第73回ニッコールフォトコンテスト
| 金賞 | |
|---|---|
| 銀賞 | |
| 銅賞 | |
| 入選 |
| 応募点数 | 322点 |
|---|---|
| 講評 | 佐藤 倫子 |
心が動いた瞬間を大切に、自分の感性を信じて
今回U-18部門の作品を拝見しながら、ふと自分が写真を撮り始めた18歳のころを思い出しました。当時はフィルムカメラで、ピントもすべてマニュアル。今のように瞬時にシャッターを切ることは難しかったものの、「写真で自分の思いを表現すること」に夢中になっていたのを覚えています。絵とは違い、リアルな時間を切り取る写真の中で、どうすれば自分らしい視点を見せられるか、人と違う撮り方ができるか……そんなことを考えながら、いつも被写体を探していたように思います。
応募作品からは、「自分らしさ」をどう表現できるか試行錯誤しながらも、写真を撮ることそのものを心から楽しんでいる様子が伝わってきました。技術やタイミングなども大切なことですが、それ以上に、撮ることを純粋に楽しむ気持ちが伝わる写真になっているのではないでしょうか。
今回の金賞に輝いた幸地今梨さんの「突き進む」は、手前の大きな波の動きを見事にとらえた大胆なカメラワークと、その波間からのぞく視点に海の臨場感があり、水面の光も生き生きと輝いています。船を漕ぐ人々を中央に置かない構図からは海との対比も伝わり、青色の濃さに深みと重みが出て、全体をぐっと引き締めた力強い作品です。
銀賞に選ばれた服部栞奈さんの「連れてって」は、光に照らされたヤギと壁の陰影のコントラストが美しく、ヤギがこちらに向けている眼差しが、どこか切なさを漂わせます。柵の隙間からのぞいているような画面構成が距離感を生み、丁寧に見つめた光の見せ方で描き出された作品です。
銅賞の3作品、森田唯さんの「未来のスター」は、風に舞う髪の毛がしなやかな動きを見せ、顔を覆い隠す髪の隙間から少女の力強いまなざしが印象的です。ポージングからも少女自身の意志の強い凛とした存在感が伝わってきました。タイトルにも森田さんのセンスがさりげなく表れています。井口結愛さんの「私の高校入学写真」は、あえて顔を見せないことで今の自分を印象的に写し出し、桜の花びらと影、そしてスカートの一つ一つの動きが、入学というシーンの新鮮な気持ちをとらえています。左下に影が入っていても、良いアクセントになったかもしれません。伊藤萌香さんの「また明日ね」は、中央に差し出された手のひらがまず目を惹きます。その奥に写る少女の横顔と少し開いた口元からは、友人に何気なく声をかけるいつもの仕草が伝わってきます。逆光に優しく包み込まれた、飾らないいつものひとコマを写した作品です。
ほかの入賞作品についても、日常の中で感じ取った瞬間を見逃さない視点と、巧みな構図によって印象の強い作品が選ばれました。
どんな時代にも、その時代の10代にしか感じ取れない、気づけない瞬間があります。それは特別であり、その時にしか伝えられない"今"なのです。これから大人になっていく中で、また新しい見方や感じ方が生まれてくるでしょう。この一度だけの時間を大切に、自分の感性を信じて思いきり表現してください。誰にもそれぞれの個性があり、それを伝える自由があります。そして、それを表現できる写真の面白さがあります。これからも自信を持って、自分の目で見た世界を撮り続けてほしいと思います。