ZRを例に解説する

記録フォーマットの選び方

解説:井上卓郎

「RAW」と「圧縮形式」の違いとは?

「RAW」と「圧縮形式」の違いとは?

記録フォーマットは大きく2つに分類できます。ひとつは撮影時の情報を最大限残す「RAW形式」、もうひとつはファイルサイズを抑えた「圧縮形式」です。
RAW形式は料理で言えば「素材」そのもの。撮影後の色調整やホワイトバランスの変更など、編集の自由度が極めて高いのが特徴です。一方、圧縮形式は「調理済みの料理」のようなものです。すぐに再生できて、使える一方で、後から大幅な調整をするのは難しくなります。写真にたとえるなら、後処理を前提としたRAW形式と、撮って出しのJPEG形式の関係に近いと言えます。

3つのRAW、どう選び分けるか?

ZRが搭載する3種類のRAWは、
それぞれ明確な個性を持っています

3つのRAW、どう選び分けるか?

N-RAW

ニコン独自の12bit RAW形式です。「高画質」と「標準」の2つの画質設定が選べ「標準」を選択すればN-RAWの高画質やR3D NEに比べてファイルサイズが半分になりますので、RAWの柔軟性を保ちながらもストレージの負担を軽減したい撮影に向いています。

R3D NE

15+ストップの幅広いダイナミックレンジ、12bitの豊かな階調、RED特有の色再現が魅力です。Log3G10/REDWideGamutRGB で記録され、カラーグレーディング耐性は極めて高いフォーマットです。REDのデジタルシネマカメラと同じワークフローで扱えるため、RED機との併用撮影では欠かせない選択肢になります。

ProRes RAW HQ

Apple社が開発したRAW形式です。Final Cut Proとの相性が抜群で、Macユーザーなら編集時の負荷が少なく、スムーズな再生が可能です。ただし、ファイルサイズは3つの中で最大となるため、充分なストレージ容量の確保が必要になります。

撮影目的で選ぶ最適な記録フォーマット

シーンに合わせて何を選べばいいのでしょうか?

本格的な作品制作

カラーグレーディングを前提とするなら、迷わずRAW形式を選びます。色表現を突き詰めたいなら R3D NE、容量を抑えつつRAWの利点を確保したいなら N-RAW(標準画質) が最適です。

R3D NE

YouTube・SNS向け

RAWはオーバースペックとなる場合もあります。H.265 10-bit なら Log撮影にも対応し、ファイルサイズも抑えられ、最大5.4K 59.94p の高画質収録も可能になります。

H.265 10-bit

イベント撮影・長時間収録

記録容量の優先度が高くなるので、 H.265 が現実的な選択肢です。色調整をほとんどしない場合は 8-bit SDR を選ぶとさらに容量効率が良くなります。

H.265

RAWは不要でもH.265では物足りない場合

ProRes 422 HQ はRAWと圧縮形式の中間のような立ち位置になります。Mac環境での編集がしやすく、画質とのバランスが良く、非常に快適です。ただしファイルサイズは大きめになります。

ProRes 422HQ

長時間に及ぶライブ配信などの記録用途

資料共有用途として互換性を重視するなら H.264。Full HD・8bitと控えめなスペックですが、どの環境でも再生しやすいという強みがあります。

H.264

ZRの主な動画フォーマットと記録時間

代表的な動画フォーマットでの記録時間を
表にまとめました。

主な動画記録
フォーマット
最大解像度 最高フレームレート
(fps)
記録できる
理論上の時間
(1TBメディア)
RAW R3D NE 6048×3402 (6.0K) 59.94 約35分
N-RAW 高画質 6048×3402 (6.0K) 59.94 約35分
N-RAW 標準画質 6048×3402 (6.0K) 59.94 約69分
ProRes RAW HQ 6048×3402 (6.0K) 29.97
圧縮
コーデック
ProRes 422 HQ 5376×3024 (5.4K) 29.97
H.265/HEVC (4:2:0,10bit) 5376×3024 (5.4K) 59.94 約330分
H.265/HEVC (4:2:0,8bit ) 5376×3024 (5.4K) 59.94 約360分
H.264/AVC (4:2:0,8bit ) 1920×1080(FHD) 59.94 約2667分

*ProRes設定時の記録時間はApple社のホームページをご確認ください。
*記録時間はおおよその目安になります。

解像度とフレームレートは高くなるに比例してファイルサイズは大きくなります。本当にその設定が必要か撮影前に見直すことも重要になります。たとえば、最大解像度を使わず4Kで充分なシーンは4Kへ落とす、スローモーションが不要ならフレームレートを23.976pや29.97pに戻すなど、運用面で工夫すると、記録時間を延ばすことができます。