日々カメラで写真撮影を楽しむ方をピックアップし、「写真を始めた理由」「これまでの作品」「愛用カメラ」「写真を撮り続ける理由」などを教えていただきます。

今回は、透明感あふれる幻想的な“青”の世界観を作りだすMAYUさん(@______mayumayu)です 。

 

Z6、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

はじめまして、 写真家のMAYUです。

青を基調に、日常の中にひっそりと潜む煌めきや言葉にならない儚さを写真に閉じ込め、透明感あふれる幻想的な世界感を表現しています。

テーマは、「ありふれた日常に優しさを」。
忘れかけていた“ときめき”や、今にも消えてしまいそうな“優しい瞬間”が、見る人の心にそっと寄り添うような作品を目指しています。

 

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

カメラとの出会い、そして“青”の世界へ

見返した日常の記録が、心をそっと支えていた

 

写真を撮り始めた頃は、空や季節のお花、日々の思い出を日記のように記録していました。
ある時ふと見返すと、写真に収められた当たり前のように過ぎていった日常の記録が、そっと私の心を支えてくれていることに気づき、「今この瞬間を残すこと」の大切さを実感するようになったんです。


そこから少しずつ、光や色に感情を重ねて表現することに惹かれるようになりました。青や透明感のあるトーンで想いを写し出す今のスタイルも、きっとその延長にあるのだと思います。

 

忘れられない、1枚の「青」の写真に惹き込まれて

Z6、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

今のように青を基調とした写真を撮り始めたきっかけは、X(旧Twitter)で偶然目にした、「青」が印象的な1枚の写真でした。

まだ写真を撮ったことのなかった私も、その青い世界に心を奪われたのを、今でもよく覚えています。きっとあの時、「青」という色に惹き込まれたのだと思います。

私にとって「青」は、「儚さ」や「静けさ」といった言葉にならない感情や、心にそっと残る余白のようなものを写しとってくれる色だと感じます。

 

儚い「青」の世界を作り出すためのインスピレーション

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

写真のインスピレーションは、映画やイラストから受けることもあれば、音楽を聴いている時に、歌詞やメロディに情景を重ねてイメージが浮かぶこともあります。そうして生まれた情景が、自分の中にある感情とリンクして、自然と作品へとつながっていく感覚です。

 

Z6、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

季節のお花やアイテムからインスピレーションを受けることもあります。例えば、このラムネとシャボン玉という組み合わせは、どちらも“はじける”という共通点から生まれたものです。

アイディアが湧くのは、通勤中や眠る前などの、ふとした日常のすきま時間。思い浮かんだ情景や言葉は、忘れないうちにiPhoneのメモに書き留めています。そこからイメージを膨らませ、準備をしてから撮影に臨むことが多いです。

写真に“私らしい青”を宿すためにしていること

「心がふっと動いた瞬間」を大切に、シャッターを切る

Z6、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

作品撮り以外の撮影では、その場所で感じたときめきや、「心がふっと動いた瞬間」を大切にしています。
風景そのものというより、「こう見えていたら、このときめきがもっと伝わるかも」と想像しながら、理想の景色を思い描いてシャッターを切っています。

また、色や光の重なりに耳をすませるような気持ちで、その時感じた空気や感情が写真を通して伝わるように撮影しています。

 

青の世界をつくる、フィルターの魔法

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

幻想的な青い世界観を表現するために、フィルターも大切な要素のひとつです。
使用しているのは、Kenko ノスタルトーン・ブルー、Kenko ブラックミスト No.1、クロスフィルターの3種類。

Kenko ノスタルトーン・ブルーは、青を印象的に引き立てるだけでなく、影にもほんのり青が乗ることで、淡くて儚い幻想的な雰囲気を演出してくれます。

Kenko ブラックミスト No.1は、光をふんわり柔らかくしてくれるので、優しい空気感や透明感を出したい時にぴったり。

クロスフィルターは、光のきらめきを強調して、日常の中にある小さな瞬間をより印象的に見せてくれるのが魅力です。

 

レタッチは、“心の風景”に近づくための欠かせないプロセス

 

私にとってレタッチとはただの仕上げではなく、自分が見た“心の風景”に近づけていく大切なプロセスで、表現の大きな部分を担っています。たとえ、なんとなく撮った写真でも、レタッチの中で感情と重なって、花が咲くように仕上がることもあります。

なかでも大切にしているのは、青や白をベースにした透明感と、光の柔らかさ。陰影にほんのり青を重ねることもこだわりの一つです。
具体的には、Lightroomのカラーグレーディング機能を使い、シャドウに青や水色を、ミッドトーンには緑や水色を加えることで、陰影にほんのり青を重ねています。
また、全体にもわずかに青を加えることで、全体が引き締まり、統一感のある世界観になるように調整しています。

その他にも、下記のような点にこだわってレタッチを行っています。

 

・基本的な補正:柔らかく印象的な光を表現するために、ハイライトを抑え、シャドウを持ち上げています。

・トーンカーブ:コントラストをゆるやかに整えることで、写真全体に儚さや淡さを感じさせるトーンを意識しています。ホワイトバランスは寒色寄りに調整し、静けさや透明感が際立つようにしています。

・色味:青は、HSL(色相・彩度・輝度)で、アクアやブルーの色相や輝度を微調整し、透けるような質感を目指しています。白は、HSLでオレンジや黄色を抑え、カラーグレーディングではハイライトにごくわずかに黄色を加えることがあります。自然光には黄色やオレンジが含まれているため、光が自然に見えるようにするための工夫です。

 

心に残る「青」の1枚

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

この写真は、夕暮れ時に海辺の砂丘で撮影した1枚です。空が少しずつ藍色に染まり、雲の表情も刻々と変化していく時間帯でした。

特に印象に残っているのは、壮大に広がる空にわずかに残る夕日のオレンジです。その光が一日の終わりをそっと告げるようで、とても儚く、そして美しく感じられました。

丘の上に立つモデルさんが、その場を漂っていた風に包まれる一瞬を捉えられたように思います。また、視線の先に広がる「丘の向こう」を想像させるような構図も、この写真を気に入っている理由の一つです。

Instagramでの投稿のこだわり


写真1枚では伝えきれない空気感を、コラージュにして紡ぐ

1枚の写真だけでは伝えきれない空気感や余韻を残したくて、instagramではコラージュした写真の投稿をしています。複数の写真を組み合わせることでひとつの“物語”が生まれ、そこに言葉を添えることで、自分の想いや感情がより明確に伝わると感じています。

 

 

写真を組む時は、まず軸となる1枚を決め、そこに呼応するような色味や景色の写真を選びます。引きとアップの写真を組み合わせて視点にメリハリをつけたり、季節や時間帯などの“共通点”を意識したりしながら、写真同士のつながりを大切にしています。

この写真の場合は、見上げた空の雲の表情や、足元近くに揺れていたススキの姿を組み合わせることで、1枚では伝えきれない「その場の情景」がより立体的に伝わるように意識しました。



写真に添えられた言葉に込めた想い

 

コラージュした写真には、言葉も添えています。
撮影の時に感じた空気や私自身が感じた気持ちを、写真を見る人の心にそっと届けられたら──そんな思いから、写真に言葉を添えるようになりました。
写真には語りすぎない“余白”があり、そこに言葉を添えることで、見る人の中に静かな“余韻”が生まれると感じています。

言葉が思い浮かぶのは、シャッターを切る瞬間よりも、むしろ後から写真を見返している時が多いです。写真を見ながら、心に残った感情をなぞるようにしていると、自然と短いフレーズが浮かんできます。

青の世界を写す、愛用のカメラとレンズ

透明感を繊細に描く、愛用カメラ Z6III

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

現在愛用しているのは、Z6Ⅲです。動画制作にも力を入れるようになり、最近新たに迎えました。透明感のある光や色味を繊細に描いてくれるため、その場のリアルな空気感をファインダー越しにダイレクトに感じられます。

最初のカメラは、大学の卒業祝いで両親からプレゼントしてもらったD5600。夕日や季節の花、街の風景などを撮ることから始まり、次第に人を撮る楽しさに気づき、ポートレートに惹かれていきました。

その後、Z6を手にしてからは、青を基調にした独自の世界観でポートレートや物撮りに取り組み、表現の幅を広げていきました。

愛用のレンズはNIKKOR Z 40mm f/2(SE) 

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

レンズは、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)を愛用しています。こちらは、街中を歩きながら一瞬を逃したくない時によく使います。街角の風景やふと咲いている花など、日常の中にある小さなきらめきを切り取るのにぴったりの一本です。

お気に入りのポイントは、「40mm」という焦点距離で遠すぎず近すぎず、自分の視点にちょうどよくフィットし、さまざまなシーンで活躍してくれます。

私が写真を取り続ける理由

Z6、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

私にとって写真の魅力とは、日常の中にある見過ごされそうな瞬間をすくい取れること。
何気ない風景や光のゆらぎも、感情と重なることでかけがえのない1枚になる写真は、言葉にならなかった気持ちをそっと写し出してくれるような存在です。


写真を撮り続けるのは、日常の中で感じた“ささやかなときめき”を、自分の視点で形にして届けたいという思いがあるから。その1枚が誰かの心に触れたり、そっと何かを届けたり、寄り添うような存在になれたなら、それはとても大きな喜びです。その小さな積み重ねが、「また撮りたい」と思える原動力になっています。

 

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2


最近は、季節や時間のうつろいにふと漂う、儚さや人の気配を感じる情景に惹かれています。例えば、夜明け前の静けさや咲き終わった花。そうした瞬間や空気を、自分なりの光と色で表現していきたいです。

Photographer's Note

本文では触れられなかったお気に入りの写真を、最後にご紹介します。撮影は2025年5月下旬から6月上旬に撮影したものです。

Z6III、 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8

 

こちらは、今回お借りしたNIKKOR Z MC 50mm f/2.8で撮影したお気に入りの1枚です。仕事帰りにふと見つけた紫陽花を撮影した1枚です。花びらについた水滴がとてもきれいで、思わず足を止めてシャッターを切りました。

マイクロレンズを使ったことで、水滴を写し出すことができ、自然の繊細な美しさを主役として捉えることができました。普段何気なく見ている風景の中にある、別の世界を覗き込むような視点で撮影できたのが印象的でした。

 

Z6III、 NIKKOR 40mm f/2

 

こちらは、曇り空の海辺で撮影したポートレート写真です。晴れた日とは違う、どこか幻想的で夢の中のような雰囲気を表現しました。柔らかい光に包まれた曇り空の空気感に人物が溶け込むようなイメージで撮影し、透け感のある布を重ねることで、風の動きを感じられるようにしました。

 

Z6III、 NIKKOR Z 40mm f/2

 

室内の自然光がきれいに入る窓際で撮影した1枚です。光と小物の組み合わせで、透明感を残しつつ静けさのある世界観を表現しました。
紫陽花の色や質感が引き立つよう、光の入り方を意識しました。紫陽花のそばにはビー玉を添え、雫や静けさのイメージを重ねました。さらに、小さな葉っぱも加えることで、画にさりげないアクセントを添えました。

 

Z6III、 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8

 

雨の日、車の中からふと外を眺めた瞬間に撮影した1枚です。窓をつたう雫が重なり合ってできた線がとてもきれいで、思わずシャッターを切りました。
雫の“流れ”を感じられるように、構図では余白を意識しています。雫に小さく写り込んだ街並みも、さりげないアクセントになりました。

 

Model : saho、mio、kanamin

Supported by 東京通信社

 

Z6III

Z6III

製品ページ ニコンダイレクト
20190523173955

Z 6

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NIKKOR Z 40mm f/2

NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

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NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

NIKKOR Z MC 50mm f/2.8

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MAYU

MAYU

2019年に写真アカウントとしてSNSを開設。日常の中にある、儚さやきらめきをすくい取るような表現を大切にしている。青を基調とした透明感のある幻想的な世界観が特徴。SNSはInstagramを中心に活動中。