写真家が愛する街vol.2 るいさんが切り取る「湘南」

生まれ育った土地やよく足を運ぶ場所も、カメラのレンズを通して見ると違う景色が広がって見えた経験はありませんか?本企画では、とある街を愛するフォトグラファーの視点でその場所の風景を切り取り、思いを語っていただくことで、その街の魅力を深掘りしていきます。

第2回に登場いただくのは、湘南での撮影を6年以上続けてきたフォトグラファー・るいさんです。観光地というよりもその“日常性”に目を向けて日々撮影に臨んでいるというるいさんに、撮り下ろし写真(一部過去作例を含む)とともに湘南の魅力や撮影のこだわりをお話いただきました。

るいさんが切り取る「湘南」

晴れの日に撮りたい、空と海のリフレクション

Z5II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

「湘南といえば海、ということもあって、やはり海を被写体に撮影することは多いですね。この写真は、七里ヶ浜エリアで撮りました。

特に空が海に映り込んでいる写真が大好きなので、空が綺麗なときは決まってリフレクションを撮影しています。さらに今回は、もこもことした質感の波を撮ることができ、お気に入りの1枚になりました」

 

Z5II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

「これは、運よく江ノ島の『トンボロ』の日に撮れた写真です。トンボロとは、干潮時に島と対岸の陸地が地続きになる現象で、江ノ島では年に約60日ほどあるようです。トンボロ以外にもその日そのときによって撮れる写真があるのも、カメラの面白さだなと思います」

目の前いっぱいに広がる海を撮れる“お気に入りスポット”

Z5II、NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR

「七里ヶ浜駅近くの踏切を撮影しました。海へとまっすぐ続く坂道を下っていくと、こんな風に目の前いっぱいに海が広がる場所なんです。この景色を見ると、湘南に来たな、というのを実感しますね。

私はこの場所で背景いっぱいに海を入れて撮るのが大好きで、過去にも何度か撮影をしています。今回は、混雑が少なかった日のお昼どきに撮影しました。撮影時は、海と坂道に光が当たって白っぽく光っているところを意識しました」

 

刻々と変わりゆく空模様に心が踊る

Z5II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

「湘南で『この色がいいな』『この雲の感じが好きだな』と思える空に出会えた瞬間はテンションが上がります。

1枚目(左)は、自分の方へと迫ってくるような雲を撮りたくて、早朝の鎌倉高校前駅の近くでシャッターを切りました。2枚目(右)は、同じく明け方に鎌倉高校前駅の近くで撮ったものです。空に加えて、江ノ電、国道134号、海という湘南らしさが詰まった写真になりました。江ノ電の窓に、朝焼けの空がぼんやりと反射しているところも好きです」

鎌倉らしさを感じられる「季節の花」

Z5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(左)/Z5II、NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR(右)

「湘南での撮影では、季節の花を意識することもあります。今回は撮影が梅雨時期だったので、紫陽花を撮りました。1枚目(左)は明月院、2枚目(右)は成就院で撮影した写真です。

晴れた日に限らず曇り空のもとで撮る紫陽花も、梅雨の空気感が伝わって良いなと思います。鎌倉は紫陽花が有名な街でもあるので、梅雨時期に足を運ぶことがあれば、ぜひ紫陽花の撮影も楽しんでもらいたいです」

 

明月院
住所:神奈川県鎌倉市山ノ内189

成就院
住所:神奈川県鎌倉市極楽寺1丁目1-5

※スポットの詳細は、HPや公式SNSをご確認ください
※撮影の際は、周りの方や通行の妨げにならないようご配慮をお願いします

 

Z5II、NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR

「鶴岡八幡宮に期間限定で設置されていた花手水(はなちょうず)も撮影しました。これは、手水舎にある手水鉢にお花を浮かべたものです。コロナ禍をきっかけに始まったそうですが、2023年以降は実施されていなかったんです。でもずっと撮りたい気持ちがあったので、今年は3年ぶりに復活すると知って、絶対に撮りたいと思いました。2枚目(右)は、撮影前からこの構図をイメージしていて、紫陽花が画面いっぱいに敷き詰められるように撮りました」

 

鶴岡八幡宮
住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2丁目1-31

※詳細は、HPや公式SNSをご確認ください
※紫陽花の花手水の期間は終了しました
※撮影の際は、周りの方や通行の妨げにならないようご配慮をお願いします

 

湘南という街の“日常風景”としての「江ノ電」

Z5II、NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR

「この企画で望遠レンズをお借りできると知って『撮りたい!』と思ったのが、街を走る江ノ電の写真でした。湘南では、江ノ電が自動車のすぐ隣に並ぶように走る姿を見ることができます。他の街ではあまり見ない光景ですが、湘南ではそれが日常的な景色として存在していることに惹かれます」

interview:「見慣れた景色でも同じ瞬間はない」。湘南が日常に溢れる良さを教えてくれた

湘南らしさが伝わるお気に入りの風景を、感動したときの色味で再現

 

——今回は「写真家が愛する街」をテーマに、湘南エリアで撮り下ろしをしていただきました。このテーマを受けて、どんな意識で撮影に臨まれましたか?

自分がこれまで使っていなかった望遠レンズ「NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR」と超広角の「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」をお借りできたので、このレンズだから撮れる写真を撮りたい、という思いがまずありました。特に、これまでもよく撮影している江ノ電や富士山を望遠で撮影したい気持ちが強かったです。自分が普段使っている「Z5」の後継機の「Z5II」もお借りできたので、撮影を楽しみにしていました。

撮影時は、事前に撮りたいものと場所を決めていたカットもありますが、偶然出会った風景写真もたくさん撮りました。その瞬間の空や雲の感じに惹かれてシャッターを切ることも多かったです。

 

——複数のロケーションに行かれたと思いますが、どのようなスケジュールで撮られましたか?

天候が変わりやすい梅雨の時期だったので、天気が良い2日間を選んで、早朝から夕方頃にかけて複数のスポットを巡りました。日が昇ってくる朝5時前には現地に到着して、天気がいい時間帯を狙って撮影しました。

湘南は時間帯によって混雑する場所もあるので、混雑が予想されるスポットは早朝にだけ撮影しています。

 

——初めて試す機材での撮影を楽しみにされていたとのことで、実際に使われてみていかがでしたか?

Z5II、NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR

これまでずっと「富士山を撮影するのにもう一歩寄りたい…!」というもどかしさがあったのですが、望遠を使うことでそれが叶いました。江ノ電を撮るときには、「Z5」と比べて「Z5II」の連写性能の高さに驚きましたね。

富士山と江ノ電を撮った1枚目(左)も、手前いっぱいを海、その向こうに富士山と空という構図で撮った2枚目もお気に入りの写真になりました。2枚目(右)の写真にも江ノ電が小さく映り込んでいて、湘南を象徴するような写真になったと感じています。

 

Z5II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

超広角レンズでは、これまでのレンズでは入りきらなかった範囲の空まで写すことができて、撮影がとても楽しかったです。普段は「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」をメインにしているので、広角レンズも欲しくなりました(笑)。

 

——撮影後の編集で意識されたことはありますか?

今回に限らず色の編集で大事にしているのは、自分にとってどう見えたかという、そのときの感動です。「その瞬間の感動を写真で伝えたい」という思いで、一つひとつの場面を思い出しながら編集をしています。

夕焼けの色ひとつとっても、全く同じ色はないと思っています。だからプリセットは使わず、一つひとつ色をつくっていくことが多いですね。

 

Z5II、NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR

SNSで見た夕焼けが湘南に足を運ぶきっかけに。訪れるたびに違う景色と出会えた

 

——るいさんが湘南を撮影するようになったきっかけを教えてください。

2020年頃に、SNSの投稿で湘南の海と夕焼けを見たのがきっかけです。私は神奈川県在住なのですが、「湘南の夕焼けってこんなに美しいんだ」と初めて知った瞬間でした。

最初は夕焼けばかりを撮影していたのですが、何度も足を運ぶうちに夕焼け以外の魅力もあることに気づいて。空だけでなく、海や街の景色などいろいろなものを撮るようになりました。

 

——そうだったのですね。湘南のどのようなところに魅力を感じられたのでしょうか?

まずはやっぱり、行くだけでテンションが上がる、ということですね。街を歩いていても、自転車や車に乗っていても、海が見えた瞬間はテンションが上がります。撮影をするときも、毎回新鮮な気持ちでワクワクします。

また、湘南は行くたびに違う景色を見られる感覚があります。

 

Z5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

これは何度も訪れるなかで気づいたのですが、季節や時間帯によって、街、空、海の景色が違ってくるんですよね。空気が澄んでいる冬に行くと、富士山の雪のかかり方や大きさの見え方が夏とは全然違って驚きます。

そんな風に、たとえ同じ場所でも、そこには毎日ちょっとずつ違った景色があるんだなと気づかされました。

湘南で撮影を始めて、より身近な景色にカメラを向けるようになった

 

——撮影するときに、心がけていることはありますか?

毎日変わらなそうに思える景色、例えば街を走る江ノ電を撮るとしても、湘南の海を撮るとしても、雲ひとつ変わるだけで違ったものになるんです。日常的な景色でも、その日にしかない特別な何かがある。その瞬間を逃したくないという思いで撮影をしています。

 

Z5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

これは早朝に撮った鎌倉高校前駅近くの信号機で、この景色も本当に何度も撮り続けています。信号機はまさに日常的な風景かと思いますが、その日にしか撮れない景色があると感じさせてくれる場所です。

 

——湘南の撮影を通して、そういった日常的な風景にも特別なものがある、と気づかれたのですね。

そうですね。カメラを始めたばかりの頃は「映える写真が撮りたい」「特別なものを撮りたい」という気持ちがありました。だから当時は、旅行など特別なときにだけカメラを持って出かけていました。

湘南も撮り始めた頃は“ちょっとした遠出”という感覚があったのですが、撮影にハマってからは、夕日を撮るために数日連続で足を運ぶくらいに身近な場所になりました。今は特別なものを撮りに行くのではなくて、毎日変わる景色を撮りに行っています。

 

その日その瞬間にしか撮れないものと出会える日を心待ちに、大好きな場所で撮影を続けたい

 

——今後、湘南で撮影してみたいと思うものはありますか?

私にとって湘南は、日常的な景色の良さ、見慣れた景色でも同じ瞬間はないんだということを教えてくれた街でもあります。だからこれからも、大好きな場所での撮影を続けていきたいですね。日常という意味では、これからも撮影を続けるなかでよりローカルな部分を見つけられたらいいなという思いもあります。

また、これまで湘南で撮影をしてきて、虹が出たり、焼けるような美しい夕焼けが見られたり、奇跡的な撮影ができたことが何度かありました。やっぱりその日のそのときにしか撮れないものがあると思うので、またそんな瞬間に出会えたら嬉しいです。

 

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Z5II

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Z 5

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NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

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NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

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るい

るい

慣れ親しんできた街である湘南の夕焼け写真との出会いをきっかけに、本格的に撮りはじめる。湘南を中心に何気ない日常、海や空、景色、人などを幅広く撮影している。