風景を鮮やかに彩る花々は、私たちに季節の訪れを告げ、癒やしを与えてくれます。この企画では、春夏秋冬の全4回にわたって、フォトグラファーの小春ハルカさん(@86ca86)に季節の花の撮り方を紹介していただきます。
第4回は「夏の花」です。フルサイズミラーレスカメラ「Zf」で、夏の花を撮影していただきました。
記事の終わりに、スマホ用壁紙プレゼントのお知らせもありますので、ぜひ最後までご覧ください。
こんにちは、小春ハルカです。私は普段、身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影しています。
特に好きな被写体である「季節の花」は、四季の美しさを実感できます。前回は春の花を紹介しましたが、季節は巡り暑い夏がやってきました。
今回は夏にオススメしたい7種類の花と、魅力的に撮影するポイントを紹介します。
夏に撮りたい花5選と撮影のポイント
夏はカラフルで個性的な花が多く咲き、青空によく映えます。ここでは6~8月に咲く夏の花で、ぜひとも撮影したいものを5つピックアップしました。
【ヒマワリ】空へと伸びる太陽のような花
夏といえばヒマワリ! 見ているだけで元気が出てきますよね。人の背より高いものもあり、たくさん咲いていると迫力があります。
- 時期:7~9月(6月から咲く場所もあります)
※地域や気象条件、種類によっても異なります。
レンズ選びのポイント
引きは24~40mm程度、寄りは70~100mm以上で、少し暗い時間を狙う際はF2.8以下にできると安心です。
青空に映える大輪を写す
ヒマワリの黄色は青空によく映えます。ヒマワリはたくさん咲いていることが多いですが、その中で「他より背丈がある」「隙間から顔をのぞかせている」花を選ぶのがポイントです。
また、背景を先に決めてから、バランスを見て主役を決めることがあります。
例えば上の写真では、雲が多い状況下で青空の見える位置とヒマワリのバランスを意識しました。
大きな入道雲を背景にする際、引いて画角両端までヒマワリで埋まるようにすると夏の景色のスケール感を表現できます。
ヒマワリの咲く方向と背景の組み合わせ
ヒマワリは、生育段階は太陽の光を追うように向きが変わり、生育しきると向きが変わらなくなるそうで、特に東向きになることが多いそうです。そのため、東を向いているヒマワリの正面を順光で撮りたい場合は朝方、逆光で撮りたい場合は日が沈む前に撮るようにしています。
上の写真では、大きな入道雲が印象的で、雲をヒマワリが眺めているイメージで撮影しました。
こちらは、一つだけ生育途中で太陽の方向を向いているヒマワリを見つけ主役にしました。小さなヒマワリがかわいらしく、見る人の目を引きます。
ヒマワリの魅力を引き出すのは青空だけじゃない!
青空にとても映えるヒマワリですが、それ以外の空模様でも魅力的な表情を見せてくれます。


この2枚は、東側の空を向いて咲いているヒマワリだったので、その様子を撮るため朝方に撮影しました。ヒマワリが太陽を待ちわびているような姿が印象的です。
右の写真では、中央に鉄塔を入れることでノスタルジックな雰囲気に。奥に咲くヒマワリを入れて遠近感を出すために、カメラをヒマワリの上から見渡すように撮影しました。


左の写真は、雲が多い中、逆光で撮影したため背景が白くなっています。逆光で、かつ前ボケを生かすことで、ふんわりと優しい印象に仕上がりました。
右の写真は、花びらについた朝露がきらりと光っているのが印象的です。朝は予想もしない光景に出会えます。
【熱帯性スイレン】水に浮かぶ華麗な姿
トロピカルな色の花が水に浮かんで咲き、幻想的で夏の暑さを忘れさせてくれます。
- 時期:7~10月
※地域や気象条件、種類によっても異なります。
レンズ選びのポイント
水面の花の近くまで寄れないことが多いため、70mm~望遠域がオススメです。F2.8以下にできると、水面の玉ボケを生かして輝きや立体感を出せます。
水面を生かして撮影


水面に咲く花を美しく見せるには、水のきらめきや花の瑞々しさを表現できる逆光がオススメです。
左の写真のように、風がなく周囲に葉がない状況では、きれいなリフレクションが狙えます。
右の写真では、水中から空気が頻繁に出て波紋ができていました。動きが出て、水面に咲く様子がより伝わります。波紋はあっという間に広がり薄くなっていくので、波紋ができたての瞬間を狙います。小雨の日も波紋ができやすいです。
こちらは、頭だけ出した状態で咲いていて、花手水のように水面に浮かぶ姿に惹かれました。1輪だけ浮かぶ様子をシンプルに伝えるため、真上から撮影し背景の情報量を少なくしています。
形や咲き方に注目する


ぱっと大きく開く花なので、形や咲き方に注目して撮るのも楽しいです。
花びらの広がりは真上から撮影し、画角からはみ出すほど寄ると、美しさをダイナミックに表現できます。
横からのアングルでは、花の目線になり、しべも写るように。葉が多いところを狙い、開放気味で撮ると花が浮き立ち立体感が出ます。
【アジサイ】雨の日に現れる優しい世界
7月まで続く梅雨は気分がどんよりしがちですが、アジサイを見ると癒やされます。雨と相性がいいので、天気が悪い日も外に出たくなりますよね。
- 時期:6~7月(遅咲きの品種は8月以降も咲くものもあります)
※地域や気象条件、種類によっても異なります。
レンズ選びのポイント
アジサイを主役に撮影する場合、広角では情報量が多すぎるので、40mm程度が存在感を出しつつ、背景をほどよく入れることができます。さらに70~120mmの望遠域やマイクロレンズがあると、たくさんのアジサイが密集している様子や、個性ある花の特徴を生かしたアップ撮影まで可能です。
アジサイの種類
たくさんの種類がある中で、ここでは代表的な「ホンアジサイ」と「ガクアジサイ」について紹介します。


左:ホンアジサイ、右:ガクアジサイ
- ホンアジサイ:単にアジサイとも呼ばれます。すべてが装飾花で、手毬のように丸くかわいらしいです。存在感があり、爽やかな色彩が涼しく感じられます。
その形を生かすように、一つを主役にしたり、隙間なく咲く様子や装飾花を画面いっぱいに撮影したり、さまざまな撮影が楽しめます。


- ガクアジサイ:星が散りばめられたような咲き方が美しいです。
どの装飾花を主役にするか迷いますが、先に前ボケにするものを決め、ちょうどいい位置にくる花を主役にするのがポイントです。また、裏側から逆光で透ける様子も撮影できます。
雨の日は幻想的な世界観


雨の日は、花の美しい色が濃く出て、雨粒で瑞々しく、アジサイの魅力が最大限に生きます。また、透明なビニール傘がソフトフィルターに変身。F値を絞り、奥のアジサイにピントを合わせると、傘についた雨粒がほどよくボケて幻想的になります。
花についた雫を撮る際は、マイクロレンズか寄れる中望遠レンズがあると◎。F10~14程度まで絞ると、雫と花にしっかりとピントが合いやすいです。雫撮影は雨上がりもオススメ。光と影で立体感が生まれ、逆光で撮影すると雫が光に反射し、キラキラ輝きます。
くもりの日はしっとりと


くもりではコントラストが低く、アジサイの色や質感をストレートに写せます。また、右のように緑を背景にするとアジサイの色がよく出て、しっとりとしたイメージを表現できます。
晴れの日は宝石のように輝く
晴れている日は、木漏れ日が差しこむアジサイを探してみましょう。光と影の部分で花の色が変わり、オーロラのように美しいです。上の写真は逆光で撮影しました。木漏れ日が玉ボケになり、透き通る花が神秘的です。


空模様によっても花の印象は大きく変わります。左の写真は、アジサイの淡い色に合わせて優しい青空を背景にすることで爽やかなイメージに。右のように夕焼け空を合わせると、幻想的で美しいです。
アジサイに手をかざす


手を副題としてアジサイの近くに添えると、物語性のある写真が撮れます。
左の写真は、小さめなアジサイに惹かれ、手を入れることでサイズ感を強調しました。右の写真では、落ちていた花を手のひらにのせ、落ちても美しい花の姿を主役にし、儚さを表現しています。
※なっている花には触らないようにしましょう。
【バラ】魅惑的な花びらの重なりと色彩
バラは、美しい花びらが何層にも重なり、引きこまれる魅力があります。いい香りで、撮影のときにうっとりしてしまいます。
- 時期:5~11月
※地域や気象条件、種類によっても異なります。
レンズ選びのポイント
バラを主役に撮影する場合、広角すぎると情報量が多くなりすぎてしまうので、40mm程度が存在感を出しつつ、背景もほどよく入れることができます。さらに70~120mmの望遠レンズやマイクロレンズがあると、圧縮効果でバラが密集している様子、大胆に前ボケを入れた写真、個性ある花びらのアップ撮影などが可能です。
背景でバラの魅力を引き出す


花の周囲の葉の緑を背景やボケとして生かすことで、花が際立ちます。特にバラの色の美しさ、しっとりと上品なイメージを出したいときは、くもりの日がオススメです。開いた花はもちろんですが、咲ききる前の花を主役にしても目を引きます。
バラは地面付近から上のほうまで花が咲くので、空や葉など背景の選択肢が広いです。
上の写真のように晴れた日は、空を背景にすると元気さを表現できます。花が上を向くように意識すると、背景の空がさらに生きます。
花の色によるイメージの違い
バラは花の色が多いのも特徴で、それぞれ以下のようなイメージがあり、見せ方にもポイントがあります。
- 赤:情熱的。深い緑の中で映える。
- ピンク:かわいらしい。爽やかな緑を背景にすると際立つ。
- オレンジ:元気なイメージ。青空がよく合う。
- 紫:上品。一つのバラを主役にすると際立つ。
花びらの重なりに注目する
バラの大きな特徴である花びらの重なり。1輪だけや数輪がポツンと咲くバラを主役にすることで、際立ちます。


マイクロレンズがあると、さらに花びらの重なりや造形の美しさに着目できます。
ローズガーデンで物語の世界のように切り取る


バラのシーズンになるとローズガーデンが各地で見られます。道に沿って咲くことが多いので、道を入れることで、物語の世界に飛びこんだようなイメージに。また、道の両サイドに咲くバラを生かすことで、手前や奥のバラをぼかして、奥行きのある写真を撮影できるのも魅力です。
バラのアーチは、下から見上げるように撮ると、空に舞うようなバラを写し出せます。
【ラベンダー】一面を染める淡い紫色の絨毯
一面が紫に染まるラベンダー畑はとても美しく、一帯に広がる上品な香りに癒やされます。
- 時期:5~7月
※地域や気象条件、種類によっても異なります。
レンズ選びのポイント
40~120mm程度の焦点距離がオススメです。花が小さいので、中望遠域で寄り、ボケを生かすことで強調できます。全体を写したいときは、なるべく望遠気味で撮影をすると、隙間なくぎゅっと写せます。
ボケでふんわり咲く空気感を表現
望遠で奥の花にピントを合わせ、手前のボケの範囲を多くすることで、ふんわり咲く様子を表現できます。このとき、逆光で撮影すると前ボケのラベンダーが玉ボケになり、よりふんわり。ラベンダーは縦に長いので、縦構図で上に余白を残すことで、のびのびと育つ様子を表現しました。
ラベンダーを前ボケにする際、風になびくラベンダーをぼかして風も感じられるようにしました。あえてボケの要素を多くすることで、空気感を表現できます。
ラベンダーが際立つ背景選び
背景もポイントで、こちらは斜め上から撮影して緑を背景にしました。紫と緑は補色関係にあるため、メリハリが出てラベンダーの色がよく映えます。
上の写真では青空を背景にして、前ボケを取り入れながら、爽やかなイメージに。地面に近い位置でカメラを構え、バリアングル式画像モニターを使って構図を確認しながら撮影しました。
香りに誘われ集まるハチやチョウを狙う
ラベンダー畑では、ミツバチやチョウがよく飛んでいます。自由に飛び回る虫を撮影する場合、1匹を追いかけてピントを合わせるのは難しいので、蜜を吸ってじっとしている瞬間を狙うか、一つのラベンダーにピントを合わせておきそこに止まった瞬間を狙うのがポイントです。
※ハチに刺されないように十分注意しましょう。
意外と知らない? 身近に咲く夏の花2種
誰もが知る5種の花を紹介しましたが、名前を知らないような夏の花も身近にたくさん咲いています。ここでは、オススメの2種を紹介したいと思います。
【アガパンサス】花火のように咲く爽やかな花
花火を連想させるような花の咲き方が特徴で、爽やかで涼感のあるブルーに癒やされます。公園や植物園の他に、意識してみると身近な場所で咲いているのを目にします。
- 時期:5~7月
※地域や気象条件、種類によっても異なります。
レンズの選択
40~100mm程度カバーできると、花びらの寄りから背景を生かした撮影ができます。できるだけ背景をぼかすと繊細な花を強調できるため、F2.8以下も選択できると◎。
花火をイメージして表現
1輪や数輪程度が咲いているので、一つを主題にじっくり撮影できます。こちらは花の目線になり、パチパチと弾ける線香花火のようなイメージで撮影しました。
高さのある花なので、空を背景にして撮影しやすいです。青空を背景に下から撮影することで打ち上げ花火をイメージ。花の色と青空をリンクさせ、爽やかさも表現しています。
花の形や色の美しさを表現


アガパンサスはラッパのような形が特徴です。順光により花の色や質感がよく伝わり、左のように淡い色合いの背景を選ぶと優しい雰囲気に。右のように暗い背景(大きな木)を選ぶとメリハリが出て花が際立ちます。
雨上がりは花びらが宝石のように輝く


雨上がりの朝、日の角度が低い時間帯は、雫が照らされキラキラと輝きます。逆光で主役となる花にピントを合わせ、前ボケを生かすと宝石のような美しさです。
【ノウゼンカズラ】ビタミンカラーで見るだけで元気が出る
存在感があり、夏を感じるオレンジ色の花。公園や植物園、身近な場所でも咲いています。
- 時期:7~8月
※地域や気象条件、種類によっても異なります。
レンズ選びのポイント
24~40mm程度の広角域で、たくさんの花を写し入れるのがオススメです。
オレンジ×ブルーの夏らしい色合い
オレンジ色が青空によく映えます。順光やサイド光の空の青がきれいに出る位置で、青空がきれいに抜けるアングルを探すのがポイント。ローアングルで撮ると、花が空を見上げているようです。
ノウゼンカズラはたくさん花をつけるので、花つきがよく、咲いているところを画角いっぱいに撮ると、元気な印象に。逆光気味で撮影すると、花びらが透け、立体感が出ます。
ツルを伸ばして大きく成長するものもあるので、背景にしてポートレートを撮影しても素敵だと思います。
Photographer's Note




夏の花は咲き方や色など個性豊かで、エネルギーをもらえるような花から癒やされる花もあります。青空によく合い、雨の日も魅力的な表情を見せるので、ぜひ身近な場所から花撮影を楽しんでいただければと思います。
とても暑いので無理はなさらず、花屋さんで購入した夏の花の室内撮影もオススメです!
花撮影に「Zf」を使ってみて
今回、フルサイズミラーレスカメラ「Zf」で夏の花を撮影しました。私は Z6IIと Zfc(ブラック)を持っていますが、いいとこどりのカメラだと感じました。
シックでレトロなデザイン! 見た目がかわいい上に、フルサイズセンサーはうれしいですよね。持っていても、撮っていても楽しくなるカメラだと感じました。また、モニターはバリアングル式なので、ローポジションでの縦位置撮影がしやすかったです。
この写真ではバリアングル式画像モニターを生かし、低い位置から背景に写る範囲を調整しながら、小さな生きもの目線で撮影できました。
Zfcに比べてボディーが一回り大きく、グリップも付いているため、大きめなレンズをつけてもバランスがとりやすいです。
レンズはNIKKOR Z 40mm f/2(SE)をメインで使いましたが、見た目や撮影バリエーションの幅など、Zf との相性が抜群です。主役を強調した写真から、背景を取り入れた写真まで、寄り引きどちらも撮影しやすい距離感だと感じました。F2でボケがとても滑らかで心地いい描写。レンズが軽く、Zf との組み合わせで、片手でも問題なく撮影できました。


片手で撮影

左:NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、右:NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
NIKKOR Z 24-120mm f/4 SやNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sも使用しましたが、ブラックの Zf によくなじみ、カメラ自体に重量感があるため安定します。Zf はスタイリッシュでありながら、Z マウントレンズを生かせるカメラだと感じました。さらに、AFが速く、手ブレ補正が8段と強力なのでシャッタースピードをある程度下げても手ブレしにくいのも魅力的です。
今回、Zf×40mm~120mmで花を主役にした写真を撮ることが多かったですが、NIKKOR Z 17-28m f/2.8など広角レンズを Zf につけて、花と景色を入れた撮影や映像表現を試してみたいと思いました。
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小春ハルカさんが、今回掲載した写真でスマホ用の壁紙画像を作ってくださいました。NICO STOPのLINE公式アカウントを友達登録してくださった方に、期間限定で無料配布いたします。
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配布期間:2024年7月4日(木)~2024年7月21日(日)
※LINEにて「NICO STOP」と検索しても登録可能です。
小春ハルカ
季節の花や夕焼け空、何気ない田舎の景色など、日々過ごしていく中で身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影。花と風景の淡色世界を表現している。