Vol.3 若手クリエイターが大先輩写真家に学ぶQ&A 「自分なりの解釈を込めた街スナップ」コムロミホ×yuco

Nikonのカメラとレンズをこよなく愛するクリエイターを12回にわたって紹介した連載『Nikon Creators の履歴書』。その連載に登場したクリエイターがこれからますます“履歴書”を充実させ、「撮る」人生を豊かにしていくために、長年Nikonとともに人生を歩んできた写真家たちに、知りたいこと、気になっていたことをリアル対面で聞いてみるというスペシャル対談を実施。大先輩直伝の撮影テクニックやNikon機の使いこなし方から貴重な体験談、写真を続けることの素晴らしさまで、「ヒントと学びが満載のQ&A」を大公開します。第3回は、旅をしながら数多くの街スナップ作品を撮り続けている写真家のコムロミホさんに、フォトグラファー兼トラベルブロガーとして活動中のyucoさんがあれこれ質問!ストリートフォトグラフィーの極意をたっぷりと教えていただきました。

目次

コムロミホ プロフィール

コムロミホ

文化服装学院を卒業後、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まる本屋「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。公益社団法人 日本写真家協会正会員。
愛用カメラ:Nikon Zfc、Nikon Zf、Nikon Z50II、Nikon Z30
愛用レンズ:NIKKOR Z 50mm f/1.8、NIKKOR Z 35mm f/1.8、NIKKOR Z 28mm f /2.8

History with Nikon

2010年
Nikon D7000にAI AF Nikkor 35mm f/2DやAI AF Nikkor 50mm f/1.4Dを組み合わせて国内外をスナップし始める
2012年
料理や静物撮影、ファッション広告の撮影のため、Nikon D800を購入
2013年
日常カメラとして、Nikon 1 S1のカーキ色を購入。所有欲にかられて、Nikon Dfを購入
2014年
中古でNikon 1 J2のオレンジを購入。家族の日常を残すカメラとしてCOOLPIX S02を購入。さらにNikon D800を、Nikon D810に買い替える
2016年
ラスベガスで行われたNikon D5とNikon D500の発表会へ取材に
2017年
Nikon D810を、Nikon D850に買い替える
2018年
発売と同時にNikon Z6を購入。それまで仕事とプライベートとでカメラを使い分けていたが、Nikon Z6から共用し始める
2019年
Nikon Z50のカタログ撮影のためにベトナムへ。その後、同機を購入
2020年
Nikon Z6IIを購入。YouTubeを本格的に始め、動画機としても使用し始める
2021年
Nikon Zfcを購入
2022年
Nikon Z30を購入
2023年
Nikon Zfのカタログ撮影を担当。同機を購入
2024年
Nikon Z50IIを購入

yuco プロフィール

yuco

フォトグラファーとして観光系PRや企業SNSの写真撮影を行っている。SNSではおしゃれな写真の撮り方、加工術、動画編集の方法などを発信しているトラベルブロガー。CP+2023、CP+2024オンライン登壇。
愛用カメラ:Nikon Z5、Nikon Zf
愛用レンズ:NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

Q. 旅先で撮影場所はどうやって決める?

A. 下調べなしで街を歩き回って、テーマを見つける

yuco

コムロ先生とはGENICのイベントで何度かご一緒させていただいて、私がミラーレスカメラを触りたての頃に単焦点レンズの使い方を教えていただきましたし、動画を撮るようになったのも先生のおかげで、今日こうしてお話できるのを楽しみにしてきました。

コムロ

初めてご一緒したのはいつでしたっけ?

yuco

2017年ですね。

コムロ

あのとき海辺で撮影しましたよね。設定の仕方などはレクチャーしましたが、カメラや写真に対しての感覚が鋭いなと思ったのを覚えています。GENICのイベントに参加される皆さんは1教えるとそこから派生して10に広げてくれるので、いろいろ教えるのが面白くて。でもこうして改めて対談というのは緊張しますね。

yuco

はい。すごく緊張していますが、どうぞよろしくお願いいたします!私はトラベルブロガーとしても活動しているので、街スナップをライフワークにしていらっしゃるコムロ先生にお聞きしてみたいことがたくさんあるのですが、まず国内外問わずスナップを撮るときというのは、撮りに行こう!と決めて撮るものなのか、ふらっと歩いているうちに撮りたいものが出てくるものなのか、どういうときに撮っていますか?

コムロ

私は旅先での写真が多いので、旅に行くイコール写真を撮りに行く、なんです。旅に行くときは、写真を撮るスイッチが入っています。だから、ふらっとその場に行って撮るというよりは、目的を持ってその街で撮影することが多いです。

yuco

なるほどです。旅先には目指している被写体があるものですか?それとも、この国で撮ろうといったエリア的なもので決めてらっしゃいますか?

コムロ

ほとんどの場合は、エリアだけを決めています。撮るものは到着してから、その国の印象や雰囲気の中で決めるスタイルです。国や場所によって、やはりイメージがガラリと変わるじゃないですか。その文化の違いが面白いですよね。yucoさんもいろいろなところに行かれていますよね?

yuco

そうですね。でも、何かを撮るためにどこかに行く、ということはあまりないです。

コムロ

どういう風に撮る場所を決めていますか?

yuco

どこか行きたいところがあるとか、何か体験したいことがあるとか。写真を撮る以外に、その場所に行きたいと思う理由があって旅に行くことが多いので、写真を撮りに行くこと自体が目的ということはないんです。まず目当てのものがあって、その場所へ出かける。そっちが先で、でも、もちろんそこでは写真も存分に撮ります。

コムロ

なるほど。そうすると、旅に行くとなったら、そこに何があるのか下調べをたくさんしますか?

yuco

はい。事前にその国やエリアにはどんなスポットがあるのかを毎回InstagramやGoogleマップでリサーチをしています。ここに行ったら、こんな写真を撮りたいなと気になる場所をチェックしています。

コムロ

ある程度、撮るイメージを作って、その場所に出かける感じですね。私は真逆なんです。 行くときには何も調べず、情報を入れずにその街に行くようにしています。先に情報を入れてしまうと、 そのイメージに引っ張られて写真を撮ってしまうような気がするので。例えばリスボンに行くとなったら、リスボンがどういう街なのかはあまり調べない。もちろん空港から市内への行き方とか、そういう交通手段はある程度は調べますが、どこに何があるというのはあまり把握せずに行くようにしています。だから現地に着いたら、まず地図を見ないで、ぐるぐるぐるぐる歩くんですよ。

yuco

えー!地図なしで、ですか?

コムロ

はい。路地を歩いていて、道の分かれ目があったとしたら、どちらが魅力的かなと目で見て選んで、進んでいくんです。そうすると、自分でその街の面白い部分を見つけられるので。地図を見るのは、そろそろカメラの充電がなくなってきたから、1回ホテルに帰ろうかなというときくらいで、それ以外は基本見ない。1日に20、30km歩いて撮影しますが、同じ場所をぐるぐる歩くんです。違う道を20km歩くのではなくて、まさにぐるぐる。というのも、道をこちらから歩くのと、その逆から歩くのでは、街の見え方も写真の印象も変わるので。同じところを何回も歩きます。

yuco

そうなんですね。私とは思考が真逆で、とても新鮮です。

Nikon Z50IIでコムロミホが撮影した写真

撮影機材:Z50II +NIKKOR Z DX 24mm f/1.7
クリエイティブピクチャーコントロール:カーボン(適用度100%)

  • photo:コムロミホ

コムロ

最初は何もテーマを持たずに街へ出かけますが、ぐるぐる歩いて、また翌日出かけて、ぐるぐる歩いてと回を重ねていくと、テーマがだんだん見えてくるんです。実際に歩いてみないと、その街の本質は見えてこないものですし、そのときに出会った人によってもだいぶ印象が変わるとは思います。街を自分なりに解釈していって、それをどんどん写真で表現していくという風にしています。そうすると、組写真にしたときに深みが出てくると思うので。街に深く突っ込んで写真を撮るのは、すごく面白いです。

yuco

今までそうやって写真を撮ったことがなかったので、真似してみたいです。

コムロ

ぜひぜひ。私としてはやはり、写真は1枚の作品として発表するというより、最終的に個展や写真集などで群にして、組にして発表したいという思いがあるので、どう撮ろうかを探る上で、自分の解釈でその街を見ることをとても大切にしています。その街を回りながら、迷子になることも大事だと思います。

yuco

街と向き合うということですね。私はもう完全に地図ありきで旅していました。

コムロ

目的の場所を作ってしまうと、そこまで一直線で進んでしまいますし、それしか目に入らなくなってしまう。目的の場所を作らずに街を歩くと、すべてのものが目に入ってくるようになるので、それが面白さかなと思います。例えば、パリにはもう何度も訪れていますが、地図を持たずに、こちらの路地が面白そうだなと進んでいくと、前回と同じ路地を歩いていることもあるんですよ。そういう嗅覚みたいなものがあるのか、惹かれるところはやはり同じなのも興味深いですね。

Nikon Z50IIでコムロミホが撮影した写真

撮影機材:Z50II +NIKKOR Z DX 24mm f/1.7
クリエイティブピクチャーコントロール:カーボン(適用度100%)

  • photo:コムロミホ

Q. 臨場感のある街スナップを撮る秘訣は?

A. カメラの中で画作りをできるだけ完結する

yuco

コムロ先生にとっての街スナップの楽しさは、そういうところにありますか?不思議と同じ場所に惹かれたり、同じ道でも方向で見え方が変わったり。

コムロ

そうですね、あとは、自分がその街をどう感じていくのかを考えながら撮影していくのが面白いです。私はカメラの中で画作りをできるだけ完結することを大切にしています。というのもやはり、その街の匂いや音、情景や雰囲気を肌で感じられるのは、現地にいるときだけなんですよね。だからモノクロで撮りたいなとか、カラーで撮りたいなとか、画作りはできるだけカメラの中で行うようにしています。現地で何も画作りせずに、日本に帰ってきてからRAW現像すると、あのときのパリの雰囲気はこんな感じだったかなと思い出しながら作業することになるので、そのとき感じた空気感をそのまま反映することが難しいんですよ。そういう意味でも私のカメラ選びにおいて、カメラ自体の表現力の高さはとても大事なポイントです。

yuco

なるほど。先生のモノクロ作品を拝見していて、どういうタイミングでモノクロにすると決めてらっしゃるんだろうというのは前々から気になっていました。

コムロ

被写体ごとに大きく画作りを変えるということは、ほとんどしていないですね。最終的には写真展をする、写真集にまとめるという目的があるので。例えばですけど、写真集のページをめくっていくときに、カラーとモノクロが混在していたり、明るい写真と暗い写真が混在していたりすると、全体がバラバラに見えてしまい、テーマ性が薄くなってしまうから、滞在中はずっと同じ設定で撮影するんです。タイに行って、モノクロと決めたら、もうずっとモノクロ。モノクロの設定にもいろいろな種類がありますが、1つ決めたらずっとそれ、という感じです。

yuco

そうなんですね!そのときの気分で変えることもないということですよね。

コムロ

はい。気分で変えてしまうと、ばらつきが出てしまうので、一定です。ただ、その街の印象を自分の中で掴むまでは、カラーで撮ったり、モノクロで撮ったり、いろいろな設定を試してみて、どれがこの街に合うのかというのをまず探ります。決めてからは、もうずっと固定です。

yuco

なるほど。私はカメラの中で画作りをして撮るということをあまりせずに、家でRAW現像してしまうことが多いです。

コムロ

どちらも正解だと思いますよ。家に帰って自分の好きな現像をするのもいいと思いますし、自分らしいスタイルに合わせて。どちらが正解というのはないですから。ただ画作りがカメラの中で完結できると、そこから可能性が広がるので、構図が変わっていくとは思います。例えば、曇りの日だと被写体の色は出にくいので、木々の緑が肉眼ではちょっとグレーっぽい緑に見えるんですね。でもその場でカメラの中で画作りすることによって、緑の色を綺麗に見せることができますし、こんなに綺麗に見えるなら、緑の比率を多くするために、ローポジションで撮影してみようかなという風にアイデアが生まれていくと思います。

Q. スナップ撮影のとき、ここぞの瞬間を捉えるためのコツとは?

A. シャッターを切る前に考えることを少なくしておく

Nikon Z50IIでコムロミホが撮影した写真

撮影機材:Z50II +NIKKOR Z DX 24mm f/1.7
クリエイティブピクチャーコントロール:カーボン(適用度100%)

  • photo:コムロミホ

yuco

その街の中でまずはあれこれ試行錯誤されるということすが、ご自身の中で「これだ!」と設定の方向性が決まる瞬間があるのでしょうか?

コムロ

決まるというよりは、これでいこうと一度決めたら、自分でその方向に持っていくというのもありますね。モノクロで撮るときとカラーで撮るときは、やはり被写体の見え方が変わるんですよ。例えば、窓から見えるシーンをカラーで撮ると、空の青や奥に見える緑といった色で被写体を探しますが、モノクロは光と影なので、ベランダの格子の影が面白いから、それを撮ってみようとなるんです。被写体に合わせて撮り方を変えるというよりは、画作りに合わせて被写体を探していく。そうすると街の見え方がすごくシンプルになってくると思います。

yuco

自分が撮りたいものが絞られて、よりはっきり見えてくるということですね。

コムロ

シャッターを切るまでに、できる限り考えることを減らしたいんです。街はどんどん変わっていくので、その瞬間を切り取らなきゃいけない。向こうに素敵な人がいるなと思って、そこから設定し始めると間に合わないので、いつでもシャッターを切れる準備をカメラで常にしておくような感じです。画作りを固定するというのもその1つですね。

yuco

なるほど、そこで迷っている暇はない。

コムロ

そうです。迷わなくなりますね。あとはレンズも固定します。

yuco

それも、すごく気になっていたんです。旅に行くと、ここは望遠で撮りたいなみたいなときに、レンズを換えるのは結構大変だったりするじゃないですか。先生はどうやってレンズ選びをしているのかなと思っていました。

コムロ

換えない、というのが答えですね(笑)。なので、ホテルには数本持っていっていたとしても、街歩きする時は1本だけ。20、30km歩くから荷物はできるだけ減らしたい。カメラを首にぶら下げて、薄くて小さいお財布にして、冬ならコートのポケットにスマホとクレジットカードだけ入れて、バッグなしで街を歩きます。

yuco

もう1つ気になっていたのが、私は今まで「この景色でこんな感じの写真が撮りたいな」というイメージ先行でやってきた中で、「この景色の中に人が歩いてきたら、もっといいのに」と思うことがあって。先生はそういうシーンに出会ったとき、その瞬間が訪れるまで待つことはありますか?

コムロ

あります、あります。瞬発的にシャッターを切ることもありますし、背景を決めて、そこに人がいたら素敵だなと思えば、待つことも多いです。 理想の人が来るまでとことん待ちます。カフェなどがあれば、そこで待つこともありますし、ストイックに立って待つことも多いですね。街を歩いていると、ここ、すごく素敵!どうにか画でまとめたいみたいと思うことは結構あるので、なんとか形にするようにしています。

yuco

同じ場所にだいたい何回ぐらい通われますか?

コムロ

満足できるまでですね。撮れ高次第です。こればかりは運なので。ただ1つのテーマで展示を仕上げるためには、1回の旅では内容が薄くなってしまうので、やはり3、4回、5、6回と数を重ねながら、テーマを築いていきます。行くたびにカメラの設定を変えていると印象が変わってしまうので、1つに決めたら、その後はもうそれを突き通す。例えばディープトーンモノクロームで撮影したら、次に行くときもディープトーンモノクロームなんですよ。

yuco

Zfから新しく追加されたモノクロですね。先生はモノクロ設定の中でお気に入りはどれですか?

コムロ

Zfを使う前はグラファイトかカーボンを使っていました。グラファイトは結構コントラストが高いので、例えば、ちょっと硬質にかっこよく街の雰囲気を出したいとき、光と影を強調したいときなどに使っていましたし、ベトナムで撮っているときはずっとカーボン。黒の締まりがよく、重厚感のあるモノクロ写真を撮影できます。Zfが発売になってからは、モノクロの機能が面白いので、ディープトーンモノクロームをカスタマイズして使ってみるとか。 あと、フラットモノクロームはベースにするにはすごくいいモノクロで、そこからコントラストを微調整しながら使っています。その4つが私は好きですね。場所の雰囲気に合わせて選んでいます。

yuco

私はZ5を使っていた頃はモノクロで撮影することはほぼなかったのですが、Zfのレバー1つでモノクロに切り替えできるのがすごく楽しくて。Zfを購入してからは、モノクロでも撮るようになりました。ここではモノクロで撮ってみようかなと、毎回なんとなくの好みで撮影していたので、先生がモノクロならずっとモノクロで撮影するとお聞きして、驚いています。

コムロ

カラーで見ているときとモノクロで見ているときとでは被写体の見え方も変わるので、やはり作りたい画作りを決めてから撮影したほうが、アイデアが浮かびやすくなってくると思います。

染谷ノエルが撮影したコムロミホとyuco

photo:染谷ノエル

yuco

カラーだと、どれがお好きですか?

コムロ

私はクリエイティブピクチャーコントロールのトイが好きですね。色に深みが出るのでお気に入りです。自然にその場の空気感みたいなものを表現できます。

yuco

私はデニムが好きなので、うまく使いこなしたいです。

コムロ

お気に入りは人によって違うと思うので、それを見つけるのも面白いですよね。いろいろ試して自分の作品に合うものを探していくといいと思います。

Q. 素敵な街スナップを撮るために心がけていることは?

A. 自分の気持ちのいい構図を見つける

Nikon Z50IIでコムロミホが撮影した写真

撮影機材:Z50II +NIKKOR Z DX 24mm f/1.7
クリエイティブピクチャーコントロール:セピア(適用度100%)

  • photo:コムロミホ

yuco

先生は素敵な街スナップを撮るためのMYルールはありますか?

コムロ

MYルール、何でしょうね。写真構図って2分割、3分割といった基本ルールがあると思いますが、私はそういうのはあまり意識していないですね。写真を撮っていて「めちゃハマる」と感じるとき、ありませんか? ここまで構図に入れて、ここからは入れない、みたいなことを考えているとき、被写体と背景とのバランスが気持ちのいいところってあるんですよね。そういうのを見つけられる人、すなわち自分の気持ちのいいところを知っている人は、写真の上手い人だと思うんです。だから私は構図の基本を意識するというよりは、何をどう表現するのかを考えていく中で、自分の気持ちのいい構図を探りながら撮影するようにはしています。

yuco

その感覚は天性のものですか?努力で身につくものでしょうか?

コムロ

反復作業だと思います。街を歩いていると似たようなシチュエーションは訪れてくるものなので、前回これがすごく良かったから、またこれで撮ってみようかなと繰り返してみること。それが経験値アップに繋がっていくので。あとは被写体の見え方は1つではないので、複数の見え方を探っていくのも面白いと思います。

yuco

それは例えばアングルを変えてみるといったことですか?

コムロ

とにかくたくさん撮ることです。 撮れば撮るほど、写真が得意になると思います。写真には正解も不正解もないですし、私は写真に上手い下手もないと思っていますが、自分の好きなものを、自分の好きなように撮れるようになれるといいなとは思うんです。

yuco

好きなように撮れるって幸せなことですね。

コムロ

そのためにはまず、自分の「好き」を見つけることが大事だと思います。いっぱい撮って、自分の引き出しを増やしていく。試してみることですよね。目で見て、「あ、ここはちょっと画にならなそうだな」という部分もあえて撮ってみるとか。カメラを通して見たり、レンズの効果を使ったりすると、なんでもない場所が面白く写ることもありますから。

yuco

たしかに。レンズによっても全く表現は変わりますもんね。

Q. 街スナップにおすすめのレンズは?

A. 28mmまたは50mmの単焦点レンズ

コムロ

私は広角が好きなんです。今日もZfに単焦点レンズのNIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)をつけていますが、広角は自分の立つ位置や被写体との距離感によって写り方が大きく変わるのがいいんです。

yuco

そうなんですね。私は旅に行くときはズームができると安心なのでNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sばかりです。でも先日、台湾に行ったときに、とにかく荷物を小さくしたくてNIKKOR Z 26mm f/2.8をつけて行きました。

コムロ

薄いレンズですね。

yuco

そうです。NIKKOR Z 26mm f/2.8は広角レンズなので、景色を撮るのが楽しかったです。レンズを1本しか持って行かなかったので、「ああ、ズームレンズも持ってくればよかったな」と少し思うこともありましたが、それでしか撮れないという縛りの中で撮るのも新鮮で面白かったです。先生は常にそういう状況で撮影されているということですよね。街スナップのときによく使うスタメンレンズはありますか?

コムロ

単焦点レンズが好きなので、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)。あと焦点距離50mmも好きですね。NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sはものすごく写りがいいですよね。

yuco

私もNIKKOR Z 50mm f/1.8 S、大好きです!先生は場所の雰囲気などで、レンズを選ばれてますか?

コムロ

そうですね。広角が似合う街と標準が似合う街があると思うので、その街に合わせて焦点距離を変えています。例えばベトナムやタイのように、被写体に寄れる街ってあって。東南アジアは人懐っこい方も多くて、撮影させてくださいとお願いすると、だいたいOKと言ってくれるので、そうすると寄って撮れますし、ニューヨークやパリだと、なかなかそういう風にはいかないんですよね。それに被写体だけでなく、おしゃれな背景まで写し込みたいとなると、焦点距離50mmくらいのレンズのほうが背景が大きく写りますし、街によって変わります。

撮影中のコムロミホさん

撮影中のコムロミホさん

yuco

旅行となるとつい、レンズをあれこれ持って行きたくなってしまいますが、先生は旅先に何本かレンズを持って行きますか?

コムロ

Zfであれば、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)とNIKKOR Z 40mm f/2(SE)という感じで2本ぐらい持っていって、どちらかを使うことが多いです。先ほどyucoさんがNIKKOR Z 26mm f/2.8のお話の中で「縛られる」と表現されたじゃないですか。私はスナップでは「縛る」ことがとても大事だと思うんです。制限された中に、撮りどころが見つかるんですよね。例えば、モノクロ縛りで、28mm縛りで撮ることによって、シャッターを切るときにはもう考えることがなくなる。何か被写体を見つけたとき、ズームレンズの広角側で撮るか、望遠側で撮るか、その中間で撮ろうかと迷ってしまうと瞬間が切り取れない。その点、単焦点レンズは立つ位置によって写り方が決定され、写る範囲が一緒です。なので、もうシャッターを切るしかない。あとは大きく撮りたければ自分が近づけばいいし、小さく撮りたければ離れればいいだけ。ズームレンズよりも即写性があるという意味で、私は単焦点レンズばかり使っています。焦点距離を1つに絞ってスナップすると、被写体との距離が明確になって、身につきやすくなると思いますね。私はズームレンズを使うときも単焦点レンズのように使っていて、被写体を見つけてからズームするということはほとんどないです。

yuco

ズームレンズでも、この焦点距離で撮ろうと決めたら、そのまま固定でずっと撮るということですね。

コムロ

そうです。ズームレンズは被写体が大きく写ったり、小さく写ったりするので、被写体の大きさを決めるためにズームする方が多いですけど、そうではなく、被写体と背景の距離をどれくらいの近さにしたいかでズーミングするんです。例えば神社で鳥居の大きさが同じになるように焦点距離24mmと70mmで撮影してみると、背景に見える神社と手前にある鳥居の距離感が変わってくる。広角だと遠近が生まれるので、奥の神社が小さく見えますが、70mmだと近く見えるんです。だから私は被写体の大きさを変えるためではなく、 被写体と背景との距離を変えるためという考え方でズームを使っています。同じ場所からの撮影でも見え方が変わる、これがレンズの違いの面白さですが、ズームレンズは、1本のレンズで見え方を変えられるので、使いこなす楽しさがありますね。

Q. Nikonのカメラが街スナップに向いていると思う理由は?

A. カメラの表現力の高さでその場で画を作り込める

Nikon Z50IIでコムロミホが撮影した写真

撮影機材:Z50II +NIKKOR Z DX 24mm f/1.7
クリエイティブピクチャーコントロール:セピア(適用度100%)

  • photo:コムロミホ

yuco

先生がNikonのカメラを街スナップの相棒に選ばれている理由はなんですか?

コムロ

私はカメラの中で画作りを完結したいという思いがあって、表現力の高いカメラでないと、その場の情景を作り込めないからです。Nikonはカメラの中の表現力がかなり長けていると思うので、すごく気に入って使っています。 あとはモノクロだけでなく、カラーにもいろいろな表現があって、そういったものを直感的に操作できるところも気に入っていますし、レンズもいいですね。

yuco

Nikon Zシリーズのカメラや機能、レンズなど、これがあると街スナップの強い味方になるというおすすめがあれば教えてください。

コムロ

Nikon Zシリーズ全般にいえることですが、クリエティブピクチャーコントロールを色味のベースに使うのはおすすめです。あとZ6IIIとZ50IIに搭載されているフレキシブルピクチャーコントロールは、自分の好きな色のレシピをカメラの中に入れられるので、ぜひ活用してほしいですね。自分オリジナルの画作りをカメラの中にセットして持ち歩いて撮影するのが、今後のスタイルとして面白いのかなと思います。

yuco

街スナップにおすすめの機種はありますか?

コムロ

これはもう好き好きですよね。例えば、夫の上田晃司はグリップがしっかりとしているほうが好きだといって、Z6IIIやZ8などを使っていますし、私は小型軽量なほうがいいので、ZfやZfcを使うことが多いです。
最近パリへ旅に出かけたときは、12月13日に発売されたばかりのZ50IIを連れて行きました。Z50IIはコンパクトで軽いのが最大のメリット。機動力を活かしたスナップが楽しめましたし、被写体に威圧感を与えないので、自然な写真を撮ることができるという意味でも、街スナップと相性のよいカメラだと思います。

yuco

Z50IIを使ってみた感じはいかがでしたか?

コムロ

撮影していて一番感じたのはAFの進化ですね。シャッターボタンを押した瞬間、被写体にピントが合って、初代のZ50と比べても被写体の認識が向上しているのを実感できるほど。その場で画作りできる機能もさらに使いやすくなっていて、パリの街の印象に合わせてイメージを膨らませることができました。今回はクリエイティブピクチャーコントロールのセピアとカーボンを使用しています。その街の光の状況は季節によって変わるので、私はパリには冬しか行かないんですよ。

yuco

そうなんですね!レンズは何本持って行って、何を使用されましたか?

コムロ

より身軽にスナップしたいと思って、レンズは1本。NIKKOR Z DX 24mm f/1.7を持って行きました。35mm版換算で焦点距離36mm相当の広角でスナップできるので、メインの被写体と背景をバランスよくフレーミングすることができたと思います。Nikonにはカメラもレンズもラインアップがいろいろとあるので、好みやライフスタイルに合わせて、またその街とどう向き合って撮りたいかを考えながら、選ぶのが一番いいと思います。

yuco

今日は先生の写真の撮り方や考え方を伺って、自分の引き出しがすごく増えた気がします。特に先生が写真を撮るときから、その先に展示や一冊の写真集になることを想定して撮影されていることが、すごく勉強になりました。私は今まで自分の写真を印刷する機会がなかったので、そういった考えがなかったのですが、撮った写真をどう使うかで、レンズや画作りを楽しめばいいんだ!と気づけました。ありがとうございました!

コムロ

展示や写真集を一度やるとハマると思いますよ。写真が紙になるとすごく感動しますし、どんな紙を選ぶかでも印象が変わって、写真を撮るのがもっと楽しくなると思います。いろいろと奥が深くて、自分のステップアップにも繋がると思いますので、今後ぜひチャレンジしてみてください。

染谷ノエルが撮影したコムロミホ

photo:染谷ノエル

コムロミホさんから読者の皆さんに一言
「時代と共に街はどんどん変化していきます。今しか撮れない瞬間が街にたくさん溢れています。街スナップの面白さは、街と向き合いながら、現地の人々とコミュニケーションを取って、その街の「今」を記録していくことだと思います。街スナップ・ストリートフォトに正解や不正解はありません。街に出かけたら、たくさん歩いて、たくさんシャッターを切って、自分なりの街の捉え方を見つけてみてください。私もこれからいろんなところへ出掛けて、たくさん写真を撮りたいと思います。そして、写真展という形でどんどん発表できるように活動していきたいです」。

染谷ノエルが撮影したyuco

photo:染谷ノエル

yuco’s Voice
「旅先では下調べなしで直感のままに行動するとおっしゃっていたことをはじめ、お聞きすることのすべてが新鮮で、とても勉強になりました。特にシャッターを切るときに、考えることを少なくするというお話が非常に興味深かったです。また『その場所の色や空気感は、その場でしか感じられない』という言葉には、ハッとさせられました。確かにおっしゃる通りだと思い、今後はもっとカメラ内で画作りをして撮影を楽しみたいと思っています。これまで撮った写真はSNSにアップして満足していましたが、テーマを決めて撮影し、写真展や写真集にするという目標もできました。いろいろと簡潔にわかりやすく教えていただき、ありがとうございました!」

Nikon Zfでyucoが撮影した写真

撮影機材:Zf + NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
クリエイティブピクチャーコントロール:ドリーム(適用度60%)

  • photo:yuco
Nikon Zfでyucoが撮影した写真

撮影機材:Zf + NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
ディープトーンモノクローム

  • photo:yuco
染谷ノエルが撮影したコムロミホとyuco

photo:染谷ノエル

企画・制作 GENIC編集部

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