第73回ニッコールフォトコンテスト

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ネイチャー部門(組写真)

金賞
銀賞
銅賞
入選
応募点数 916点
講評 熊切 大輔

講評 写真家・ニッコールクラブ アドバイザー 熊切 大輔

「光」を印象的にとらえて構成された作品の数々

 ネイチャー写真は写真の原点的テーマであり、シンプルにして奥の深い被写体。その難しさは、私もさまざまな撮影シーンで実感しています。風景写真に関していえば、まず一番重要なのが「その瞬間、その場にいること」です。どこにフォトジェニックな場所があるのか、下調べが必要ですが、そこにただ行けばよいというわけではありません。一番画になる時期は、時間とその場の特性から知る必要があります。下準備を入念に行い、やっと撮影に挑むわけですから、その労力や知識、経験値が試されるのではないでしょうか。今回の入賞作品のみならず、応募された多くの力作にその痕跡を感じることができました。
 今回応募・入賞された作品においては、「光」を印象的に写し出したものが多かったように感じています。ダイナミックな風景や被写体を、よりフォトジェニックに変えるのは光です。これはすべての写真表現に共通することですが、光は印象的な色や影を生み出します。そして光そのものを写しても、その表情はいろいろな顔を見せてくれます。そんな魅力的な「光」をうまくとらえ、被写体として組み合わせた作品が多く入賞したように思います。
 金賞を受賞した峯田翔平さんの「陽変幻」は、まさにそんな作品でした。自然風景の中にさまざまに現れる光たち。それは決して力強いものではなく、優しく世界を包んでいて、まるでおとぎ話の世界のような想像を掻き立ててくれました。組写真の場合気をつけなければならないのが、単調にならないこと。いくら一つのテーマといっても、同じような写真をただ並べては面白みに欠けます。その点でも本作は、さまざまな被写体やシチュエーションを生かして、光のバリエーションを描いています。4枚組ですが、この手法で写された他のシーンも見てみたいと思わせる、素晴らしい作品となりました。
 銀賞の伊藤慶さんの作品「鷲影の威光」は、対照的に力強い表現となりました。鷲の力強さ、凛々しさが見事に写し出されており、まさに孤高の存在といった被写体の持つイメージを具現化できています。さらに、写す時間帯を変えることによってドキュメンタリー的な印象となり、時間をかけて鷲をファインダー越しに丹念に見つめ続けたのだろうと感じられました。秀逸なのが、やはりここでも印象的に光を効かせていることです。月と太陽という対極的な光を、印象的に組構成の中に取り入れることができました。
 一転して、銅賞の森山雅友さんの作品「幸せ家族の住む土手」は、野生動物のほのぼのとした優しい表情を写しています。キツネの家族の幸せな時間。家族の楽しい交流が表情豊かに描かれています。
 同じく銅賞の石塚佳子さんの作品「カムイのソラ」は、まさに光という被写体が主役になっています。大宇宙を感じるスケールで写し出された北海道の星空。低輝度オーロラの光が生み出す多彩な、そして繊細な色彩がなんとも魅力的です。そこに月光や流星の光もアクセントとなって効いており、見ごたえのある作品となりました。
 もう一点の銅賞、白井正明さんの作品「幻影」は、まるで絵画のような作品表現となりました。大胆な切り撮りが、自然界にあるデザイン的な面白さを引き出しています。家に飾りたくなるような作品になりました。
 昨今、自然の脅威が多くニュースになっています。撮影場所の特性や情報をしっかり理解したうえで、無理のないネイチャー撮影を心がけていただければと思います。