梅雨の晴れ間に眺める星空は、希少さもあって普段以上に美しく感じられるものです。天の川や夏の大三角、さそり座などを、見たり撮ったりしてみましょう。天文現象では明け方、金星の周りで見られる様々な共演が楽しみです。
星空写真
愛知県北設楽郡設楽町にて
長野県との県境付近にある清水のコヒガンザクラの並木にて、昇ってきた天の川を撮影しました。七夕の主役であること座のベガ「織姫」とわし座のアルタイル「彦星」をそれぞれ従えて、満開の桜並木も添えてにぎやかな星景となりました。
2024年4月13日 2時4分
ニコン Z6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(14mm、ISO5000、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹
2025年7月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(3日)、満月(11日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。
2025年7月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
3日(木)![]() |
上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) 夕方~深夜、月とスピカが接近 |
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4日(金) | 水星が東方最大離角(夕方の西北西の低空に見えます。「今月の星さがし」で解説) 夕方~宵、月とスピカが並ぶ |
5日(土) | このころ、未明~明け方に金星と天王星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
7日(月) | 七夕(「今月の星さがし」で解説) 夕方~翌8日未明、月とアンタレスが接近 |
10日(木) | このころ、未明~明け方に天王星とプレアデス星団が接近(「今月の星さがし」で解説) |
11日(金)![]() |
満月。次の満月は8月9日です |
14日(月) | このころ、未明~明け方に金星とアルデバランが接近(「今月の星さがし」で解説) |
16日(水) | 深夜~翌17日未明、月と土星が並ぶ |
18日(金)![]() |
下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
21日(月) | 未明~明け方、細い月とプレアデス星団が接近 |
22日(火) | 未明~明け方、細い月と金星が並ぶ |
23日(水) | 明け方、細い月と木星が並ぶ |
25日(金)![]() |
新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
26日(土) | 夕方、細い月とレグルスが並ぶ |
27日(日) | 夕方、細い月とレグルスが並ぶ |
31日(木) | 夕方~宵、月とスピカが接近 |
10日ごろまで、夕方の西北西の低空に見えます。
日の入り30分後(東京で19時30分ごろ)の高度は10度前後あり、太陽から大きく離れることがない水星としては見やすい条件です。とはいえ、山や建物などに隠されてしまうこともあるので、地平線近くまで開けた見晴らしの良い場所で観察しましょう。「今月の星さがし」の星図も参考にしてください。
「明けの明星」として、未明から明け方の東の空に見えます。
日の出1時間前(東京で3時35分ごろ)の高度は約20度でやや低めですが、とても明るいので簡単に見つかります。
月の前半は「おうし座」の1等星アルデバランや天王星と接近しています。「今月の星さがし」の星図を参考にして、金星を目印に他の天体も見つけてみましょう。
「しし座」にあり、月末に「おとめ座」に移ります。20時ごろに西の空の低いところに見え、21時30分ごろに沈みます。明るさは約1.5等級です。
1~2等級という明るさは、夜空に見える天体としては明るい部類ですが、最も明るいときにはマイナス3等級近くに達する火星としてはずいぶん暗い状態です。明るさが大きく変化するのは地球との距離が大きく変わるためで、今年1月の地球最接近時と比べると3倍以上も遠ざかっています。天体望遠鏡で見るとサイズもかなり小さくなっています。
控えめな明るさになったとはいえ、肉眼で存在を確認することはじゅうぶん可能なので、ときどきは西の空の赤い火星にも目を向けてみてください。
「ふたご座」にあり、下旬から明け方の東北東の低空に見えます。明るさは約マイナス1.9等級です。
日の出1時間前(東京で3時45分ごろ)の高度が10度前後と低いので、見晴らしの良い場所で探しましょう。やや離れていますが、金星が目印になります。金星と木星は8月中旬に大接近します。低空および明け方の時間帯という条件から、天体望遠鏡での観察には適していません。
23日の明け方、月齢27の細い月と上下に並びます。
「うお座」にあります。22時ごろに昇ってきて、2時ごろに南東の空に見えます。明るさは約0.9等級です。
依然として見やすい時間帯とは言えませんが、少し夜更かしすれば目にできるようになってきました。天体望遠鏡で観察すると環が細い様子がわかります。今シーズンは環の傾きが小さいため環が見づらいのですが、今月は「今年のうちでは一番環の傾きが大きい」タイミングです。
16日の深夜から17日の未明にかけて、月齢21の下弦前の月と接近します。
夕空で水星探しに挑戦してみましょう。明け方の東の空には早くも「おうし座」が昇り始め、その領域内で金星と天王星が接近中、プレアデス星団などとも共演します。
7月7日は七夕。秋のお月見とともに、日本で古くから人々に親しまれている天文行事です。七夕伝説では一年に一度この日だけ、「織り姫星(織女星:しょくじょせい)」と「彦星(牽牛星:けんぎゅうせい)」が川を渡って会うことを許されていますが、伝説に登場する「織り姫星」は「こと座」のベガ、「彦星」は「わし座」のアルタイルという星です。
ベガとアルタイルは「夏の大三角」を構成する星々です。宵のころ東の空に見える3つの明るい星のうち、一番高く一番明るいのがベガ、ベガから右下(南)に離れたところにあるのがアルタイルです。ベガの左下にあるもう一つの星は「はくちょう座」の1等星デネブで、この3つの星で夏の大三角です。3つとも1等星で、街中でも見やすい星々です。
この夏の大三角の中を、北から南へと天の川が流れています。七夕伝説では、織り姫星と彦星は川の反対岸にいることになっていますが、実際の空でもベガとアルタイルの間に天の川が流れているのです。街や月の光がなければ天の川も見えるでしょう。
多くの地域では7月7日は梅雨の真っ最中なので、当夜は晴れていないかもしれませんが、織り姫星と彦星は七夕以外の日にも見えます。晴れた夜には空を見上げて、2つの星や夏の大三角を探してみてください。日付や時刻が変わると3つの星の高さや方角が異なって見えますが、「3つのうち一番明るいのがベガ、ベガから遠く2番目に明るいのがアルタイル、ベガに近く一番暗いのがデネブ」と覚えるとわかりやすいでしょう。
旧暦に基づいた「伝統的七夕」(日付は毎年変わり、今年は8月29日)になれば晴れることが多いので、織り姫星と彦星が見つけやすくなります。両方の七夕を楽しむためにも、まずは1回目、7月7日の夜空に2つの星が見えますように。
太陽系の惑星のなかで最も内側にある水星は、見かけ上いつでも太陽の近くにあります。つまり夜に水星を見ることはできず、太陽が沈んだ直後の西の低空か、太陽が昇る直前の東の低空にしか見えないことになります。
この水星が地球から見て最も太陽から離れるタイミングを「最大離角」と呼び、その前後のころが観察しやすい時期です。今月4日に水星が「東方最大離角」となるので、月初めから10日ごろまでが水星を見るチャンスです。見えるのは「夕方の西(西北西)の低空」ですが、太陽の東に離れているので「東方~」と表現します(明け方の東の低空に見えるときは「西方最大離角」です)。
時間帯は太陽が沈んでから30分~1時間後くらいです。これより早いと空がまだ明るく、遅いと水星が低くなりすぎます。0~1等級と明るいので位置がわかれば肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うと見つけやすくなります。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて探しましょう。また、見やすいといっても低いことにかわりはないので、見晴らしの良い場所で探すことも大切です。
この時季、一番の難関は「低空まですっきり晴れること」かもしれません。数少ないチャンスを逃さず、水星の輝きを見つけてみてください。
4月ごろから夜明け前の東の空に見えている「明けの明星」の金星は、今月も早起きの人々の目を引く存在です。日の出30分前には地平線から約25度の高さまで昇り、見やすくなっています。
そのさらに1時間ほど前、つまり日の出90分前(東京で3時ごろ)は、金星はまだ低い状態ですが、空が暗いので金星がいっそう明るく見えます。さらに、金星の周りにも様々な天体があり、それらを見つける目印にもなってくれます。
金星は「おうし座」の領域を動いていて、牛の肩の位置に広がる星の集団「プレアデス星団(すばる)」と、牛の目の位置に輝く赤い1等星アルデバランの間を通り抜けていきます。アルデバランの周囲には「ヒヤデス星団」という別の星の集団も広がっているので、2つの星団やアルデバランと金星が共演を見せるということになります。眺めるだけでなく撮影もしてみたい光景です。
また、金星やプレアデス星団の近くには天王星もあります。約6等級の明るさで、肉眼で見るのは難しいのですが、双眼鏡を使うと簡単に見つけられます。星図で金星、アルデバランとの位置関係を確認して探してみましょう。なお、天王星は来春までずっとプレアデス星団の近くにあるので、今後も時々双眼鏡を向けてみてください。
10月下旬から11月中旬ごろに誕生日を迎える人の星座として名前が知られている「さそり座」、宵空で見やすいのは7月ごろです。7月中旬の21時ごろ、南の空のやや低いところに見えます。
「さそり座」の目印は、胴体の中心付近に輝く赤っぽい1等星のアンタレスです。「さそり座」の星々はアンタレスを中心にアルファベットのS字形に並んでいて、頭部の2等星ジュバと尾の先に輝く2等星シャウラがS字の両端にあたります。日本ではこのS字形を、釣り針に見立てて「魚釣(うおつり)星」「鯛釣(たいつり)星」などと呼ぶこともあります。
アンタレスやジュバ、シャウラのほかにも明るめの星があり、形が整っているので比較的わかりやすい星座なのですが、本州あたりでは南の地平線からあまり高く昇らないため、建物や街灯、かすみの影響などで意外と見えにくくなります。オーストラリアやニュージーランドなどでは頭の真上近くまで高くなるので、機会があれば天頂に架かる大きなS字を見上げてみましょう。
夜空に見える星々のなかには、寄り添って光っているものがたくさんあります。実際の宇宙空間でも近いペアもあれば、地球から見て偶然同じ方向に見えているだけのペア(距離は全く異なるもの)もありますが、いずれにしても仲良しのイメージです。
「さそり座」にあるペアはそれぞれ、頭部、尾の中ほど、尾の先と適度に離れたところにあり、星座の形をたどるついでに眺めることができます。図の小さい円は満月の見かけサイズと同程度、大きい円は満月の見かけサイズの2倍(直径比)に対応しています。双眼鏡を使うと簡単に2つの星に分離して見えるでしょう。視力と空の条件が良ければ肉眼でも2つに見えるかもしれません。低空までよく晴れた日に観察してみてください。
さそりの頭部から胸部にあたるジュバやアンタレスの付近には、美しい星雲が広がっています。眼視ではわかりませんが、撮影すると色鮮やかな光景を写しとることができ、「カラフルタウン」と呼ばれることがあります。
星雲たちの赤い色はガスが星の光を受けて光っているもの、青やオレンジ色は星の光が塵に反射・散乱されているものです。また、近くに星がないガスや塵の集まりは暗黒星雲として見えます。画像検索などで色や造形を鑑賞しましょう。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は7月中旬の深夜1時ごろの星空です。8月中旬の深夜23時ごろ、9月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
「今月の星座」でご紹介した「さそり座」は南西の地平線に沈みかけています。山や建物に隠れているかもしれません。真夜中になる前に見ておきたいですね。
空の高いところに目を向けると織り姫星ベガと彦星アルタイルが輝いています。街明かりや月明かりがなければ、七夕伝説のとおり二人の間を流れる天の川も見えるでしょう。また、南東の空には土星も光っています。見やすい時間帯とは言えませんが、機会があれば天体望遠鏡で細い環を観察してみましょう。
梅雨の中休みや梅雨明けのときには、驚くほど澄んだ美しい星空を見られることがあります。天気予報とにらめっこしながら、チャンスをうかがってみてください。
星座や惑星、流星群などの天文現象の観察や撮影は、コツを抑えるとただ眺めるよりも広く深く楽しむことができます。
ここでは、天体の探し方からおすすめの撮影機材やテクニックまで、星空を楽しむうえで知っておきたいポイントをご紹介します。
カメラや双眼鏡を持って、美しい夜空に会いにいきましょう!