第73回ニッコールフォトコンテスト

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U-18部門(組写真)

金賞
銀賞
銅賞
入選
応募点数 306点
講評 上田 晃司

講評 写真家・ニッコールクラブ アドバイザー 上田 晃司

バリエーション豊かな表現にこれからも挑み続けてほしい

 昨年に続き素晴らしい作品が多く、写真に順位を付けることは本当に難しいと感じました。とはいえ不思議なもので、多くの力作の中でもひときわ際立つ作品や響く作品があり、それが審査員の目に止まって上位に上がっていくのがフォトコンテストの魅力でもあります。
 今回はU-18部門(組写真)の総評をさせていただきます。ほかの部門と比べると、応募者のほぼ全員が学生の方なのがこの部門の特長です。言葉ではなかなか説明しづらいのですが、「写真を純な気持ちで撮っているな」と感じる作品が多いと考えています。それだけでなく、中には写真部などでの指導のもと、しっかりと学んだことを実践している方も見受けられました。
 今回のグランプリはU-18部門(単写真)から選出され、デジタルネイティブな撮影者が撮る作品は、表現の幅も広いと感じました。一方、組写真は単写真と違い、ストーリーが重要な要素。単写真ではカバーしきれないストーリーを、見る人に伝えることができるのも組写真の面白さといえるでしょう。
 金賞を受賞した小上馬杏南さんの「覚悟」は、2枚で力強く表現された作品です。組写真は4枚まで構成できる中、あえて2枚に絞った表現に挑んだのは素晴らしいと感じました。無駄のないカットで、タイトルのとおり力強い「覚悟」が伝わる、記憶に残る作品です。
 銀賞に選ばれた山中すみれさんの「思い出す」は、構成や4枚の写真のトーンなどが丁寧に仕上げられ、被写体との距離感も素晴らしく、まるで映画のワンシーンのような作品だと感じました。銅賞の今井田あおいさんの「姉と妹」は、姉妹の気持ちの繋がりを表現した組写真。日常では違う時間を過ごす2人でも、気持ちはいつも繋がっていることが伝わりました。同じく銅賞の鈴木えみさんの「君が居なくなる前に」は、高校を卒業し別々の人生を歩み始める前の状況を作品にされたのかなと思います。不安な気持ちや前向きな考えを、しっかりと3枚にまとめていると思いました。銅賞のもう1点、服部栞奈さんの「もっと撫でて」は、夕日の斜光を上手く使い、ペットのインコと人の関係性が綺麗かつドラマチックにまとめられています。インコの表情からも、とても大事に育てられていることが伝わりました。
 入選の作品も、U-18部門ならでは距離感や感性による作品が多かったです。三條颯太さんの「トランスフォーム」のような見ていてつい笑顔になる作品、写真を楽しみつつも感性を生かして撮影した藤澤めいさんの「緑い」など、素晴らしい作品ばかりでした。
 組写真は、単写真では不向きな広い世界を表現でき、説明がなくても、見る人が撮影者の表現する世界を感じられるのが魅力といえるでしょう。今回入賞した作品を振り返ってみても、インパクトのある作品、静かにストーリーが感じられる作品、U-18だからこそ撮れる作品など、バリエーションがあり素晴らしいと感じました。そして惜しくも入賞できなかった作品の中にも、入賞作品と遜色ないものがたくさんあったことをお伝えしておきたいです。これからもぜひ、U-18だからこその、自由で豊かな感性の写真撮影を楽しんでみてください。