2025/6/18

ポジティブな感情を乗せた
爽やかな風が抜けるAir Green

ささやかな幸せ。前向きな感情で目の前のシーンを大切に切り取りたいときに感じられる、どこか爽やかな風が抜けるようなイメージを表現しました。自然にあふれた緑をよりみずみずしく、人物をより健康的に。

色は撮影者の感情を伝えるための重要なファクター

私が普段制作する映像や写真と向き合うときには、その作品ごとの狙いはあるにしても、それらの記録において、被写体が過去に存在していたことへの紛れもない事実に対する、ノスタルジーのような叙情性と向き合うことが根底にあると思います。

ただそれは過度に懐古的に物事を捉えたいというわけではなく、そうした理解がある上でこそ、目の前の景色の美しさや、起こっていることの楽しさや幸せ、そのほかのあらゆる感情を捉え直せるのではないかと考えています。その再解釈を大きな割合で補助してくれるのが、自分が普段向き合う「色」のような気がしています。したがって目の前の現実の色を正確に描くことだけが必ずしも正解ではなく、必要であれば自分の解釈に合った色に再調整して作品を表現することはとても重要です。

左:オート、右:Air Green
左:オート、右:Air Green

シーンを問わずポジティブな感情を伝えられるレシピ

今回制作した「Air Green」は自分の中にいくつかあるイメージの中でも特にささやかな幸せの時間を表現したり、前向きな感情で対象を捉えたりしたいときに使う想定で制作しました。そういった明るく優しい感情のときは、どこか爽やかな風が抜けるようなイメージがあります。その風、もしかするともっと穏やかな空気のようなものを含ませたいと思いました。

今回のレシピは、ある特定のシチュエーションで使うというものよりも、できるだけ多くのシーンやタイミングに当てはまるものにしたいと考えていたので、さまざまな時間に撮影した写真にレシピを当てはめながら、自然さを残しつつも狙った色調になるように検証を重ねました。明るく撮るのに向いていますが、露出が低めでも使え、陰影の機微を捉えられるようなものにできたと思っています。

天気の良く緑が多いシーンをよりみずみずしく

できるだけ多くのタイミングで使えるようにと調整していますが、日常でも、たまに行くレジャーでも、天気の良い日中の屋外で、自然が多いシチュエーションと相性が良いと思います。植物の葉が青々と写るので、特に夏の季節がおすすめです。景色をみずみずしく描く一方で、人物はあくまで健康的に写るように色や質感のバランスを考えているので、ポートレートにもおすすめです。レシピ自体が少し明るく調整してあるので、撮影時は露出をやや抑え気味、色温度は低め、色味はグリーン側にするとよりレシピの特性を生かした色調になります。単焦点レンズの開放値などを用いてボケ感を最大限に活かした画作りも今回のレシピと相性が良く、爽やかな抜け感を表現できます。

ただ明るく撮りたいというだけでなく、その景色をより大切に切り取りたいときに使っていただけると幸いです。

記事で紹介した
イメージングレシピ

Air Green

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軍司拓実写真家・映像監督

1995年生まれ。株式会社コエ所属。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業後、DRAWING AND MANUALへの参加を経て2021年に独立。自ら撮影・編集を行うスタイルを中心に、MVやドキュメンタリーなどさまざまな映像を手掛ける。

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