N-RAW の編集方法

DaVinci Resolveを利用したN-RAW編集のポイント

監修:井上卓郎
N-RAW / N-Logでの映像制作で押さえておくべきDaVinci Resolveによる編集のポイントを解説します。
基本的に他のコーデックと手順は同じですが、ポイントをいくつか紹介します。
(DaVinci Resolve Studio 19 macOS版を使用)

快適に編集するためのポイント

プロキシを使ってN-RAW 素材を編集する

RAWはファイルサイズが大きいので、転送速度の遅いストレージや非力なPCだと操作が重く感じることがあります。N-RAWは撮影時にプロキシファイルも同時に作られます。プロキシファイルとは、高解像度のオリジナル映像の代わりに、編集作業を軽くするために使用される低解像度の一時的な映像ファイルです。拡張子がMP4のファイルを「Proxy」というフォルダを作り入れておきましょう。

プレビューウィンドウ右上のプロキシ切り替え項目を「プロキシを優先」に設定すると、サクサク編集することができます。カラーグレーディングや出力をする際は「カメラオリジナルを優先」に戻すのを忘れずに。

N-Log 素材の扱いかた

カラーグレーディングで魅力的な色を作る準備

N-Logで撮影した映像はコントラストが浅く表示されます。一般的なモニターで見られる色に変換をします。ここでは代表的な2つの方法を紹介します。

↑変換前のLogで表示されたコントラストの浅い状態

方法1: DaVinci YRGB Color Managedを使う方法

これは最も簡単な方法です。N-RAWには、撮影時の設定がメタデータとして記録されています。それを利用してDaVinci Resolveで自動的にコントラストと色を変換してもらいます。

まず、画面右下の歯車アイコンをクリックしてプロジェクト設定を開きます。

次に、カラーマネージメントの項目内にある「カラーサイエンス」を「DaVinci YRGB Color Managed」に変更すると、自動的に色が変換されます。

↑DaVinci YRGB Color Managedでメタデータを使い自動変換した状態。コントラストが付いたこの状態からカラーグレーディングを行います。

方法2: LUTを活用する方法

次にニコンが配布しているRED監修N-Log用LUTを使った変換方法を紹介します。LUTとは画像や映像の色を変換する手段であり、LUTを使用することで、複雑な色調整を簡単かつ迅速に適用でき、映像や画像の見た目を大きく変えることができます。

RED監修LUT

シネマカメラで定評のあるRED社の監修した、N-LogからRec.709に変換するTechnical LUT1種とフィルムの色合いを再現するクリエイティブLUT4種類があります。

LUT ダウンロード

LUTをDaVinci Resolveで使えるようにする

ダウンロードしたファイルを解凍します。画面右下の歯車アイコンをクリックしてプロジェクト設定を開きます。

カラーマネージメントの項目内にある「カラーサイエンス」が「DaVinci YRGB」になっていることを確認します。

そのままプロジェクト設定を下に移動し「LUTフォルダーを開く」をクリックし、開いたフォルダーに先ほど解凍したLUTをコピーします。

カラーページのLUTパネルの「LUTs」を右クリックし「更新」を押します。

「N-Log_BT2020_to_REC709_BT1886_size_33」というLUTをノードにドラッグアンドドロップすると自然な色合いに変換されます。

↑LUTを使って変換した状態。コントラストが付いたこの状態からカラーグレーディングを行います。

LUTで映像のイメージは大きく変わる

ニコンが配布しているLUTをダウンロードすると、先ほど使用したRec.709に変換するテクニカルLUTの他に、4種のCreative LUTも同梱されています。N-Logの平坦な色の状態にこれらのLUTを適用することで、映画的な雰囲気のあるカラーを簡単に表現できます。

ACHROMIC
FILM BIAS BLEACH BYPASS
FILM BIAS
FILM BIAS OFFSET

ポイント

N-Log用のLUTを使用する際は、Logの浅い状態に適用する必要があります。DaVinci YRGB Color ManagedやテクニカルLUTでコントラストを付けた状態にCreative LUTを適用すると、色が濃くなってしまいます。

カメラRAWパネルでISO、色温度などを非破壊調整

カメラRAWパネルでは、RAWクリップのさまざまな基本的な設定を撮影後に非破壊で調整できます。RAWの持つ高いカラーグレーディング耐性を実感することができます。また通常のRAWではレンズの歪みなどは補正されませんが、N-RAWの場合補正することが可能です。

(カメラRAWパネルの調整はプロキシには反映されません。カラーグレーディングを行う際は、「カメラオリジナルを優先」に戻して作業します)

↑「デコードに使用」の項目を「クリップ」に変更するとRAWパラメーターを詳細に調整できます。

さらに自分らしい味付けを追求してみよう

RAWだからといって、カラーグレーディングに特別な手法は必要ありません。むしろ、12bitの階調とN-Logの広いダイナミックレンジにより、大きく調整しても画質が破綻しにくく、カラーグレーディングの許容範囲が広がります。そのため、より柔軟で創造的な色調整が簡単に行えるでしょう。

LUTがうまくハマらない時は?

いい感じのLUTを使っても、思い通りの仕上がりにならないことがあります。その場合は、元の映像の露出を見直してみましょう。LUTは多くの場合、適正露出に合わせて作られています。まずはカメラRAWパネルで露出を調整するか、プライマリーパネルのオフセットで露出を調整してみると良いでしょう。

スコープを見て明るさや色を判断する

DaVinci Resolveには5つのスコープがあり、明るさや色を客観的に判断することができます。各スコープからは白飛びや黒潰れが発生していないか? 色温度など色のバランスは崩れていないか? 彩度は高すぎないか? などがわかります。

個性を出しやすいカラーグレーディングとは?

最もわかりやすく、個性を出しやすいカラーグレーディングの方法は、特定の色の色相や彩度を変化させることです。例えば、色相vs色相のカーブを使って、グリーンの色相をイエローに変化させてみました。すると、全体の印象が大きく変わることが確認できます。

↑白い部分にはそれほど影響を与えず、グリーンをイエローに変化させると印象は大きく変わります。

詳細な手順はこちらから

より詳細な手順に関しては、ダウンロードセンターから「N-Log動画用テクニカルガイド -N-Log動画編集編-」をご覧ください。

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