ふと目に留まった写真。
あの人の写真に、なぜ心が動かされるのでしょうか?
この企画では、日々カメラで写真撮影を楽しむ方をピックアップし、「写真を始めた理由」「これまでの作品」「愛用カメラ」「写真を撮り続ける理由」などを教えていただきます。
今回は、月と建物を組み合わせた幻想的な写真で注目を集める写真家のあゆさん(@auki999 )です。
D850、AF-S NIKKOR 200-400mm f/4G ED VR II
フォトグラファーのあゆです。
主に、風景に人を溶け込ますようなポートレートや、お月様と建物をかけ合わせた写真を撮っています。また「かけがえのない時間」をテーマに、特別な瞬間や景色を追い求めています。


カメラを撮り始めたきっかけと写真に込める想い
趣味で始めたカメラだったけど、表現したい世界観や行動範囲が広がっていった
夕方から夜に差し掛かる空の移り変わりや、自然と人が溶け込む情緒のある景色が好きで、最初は携帯で記録する程度に写真を撮っていました。
趣味として始めたカメラでしたが、好きな写真家の撮り方や現像方法に触れる中で、自分が表現したい世界観が見えてきました。そこから「夕方のこういうシチュエーションを撮りたい」と狙いを持つようにもなり、スナップ撮影中心だった自分の行動範囲を広げるような撮影スタイルに変わっていきました。
写真は言葉を介さずとも共感を生み出し、人々とのつながりを紡ぐことができる
カメラの最大の魅力は、好きなカメラと好きな風景が自分の感情を映し出すように、ひとつの世界観として表現できることです。さらに、言葉を介さずとも共感を生み出し、人々とのつながりを紡ぐことができる点だとも思います。
見た人が感情移入しやすい写真にしたい
撮影では、見た人が感情移入しやすいような作品づくりを心がけています。そのため、人の顔をできる限り映さず、風景と人だけで彩られた雰囲気を大切にしています。
撮影する風景については、他の人が撮影した写真を参考にすることもありますが、それをそのまま模倣するのではなく、服装や小道具、時間帯の光のバランスを事前にイメージしてシンプルに計画を立て撮影するようにしています。
オリジナリティを出すために、さまざまな種類のレンズを持参しシーンごとに使い分けています。目で見た景色から想像できない写真に仕上がるよう、望遠レンズや超広角レンズを使い分けたり、しゃがんで前景のボケを狙ったりした撮影をしています。
お月様と建物が織りなす特別な1枚への挑戦
建物とお月様の組み合わせは、現在ではSNSでよく見かける構図ですが、撮影を始めた頃は、試している人があまりいませんでした。そこに特別さを感じ、当初は何度も失敗を繰り返し、撮影をしていました。
現在チャレンジしているのは、満月、観覧車、飛行機が重なるタイミングを捉えた写真です。お月様と建物をかけ合わせた新しい表現がないか考えている時に、メルヘンな雰囲気を感じられる景色が撮れたらいいなと思い、満月と観覧車の組み合わせを思いつきました。
偶然が生んだ、心に残る1枚
この写真は、12月の満月の日に撮影した1枚です。太陽が沈み、ビーナスベルトが広がる空に満月が昇り始めた時 、羽田空港から飛び立った飛行機が満月を横切る瞬間を捉えました。
はじめは、満月と観覧車だけを組み合わせて撮影しようと思っていたのですが、この日の17時頃、羽田空港の飛行経路が南風運用だったので、「飛行機が月と重なるかも」と期待しながら待ってみることに。その結果、偶然が重なって生まれたこの1枚は、今回の撮影の中でも特に印象深い写真になりました。
※ビーナスベルト:日の出前や日没直後に、太陽と反対側の空にピンク色の帯が見られる現象
特別な瞬間を捉える愛用のカメラとレンズ
現在、愛用しているカメラは、以下の3機種です。
・Nikon Z9:主に風景やポートレートの撮影に使用
・Nikon Z8:映像専用カメラとして使用
・Nikon D850:花火や星空撮影の際のサブ機
カメラを始めたのは約7年前で、その時に初めて購入したのがNikon D7200でした。日常のスナップ撮影から始まりましたが、夕方や夜の風景、水族館での撮影が特に好きで、次第にフルサイズカメラへの憧れが強くなり、Nikon D850を購入しました。
この写真は、Nikon D850で撮影した「角川武蔵ミュージアム」での1枚です。超広角レンズを使い、広がりのある画角で手前の本をぼかしながら、奥行き感を強調しました。また、手前・中間・奥の3つのエリアを意識して構図を作り、遠くに続く線(線遠近法)で目線を写真の奥へと誘導することを狙っています。
この写真は薄暗い室内で撮影したものですが、Nikonのカメラは暗い部分をきれいに補正できる強みがあると思っていて、そのおかげで全体の明るさと細かいディテールを引き出すことができました。
撮影のお供はNikonの大三元レンズ
普段は、NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sの大三元レンズを常備して撮影しています。中でも気に入っているのが、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S。このレンズは、逆光でも美しい色味を保ち、写真に余計な色のにじみ(色収差)が出にくい設計なので、どんな光でもクリアな仕上がりを楽しめます。また、急いで画角を変えたい撮影シーンでも、これ一つで安心して撮影できます。さらに、写りも非常にきれいで、細部までしっかりと描写してくれるので、レタッチにも扱いやすいレンズだと思います。
また、単焦点レンズやポートレート向けのオールドレンズ、バブルボケが出るレンズを使うことも多いです。
幻想的な世界観を作り出すためのフィルターのこだわり
夜の街や建物の光源をキラキラさせたい時は、クロスフィルターを使用することが多いです。また、明暗差の大きい景色や、写真をちょっと派手にしたい時には、Kenkoのブラックミストを使用しています。
私が写真を取り続ける理由
旅行が好きなこと、特別な瞬間に出会える喜び、たくさんの人から「あゆさんの写真が好き」と言ってもらえる嬉しさは、写真を撮り続ける理由だと思います。
しかし、自分が写真を撮り続けるのには、それだけではないと感じています。普段はサウンド・エンジニアとして音楽に携わっているので、毎日のように音楽と向き合い続け、生活の中心に音楽が存在します。そういった日々を続けていると、音楽を聴きたくなくなる瞬間がふと訪れることがあります。そんな時、写真を撮ることが外に出る理由になり、自然と心をリセットする時間になってくれているのだと思います。
一方で、旅の道中で目にする四季の色や香りに触れると、ふと過去の記憶が蘇り、音楽を聴きたくなる瞬間が訪れます。ひとつの風景との出会いで「あの音楽を聴きたい」という気持ちが引き出され、「写真を撮りたい」という意欲にもつながっていく。自分の中で写真と音楽がうまく共存していて、写真=音楽というように結びついているように感じます。
Photo Gallery
本文では触れられなかったお気に入りの写真を、最後にご紹介します。撮影は2024年12月に行ったものです。
銀山温泉の雪景色と街明かりを背景に撮影しました。手すりをぼかして前に入れることで、奥行きや立体感が出るよう工夫しています。また、ランタンの明るい部分が白くなりすぎないよう、少し暗めの設定で撮影しました。本当は降る雪を丸い光のように写したかったのですが、代わりに手すりのボケと、Plenaならではの柔らかい光で写真の雰囲気をまとめています。
モデルさんが鹿に鹿せんべいをあげようとしている、少し緊張感のある瞬間を撮影しました。淀みのない透明感あるホワイトバランスに、背景が自然に柔らかくぼける描写が特徴的な1枚になりました。F値は2.2に設定して、左から差し込む太陽の光を活かし、鹿とモデルさんの顔の両方にピントが合うようにカメラの角度を調整。背景をぼかして被写体を引き立てつつ、全体の色合いが自然に見えるよう仕上げています。このレンズは前景ボケを使用せずとも、その描写力だけで成立してしまうポテンシャルが特に印象的だと感じます。
Model : 白川うみさん、真愛さん、ちさとさん、青蓮さん、小春ハルカさん
Supported by 東京通信社
あゆ
月と建物を組み合わせた幻想的な写真を撮影するフォトグラファー。その作品はSNSやメディアでたびたび話題を集め、注目を浴びている。太陽の光や雲の動きがもたらす繊細な変化を捉え、心に残る一瞬を切り取ることを大切にしている。普段はサウンド・エンジニアとしても活動している。