第73回ニッコールフォトコンテスト

トップへ戻る

ネイチャー(自然・風景)部門(単写真)

金賞
銀賞
銅賞
入選
応募点数 1,269点
講評 三好 和義

講評 写真家・ニッコールクラブ アドバイザー 三好 和義

カメラの進化を存分に生かして新たな表現に取り組んでほしい

 風景写真、動物写真の秀作が集まりました。審査員の投票で上位を決めてゆくのですが、今回は票が割れて決定するのが大変でした。それだけどの作品も優れていて、どれが金賞になってもおかしくないという状況であり、最後はそれぞれの意見を出し合って、ようやく決定しました。審査をしていて、作品のレベルが回を重ねるごとに上がっていると実感し、充実した気持ちになりました。
 金賞は荒田拓さんの「魅惑の大地」。タテ位置ながら、ダイナミックな広がりのある風景写真です。赤く焼けた空と白い雪の組み合わせが美しく、じっと見ていると樹氷のサイズ感がわからなくなり、どこか怪物のようにも見えてきます。実際はかなり大きいはずですが、小さなものにも見えてくる、想像を超える「見たことのない」世界観をつくり出しています。素晴らしい幸運の中で撮られた作品であり、極寒の辛い条件での撮影なのに、明るく仕上げたところも良かったです。
 銀賞は蛯澤一雄さんの「見つめる先」。キツネと一緒に、フワフワと宙を舞う妖精を見ているようなファンタジックな世界です。動物を撮るというより、動物に気持ちを寄せることで、この作品を見る人の気持ちまで引き込むところが素晴らしいです。光、構図、シャッターチャンスも申し分なく、一瞬を見事にとらえています。
 銅賞の櫻庭一憲さんの「星降る夜の虹と水の舞」は、夜の虹が鮮明に写されています。星空と虹の明るさのバランスが良く、人の目にははっきりと見えない世界が、カメラを通すとこんなにも鮮明に写るという不思議。美しい滝の形と虹の位置なども、考え抜いて撮られています。同じく銅賞に選ばれたのは、黒田大幾さんの「暁閃」。荒々しい波と剣のような岩、真っ黒な雲の間から差し込んだ一瞬の光というドラマチックな瞬間です。色調や波をぶらしたシャッタースピードによって、絵画的なシーンを美しい作品に仕上げています。銅賞のもう一点は、蜂谷雅人さんの「ボスは強し」。濡れた猿たちの猛々しい争いが、飛び散った水の中で繰り広げられています。目の前で起きたハプニングを夢中で撮ったのでしょう。モノクロでコントラストの高い仕上げにしたことで、より迫力のある作品になりました。
 入選に選ばれた作品も、どれも上位をねらえる作品が揃っています。その差はわずかで、それだけに審査員の意見も割れたというわけです。
 AF速度や被写体追従性能など、技術革新でカメラの機能がどんどん進化しています。それにより、今まで撮れなかった作品が撮れるようになりました。グランプリに選ばれたU-18部門(単写真)の眞野瑞己さんの「寒暁の舞」はルリビタキが羽ばたく一瞬をとらえていますが。これは眞野さんの技術と、カメラの進化が融合した象徴だと感じました。このように、機材の進化で表現が豊かになるというのは、カメラの表現、芸術の特性の一つです。思ったままの作品をものにできるのはとても楽しいもの。そんな技術の進歩をどんどん生かして、豊かなカメラ表現を試みましょう。
 今年の審査では、皆さんの表現の幅が確実に広がったなと実感しました。これからも留まることなく、この部門のレベルは上がっていくと信じています。今までに見たことのない作品との出会い、心暖まる作品との出会い。来年もそんな素敵な出会いを期待しています。