2025/6/18

日本固有の湿度と暖かみを出す
Japanesque Filmの色乗り

日本らしい湿度をまとわせ、あえて色の「濁り」をプラスできるJapanesque Film。順光で捉えた青空などの色味にコクが生まれます。大事にしている身近な景色の今を、35mmのコンパクトフィルムカメラのように軽快に撮ってみませんか?

色はデジタルでフィルムのアナログ感を伝える大切な手段

私はふだん、家族写真や都市・自然風景などを撮影しています。毎日同じように見える景色は少しずつ変わり続けていて、「今度撮ろう」と考えていたものがある日突然なくなっていたりします。すべてのものははかなく、これらを形に残しておきたいというのが自分にとって写真を続ける理由です。

私の写真撮影における優先度で、色はかなり上位にあります。撮影時は被写体の色味に惹かれてシャッターを切ることが多いです。以前はフィルム(ネガ)で撮ることが多く、デジタルでもアナログライクな色調に仕上げています。これまではスティーブン・ショアやウィリアム・エグルストンら、ニューカラー作家の色調を参考にしてきましたが、最近はより日本の風土にあった湿度を感じるカラーバランスを目指しています。

左:オート、右:Japanesque Film
左:オート、右:Japanesque Film

懐かしさやフィルム写真の手触りを感じる「濁り」

イメージングレシピは撮影時から自分好みの色調で撮影できる画期的な機能です。特に電子ビューファインダーを通してあらかじめ撮影結果が見えるミラーレスカメラにおいて、色調が最初から自分好みに見えていることは撮影意欲に直結します。

Japanesque filmは、主にNX Studioのカラーグレーディングでハイライト・中間調・シャドーそれぞれに、少しずつ異なる色を足すことで「濁り」を出しているほか、カラーバランスで色相を少し傾けています。濁りがないクリアな表現も当然可能ですが、ネガフィルムはラボによる現像のさじ加減で画作りはいかようにもなるように、本レシピでは少し濁らせたクセのある色調を目指しました。

レシピを作るにあたり、作例を撮影しながら主にハイライトに乗せる色相や彩度を調整していきました。当初はアンバーがさらに強く、1990年代にコンパクトフィルムカメラで撮ったような懐かしい色味を目指していましたが、もう少し汎用性の高いバランスにしたくて、ハイライトの色の乗せ方を何度も調整しました。

大胆な露出決定を試しながら順光時の色味のコクを出す

Japanesque Filmは、晴れた青空を入れた風景写真に合います。特に順光撮影において、ブルーがコクのある仕上がりになると思います。カメラが判断したAEによる適正露出でも良いですが、大胆に露出オーバーかアンダーにすることでレシピの特徴がより発揮されることもあります。じっくりと腰を据えて作品を撮るというより、35mmのコンパクトフィルムカメラでバシバシと日々の記録をラフに撮るようなときに合うと思います。

ピクチャーコントロール:Japanesque Film

記事で紹介した
イメージングレシピ

Japanesque Film

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嵐田大志フォトグラファー

東京を拠点に、家族写真や都市光景などを中心に撮影。日常の景色をフィルムライクな色合いでミニマリスティックに切り取る作風を得意としている。国内のみならず海外の雑誌やWebメディアに写真を提供。2021年12月、初の個展「Evanescence」を東京・銀座にて開催。著書に『デジタルでフィルムを再現したい』『カメラじゃなく、写真の話をしよう』(共に玄光社)。

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