
天空と大地の出会う場所
ニュージーランドに着いたら真っ先に訪れようと心に決めていたのは、レイク・テカポだった。街灯にかさをかぶせて光害を軽減する、ナトリウムランプを採用するなど、町全体で美しい星空を守っている世界でも貴重な場所だ。
陽が沈み、無数の星々を望遠レンズごしに眺めていると、いつしか心は無限の宇宙に飛びだしていき、まるでそこを漂っているかのような気分になる。僕は太陽系をはるかに超え、しばし果てしない銀河を遊泳する。
都会で生活しているときには宇宙を意識する機会もあまりないが、こうして夜空を観察していると、僕らは銀河系に浮かぶ星に住む宇宙人で、動物も、植物も、同じ宇宙生命体であることにあらためて気づかされる。
マウントクックの夜明け
プカキ湖の湖畔からマウントクックを望む。星や月の光がマウントクックに注ぎ、やがて朝日が山肌を照らす。真夏だというのにダウンを着込まなければいられないほど寒い夜、その移り変わりを4時間もかけてじっくりと眺めるほど贅沢なことはないかもしれない。地球は宇宙を巡り続けている。その営みをひしひしと感じる豊かな時間だった。
それが地球に達したとき初めて、光が本来持っている美しさや歓びが地表で開花するようにも見える。
やはり地球は、特別に美しい惑星なのかもしれない。
テカポ湖の二つの顔に出会った。

満天の星に包まれるわが宿
ニュージーランドの撮影では、キャンピングカーをレンタルすることにしている。夜でも昼でも構わず撮影するし、気に入った風景には納得できるまで向かい合いたい僕のスタイルに一番合っている。それに、満天の星の下で眠り、美しい自然のただ中で目を覚ますのはとても気分がいい。

お世話になった現地在住の小澤英之さんと(赤道儀に400mm F2.8とD850を載せて)
レイク・テカポはユネスコの国際ダークスカイ・リザーブ(星空保護区)に指定されているだけあって、さすがに満天の星空が美しい。さっそく撮影を始めると、いつしか星の世界に心を奪われてしまった。まるで宇宙旅行を楽しんでいるような、独特の浮遊感がなんとも言えず心地よかった。
漆黒のテカポ湖に陽が昇ると、打って変わって色とりどりの自然が広がっていく。中でもルピナスの群生地は圧巻だ。この花は、日本では栽培が難しい園芸種として知られているが、ここでは雑草扱いだという。それでも多彩な色調で群生する様は息を飲むほど美しい。無心に生きる命の美しさを感じる光景だった。

赤道儀のセッティング中。これに撮影機材を載せると、天空に合わせて自動的に動かしてくれ、スローシャッターでもブレることはない。

マウントクックのタイムラプス映像を撮影中。夜中の3時ごろから始めて、もう3時間近く経過。太陽がもうすぐ昇ってくるはずだ。

テカポ湖畔に群生するルピナス。いい香りに包まれて、とても幸せな撮影だった。
D850の万能さが感じられた旅だった。
ニュージーランドでは、D850をメインに使って撮影した。D850の人気のほどは以前から聞いていたものの、実際に使ってみて、現時点で自分にとってこれほど完璧なカメラは無いと思うに至った。画質はすごくいいし、ピントも早くて正確。高感度も優れているし連写も速い。何よりびっくりしたのはタイムラプスで撮影したときの「露出平滑化」の表現力だった。初回に掲載したマウントクックのタイムラプス動画では、深夜3時ごろから、およそ4時間にわたり撮影したが、撮り終わった頃にはすっかり夜が明けていた。それでも星空から朝の光まで、自然なつながりで動画を完成させることができた。さらに動きの早い鳥もピントがしっかり追いかけてくれるし、迫力ある風景も高画質で撮れるD850の万能さは、とにかく頼りになる。
今回はいつも使用しているレンズに加えて、AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VRを使ってみた。DXフォーマットのD500にセットしたときの、焦点距離600mm相当で開放F値2.8の明るさというのはこれまでの感覚では考えづらい。威力十分である。天体撮影では、この組み合わせが活躍してくれた。

NEW ZEALAND ロケ撮影機材リスト

- 撮影協力
- ・ニュージーランド政府観光局
- ・ニュージーランド航空
- ・EARTH & SKY(小澤英之氏)
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夜のルピナス
ルピナスの花々と銀河。ルピナスは外来種だが風土に合って、繁殖力がとても強いらしい。テカポ湖周辺の群生地にて
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逆さまなオリオン座
逆さまに見えるオリオン座。明るい三ツ星の上に見えるボヤっとした部分は大星雲。レイク・テカポにて
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シリウス
地球から見える最も明るい恒星として知られるシリウス。レイク・テカポにて
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オリオン大星雲
望遠レンズを通すと怪しげな光が見える。オリオン大星雲。レイク・テカポにて
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赤い星雲
南半球の緯度が高い場所でしか見られないイータ・カリーナ星雲。レイク・テカポにて
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善き羊飼いの教会
善き羊飼いの教会は、レイク・テカポを訪れる観光客の絶好の撮影スポットでもある。
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ルピナスの花
青空に向かい伸びるテカポ湖畔のルピナス。
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生命力あふれるルピナス
ルピナスはよそから持ち込まれたが、強い生命力でどんどん繁殖していく。レイク・テカポにて
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ルピナスとテカポ湖
ルピナスとエメラルドグリーンに輝くテカポ湖。レイク・テカポのマウントジョン頂上にて
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ルピナスのグラデーション
テカポ湖畔に群生するルピナスの花。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/5.6
焦点距離:14mm ホワイトバランス:電球 ISO感度:ISO 12800 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、10秒、f/2.8
焦点距離:55mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 6400 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/8
焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 3200 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/5.6
焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 6400 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、59.8秒、f/6.3
焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 6400 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、15秒、f/4
焦点距離:14mm ホワイトバランス:電球 ISO感度:ISO 6400 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/10
焦点距離:16mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/2500秒、f/10
焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/11
焦点距離:165mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/4000秒、f/10
焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード