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クリエイターのノウハウを公開
「Z8 とN-RAW がなかったら、僕は動画をやっていなかったと思うんです」そう語るのは、長年写真家として活動し、近年では花火のHDR 映像で注目を集めている別所隆弘さんです。夜空を彩る刹那の芸術・花火。その一瞬の輝きと迫力を、N-RAW で見事に捉え、新たな映像表現へと昇華させています。これまで写真のフィールドを主軸としてきた別所さんが、なぜ動画、そしてN-RAW の世界に足を踏み入れたのか、N-RAW による花火撮影の工夫から、DaVinci Resolve を用いた編集・カラーグレーディング、さらには花火そのものへの熱い想いまで、同じくZ8 を使いRAW 動画にハマっている井上卓郎さんにお話を伺っていただきました。 (聞き手:井上卓郎)
別所さんが本格的に動画を始めたのは3年ほど前、Z8との出会いがきっかけでした。「最初は写真だけのつもりだったんですよ。ところが動画にN-RAW設定があって、“え、動画もRAWで撮れるの?”と驚いたんです。これはちょっと試してみようと。写真の世界ではRAWデータで撮影するのは当たり前。それが動画、しかも内部収録で可能になるなんて、最初は信じられませんでした」
当時、動画の知識はほとんどなかったという別所さん。しかしN-RAWで撮った花火映像を初めてグレーディングしたときの感動は、今でも忘れられないそうだ。
「写真のRAW現像で見てきた“あの光”が、動画でもそのまま出せるんですよ。ハイライトも、シャドウも、自分でコントロールできる。これは面白い、と一気に引き込まれました。写真をやってきた人ほど、RAW動画の魅力にハマる と思うし、今すぐやったほうがいいと思います」と力説します。
「写真というのは、長秒露光をすれば光がどんどん蓄積されていくわけです。露光を調整することで様々な表現ができる。一方、動画はフレームごとに露光して記録されるから、光を“ためる”ことができないんですよね。その代わり時間の流れそのものを記録し、光の移ろいや音、場の空気感までをも伝える ことができます」
別所さんは、写真と動画の根本的な違いに改めて気づかされたと言います。
「だからこそ、撮影時の設定でちゃんと捉えておく必要があるし、グレーディングで捉えられる範囲も見極めなければいけない。写真の延長ではあるけれど、別の技術や感覚が必要になる のが面白いところなんです」
「撮影の階調モードはダイナミックレンジの広いN-Logを使っています。花火の映像ではスローモーションはほとんど使わないんです。なので解像度は最大にしつつ、フレームレートはファイルサイズの軽減のためにも30pでいいと思っています」
ISO | F値 | フレームレート | N-RAW設定 | |
---|---|---|---|---|
![]() |
6400 | F2.8 | 30p | N-Log 高画質 |
![]() |
4000 | F1.8 |
「僕ら写真の人間は、“RAWなら色が戻ってくる”って信じているんです。以前別のカメラで花火の動画を撮った時に花火の明るさの変化に耐えられなくて諦めたんですよね。でもN-RAWならそれができると知った時、世界が変わったんですよ」
別所さんがとくに魅力を感じているのが、N-RAW+N-LogのHDRグレーディングです。
「DaVinci Resolveを最初に使った時「リフト・ガンマ・ゲインって何?」というところから始まった んですけど、何のことはない「シャドウ・ミドル・ハイライト」のことでよく慣れたトーンカーブもある。またカメラRAWの項目はほとんど写真の現像と一緒なんだとわかり一気にハードルが下がりました」
「煙が立体的に見えるようにするには、ただ明るくすればいいってものではないんです。むしろ、シャドウは引き締めたほうが綺麗に見えることも多い。そこがHDRの醍醐味ですね」
井上さんも、別所さんがDaVinci Resolveの「HDRホイール」と「カーブ」の使い分けをどうしているのか気になっていたそうですが、「カメラRAWでベースのバランスを整えて、HDRホイールで繊細な光を表現し、仕上げでカーブをちょっとだけ足す」——そのシンプルな方針に、妙に納得させられたそうです。
ノイズ処理も花火ならではの工夫があると言います。
「煙の動きがあるから、時間的ノイズ除去より空間的ノイズ除去の方が自然に仕上がる
ことが多いんです」
実はHDRを確認するには、HDR環境でグレーディングするだけでなく、対応するモニターが必要になります。別所さんのHDR編集時のモニターはASUSのPA32UCRを使用(デスク上の左側のモニター)。
「高価なプロフェッショナルモニターも魅力的ですが、視聴環境の現実を考えると、20万円クラスのHDRモニターで制作するのが現時点ではバランスが良い と感じています」
編集とグレーディングの作業は、Mac mini (M4 Pro) と、Core i9とRTX4090を搭載したWindows PCを併用しています。
データは10Gbps対応のNASに集約し、PCから直接アクセスして編集を行うとのことです。
HDRのグレーディング作業では最後の書き出しもポイントになってきます。HDR映像を作るうえで重要なのは、「カラーマネージメント設定」と「出力設定」、そして「プレビューモニター」です。
「自動カラーマネージメント」を使い、「カラー処理モード」をHDR、「出力カラースペース」を「HDR PQ」に設定します。プレビューモニターは、前述のASUSのPA32UCRのように最大輝度が1000nit以上出るものが望ましいでしょう。HDRモードに切り替えて作業します。MacBook ProのXDRディスプレイを使う場合は、「HDR Video (P3-ST2084)」に設定します。
YouTubeでHDRで見せるための書き出し時は、10bitのコーデックを使用する 必要があります。
ここまで8KのHDR素材を例にご紹介してきましたが、8KにこだわらなければZ5IIでも花火のHDR映像を作成することができます。 Z8とZ6IIIやZ5IIの2台体制で撮影することも多いという別所さん。「Z5IIは小さくて軽いし、写真目的で買った人が“えっ、動画もRAWで撮れるの?”となるのは、すごくいい導線だと思うんですよ」。これは井上さんもまったく同感。
別所さんが実際、Z5IIのプロモーションで花火映像を公開したところ、同業の写真家たちから「RAWで動画って一体どうやってるの?」と次々に問い合わせがあったと言います。
「写真家にとって“RAW”という言葉は魔法のワードなんですよ。RAWなら俺たちでもいけるっていう」
花火動画においてN-RAWとHDR編集の組み合わせは「最高」だと言います。
「これまで白飛びしてしまっていた花火の芯の色彩や、闇夜に溶け込んでいた街のディテールまでもしっかりと捉え、表現できる。黒が締まることで、光のきらめきが一層際立ちます」
動画ならではの時間軸の中で、一瞬の白飛びはむしろ現場の臨場感を伝える要素として許容し、その後の光の変化をドラマチックに描けばいい ということなのです。
「花火って、めちゃくちゃ動的なのに、なぜか“写真的”に表現できるんです。煙の流れ、色の残り方、すべてが写真と地続きなんですよ」
映像を拝見していても、別所さんの“1カットにかける熱量”が強く伝わってきます。
「動画でも、“1枚の写真として美しいか”を常に意識してます。最近のSNSは、短尺動画でも“見せ切れる”時代ですから、写真家的な視点がすごく生きてくるんですよね」
SNSでの見え方にも配慮し、再生速度を調整する
こともあると言います。
「スマートフォンの小さな画面では実際のスピードだと花火が遅く感じられる
ことがある。そのため、1.5倍速などで見せることもあります」
メディアや視聴環境によって最適な表現を模索する姿勢は、写真家としての経験が活きている部分でしょう。
写真も動画も、見る人の心を動かすための手段であることに変わりありません。その意味で、N-RAWが開いたこの扉は、表現者にとってかつてないほど広く、深い世界への入り口なのかもしれません。
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