第73回ニッコールフォトコンテスト

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Web部門

金賞
銀賞
銅賞
入選

Web部門(単写真)銅賞 松本友紀様の作品「空を歩く」につきまして、ご掲載した作品の向きが間違っておりましたので、訂正いたしました。ご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。(2025年12月2日 訂正)

応募点数 3,655点
講評 藤井 利佳

講評 ミツバチワークス株式会社取締役・GENIC編集長 藤井 利佳

写真とは自己表現。誰かに何かを伝える手段のひとつ

 「良い写真とは何か?」──これはとても難しい問いであり。GENICをつくりながら常に向き合っているテーマでもあります。伝統あるニッコールフォトコンテストの審査員という、恐れ多い役目をいただいてから、改めてこのクエスチョンについて思考を巡らせました。
 GENICは「My Identity with Camera」というタグラインを持つフォトカルチャーメディアです。つまり、写真は「自己表現」であり、「表現することは自分らしく生きること」だと発信し続けてきました。では表現とは何か。それは「誰かに何かを伝える」ための行為です。そしてそれは、ときに誰かの感情を揺さぶり、ときに誰かを勇気づける。表現とは、そんな素晴らしいものだと感じています。
 「良い写真とは何か?」──その答えは数多くあれど、私にとってのひとつは「心がノックされるかどうか」。撮り手ではない私だからこそ、そこを大切に審査したい。そんな想いで審査に向き合いました。
 Web部門(単写真)には、実に多種多様な作品が寄せられました。金賞に選ばれたのは、深澤明彦さんの「厳冬期の光と風」です。応募コメントには「この光と風を待っていた、この瞬間の感動は忘れない」とありました。斜面と風の流れが、まるでゴールかのような光芒に向かってリーディングラインを形成し、ライン上の人物に自然と視線が導かれます。
 銀賞は、持田あきらさんの「聖地巡礼」。標高4000メートルの北インドの極地で催されるチベット仏教の例祭で、氷点下のなか五体投地で進む巡礼者をとらえた一枚です。モノクロの表現で、より人々の動きが際立っています。遠くに広がる街と雪山からは沈黙を、人々の姿からは熱い温度を感じる、その対比が素晴らしい作品です。
 銅賞は3作品。村本浩さんの「はじめての旅行!」。「このあとベッドから落ちて大泣きしてしまった」というコメントで、この作品はより輝きました。シャッターのあとの物語を、私たちはまるで見たかのように想像でき、連綿とつながる時間を1枚で語る「写真」らしさが詰まった作品でした。杉本沙希さんの「朝日とうさぎと私と」は、うさぎ好きの娘さんと本物のうさぎのスリーショット。まさに不思議の国への扉のようです。シルエットだけで感情を語らせる力があり、表情を想像する楽しみも与えてくれました。松本友紀さんの「空を歩く」には「道がない空を歩けば、どこにでも行ける気がした」というコメントが添えられていました。表現者の想いに触れてから改めて作品を見ると、先ほどまで見えなかったものが浮かび上がってきます。現代的な感性を持つ表現者らしい、想像を掻き立てる余白のある作品です。
 入選は10点。井戸隆寛さん「花火と稲妻」、夢無子さん「前へしか、進めない」、坂上大輔さん「夕暮れ運動会」、広瀬宏司さん「夏至南風の頃」、福村成彰さん「明日も生きるために」、猪狩菜津美さん「殻にこもる」、野田昌直さん「Story」、根岸廣行さん「Happy Snappy」、𡈽山晶子さん「飛翔」、佐藤征人さん「希望と慈愛のとき」。タイトルを眺めるだけでも、想像が膨らみませんか。
 ニッコールフォトコンテストが、これからもずっと続いていきますように。たくさんの想いをのせた未来の受賞作品と出会える日が、今から楽しみです。