
原初の地球が息づく風景
ニュージーランドには、一般に温暖で居心地のいいイメージがあるかもしれない。しかし、今回訪れた南島は、南極に思いがけないほど近く、とてもワイルドな場所だ。氷河が削った大地が広がり、雨が激しく降る地域、風が厳しく吹き付ける地域が点在する。そうした南島には、太古の時代を思わせるシダの森や、独特な存在感を放つモエラキ・ボールダーズなど、不思議な風景が多数存在する。さらに子細に観察すると、地球を構成するエレメンツや生命の起源を想像させるような形の鉱物、植物などが無数に目に飛び込んでくる。ニュージーランドのあちらこちらで見られる地球の創生を思わせる風景。その場所を構成する鉱物、地衣類、植物、造形物などには、目に見えないスピリットのようなものが感じられる。そんな形のないエネルギーや地球の働きを写し込みたくて、風景を構成する細かなものの一つひとつに注意深くカメラを向けてみた。
それらは地球のリズムを含んでいたり、宇宙誕生から引き継がれたエネルギーを含んでいたりと、
あまりに微弱で人間の五感では捉えにくいものの、確かな生の鼓動を宿している。
ニュージーランドが心地よい理由

ダニーデンの絶壁に立つ僕。激しい風雨で岩肌が丸みを帯びている。この海の向こうに南極があるのだ。またこの下に前出の「トンネルビーチ」がある。
ニュージランドの南島には、自然の厳しさと美しさが共存している。そうした土地では助け合うことが当たり前になっているためか、会う人会う人がとても親切に接してくれる。また、キャンピングカーで思いつくままに行動している間も、(多少の不便さはあったものの)不快さや怖さを感じたことがなかった。
ニュージーランドの人々は、僕らのような訪問者に対してだけでなく、あらゆる生き物に一様に心を開き、愛情をもって接しているように見える。そんな“気”が満ちているからだろうか、ニュージーランドは旅人の僕にも、心地よく自然と向き合わせてくれた。

クライストチャーチ近くの海岸にて。ここでニュージーランドでもまれに見られるというオーロラを待ってみた(残念ながら今回は見られなかったけれど)。地元のおじさんが近寄ってきて、このビーチで見つけたという、美しく磨いた石をくれた。

刻一刻と形を変える雲や、その間からこぼれるまだらな光を受けて自己主張する山々は、いくら撮っても撮り切れた感じがしない。つい時間が経つのを忘れてしまう。

氷河が削った微粒子が水に溶け込んだ、まるで南の海のような色をしたプカキ湖。こんな美しい場所でただ一人、思う存分に撮影するぜいたくを楽しんだ。

今回の旅の間、一緒に周ってくれたキャンピングカー。昼に夜に、大事な機材と荷物と体を守り、安全と安眠を約束してくれた、頼もしい相棒。
良質で巨大なデータに込めたD850の表現力
地球上の雄大な風景から、片隅に佇むものの微細なディテールまでを、その背後に見え隠れする地球の働きを意識しながら、様々な画角のレンズを使って撮影していった。ニッコールレンズの優れた性能を引き出しながら、D850は巨大なデータで、シダの葉一本一本の尖った葉先やザラザラとした岩の質感を隅々まで再現し尽してくれた。時には暗い森の中で、時には雨がしとしと降る山の中腹で、高感度を生かし手持ちでも安心してガシガシ撮ることができた。
人間の目というものは、高性能ではあるけれど、細かなところまで詳しく映すことはできない。しかし大きく緻密な画質を誇るD850で撮った画像を撮影後に拡大してみることで、肉眼では気づかなかったディテールやその奥行き感を改めて観察することができる。良質で大きなデータというものは、想像を超えるポテンシャルをもっているのだ、ということを驚きとともに感じさせられた。

NEW ZEALAND ロケ撮影機材リスト

- 撮影協力
- ・ニュージーランド政府観光局
- ・ニュージーランド航空
- ・EARTH & SKY(小澤英之氏)
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モエラキ・ボールダーズ
モエラキ海岸に点在するモエラキ・ボールダーズは6500万年ほど前に、貝殻や生命体の残骸などを核として、約400万年かけて石灰質などに覆われてできたものだとか。
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満ちゆくモエラキ
重さ数トン、大きいもので高さ2mにもなるモエラキ奇岩群。モエラキ海岸にて
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トンネルビーチ
トンネルビーチは、絶壁の下にある小さくて美しいビーチ。ダニーデンにて
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プカキ湖
氷河からの水が注ぐ美しい湖、プカキ湖は青い宝石のよう。
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フラクタルな葉
ニュージーランドには約200種のシダ類が自生していると言われる。ミルフォードサウンドにて
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生命体“シダの葉”
付近の年間降水量は6,000mmを超え、大量の雨がコケやシダを育む。ミルフォードサウンドにて
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小さな森
原生林の地面を鮮やかな緑黄色のコケが覆う。ミルフォードサウンドにて
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地衣類
地衣類は菌類と藻類が共生してできた植物群で、乾燥や低温などの厳しい環境にも耐えるそうだ。フォックス氷河にて
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岩のディテール
地衣類やコケが岩を美しく飾る。フォックス氷河にて
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強風のアート
南緯45度に位置するダニーデンには南極から強く冷たい風が吹く。ほぼ水平に伸びる木の姿が、その激しさを物語っている。
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雲のアート
星空を待つまでの夕暮れ時に雲のアートに出合った。レイク・テカポにて
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変幻自在な雲
強い風と夕焼けが雲を美しいアートに変える。レイク・テカポにて

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/18
焦点距離:22mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:64に対して約1段減感 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/6.3
焦点距離:19mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 64 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/10
焦点距離:17mm ホワイトバランス:色温度(4000K) ISO感度:ISO 64 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、6秒、f/22
焦点距離:17mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:64に対して約1段減感 ピクチャーコントロール:ビビッド NDフィルター使用

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/5.6
焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/8
焦点距離:300mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/200秒、f/8
焦点距離:290mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/4
焦点距離:70mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/2000秒、f/4
焦点距離:70mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/320秒、f/13
焦点距離:16mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/1600秒、f/5.6
焦点距離:120mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 640 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/2000秒、f/5.6
焦点距離:135mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 640 ピクチャーコントロール:スタンダード